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二十八話、決定打

お久しぶりです。ごめんなさい遅れて、遅れて。


 瞬間____ぶち。と、肉の千切れる音が聞こえた。




「…」



 黒いアラカ…黒アラカは音のした方を見る。


 音の所在は自分の胸…胸から肉の裂ける音がして。



「…」




 ____黒アラカの胸を、アラカの腕が貫通していた。




 正確にはアラカが背中から貫手を放ち、身体ごと貫通させたのだ。




「…決め台詞の直後に、貫手で心臓ぶち抜くかよ。礼儀がなってねえな」


「貴方の正体は把握しました____その存在はこの世界には歪すぎる」



 黒い髪をした菊池アラカ。

 短パンとガーターベルト、そして上にはフード付きの白コートを纏っている姿はやけに似合っていた。



「やっぱこの世界も、相当危険だな」

鎖状炉心グレイプニル



 鎖を即座に招来させ、敵手を締め殺さんと猛り狂う。


 そしてアラカは敵手の存在を性格に把握する。



「即座に見抜きました。お前____並行世界の私、だろ」



 並行世界。次元の壁をぶち破って現れた〝いたかもしれない自分〟…。


 殺意に塗れていたかもしれない自分、聖者になり自殺していたかもしれない自分、もしもの自分……それが目の前にいる黒アラカの正体だと看破した。



「目的も、既に把握してます」

「ふ。流石だね、もうそこまで」



 殺意を殺意で塗り潰しかねない重念。互いに溢れる憎悪と殺意の波は周囲へ伝播し、甚大な被害を出していた。


 周囲の人間は青い顔になり、一人の女学生に至っては恐怖のあまり失禁すらしていた。



「____綴さんを取る気だろ…っ!」

「違った、ただの恋愛脳の暴走だった」



 黒アラカは「このやり取り何度目だ…いやマジで」と、ひたすら疲れたように呟いた。




 黒アラカは、はあ、と息を吐く。



「僕は問い掛けをしにきただけだよ」

「問い掛け…?」



 問い掛け、並行世界の己が己へと課す問いかけ。


「____君はどうして壊れたの?」



「…? それは」


 その問いが一体なんの意味を持つのか、アラカは訝しむ。




 問いの意味が分からず、どんな真意があるのかをアラカは微かに思考し






 ____■ ■____



 脳裏に二音程度の長さのノイズが走る。



「____」



 ____思考の全てが、ヒビ割れるように壊れ始めた。




「————」


 アラカの様子が急変する。



「____」




 青い顔で、ふらつき、



「————」


 今にも壊れてしまいそうな様子で



「————」



 肩を抱き、震え始める。




「うん、そうだよ。その他諸々の些事の方じゃない____心が完全に壊れた瞬間の方を聴いてる」




 黒アラカが肯定するように微笑む。


 だが、その瞳はひたすら憐んでいるようにも見えた。




「その他諸々もかなり心を壊した要因にはなってるね〜。心の拠り所が自分の憎い敵の言いなりに? 自分の居場所が存在しない愛情飢餓に追い討ちのように希望が奪われ犯されて…」




 ぽつりぽつりと、何もかもがどうでもいいというかのような冷めた声で。



 


「ぐちゃぐちゃに情緒、ぶわんぶわんする思考、暗くて重くてグラグラする視界。

 その原因どもはケタケタ嗤い?」




 何かに問いかけるような、何かを嘆くような声に変わり




「あはははははははははははははは」




 乾いたような、どこか軽快さを思わせる声で笑い



「あはっ、ははははははははははははははっ、あはははははははははははははははははははハハハハハ」




 極めて愉快そうに、不愉快を滲ませて嗤い声が高鳴り




「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」




 周囲一体へ、最早どうでもいいと心底狂ったように嗤い上げ



「————ぬる過ぎるぜ、おい」



 ————重厚な、泥沼の様にドロリとした殺意が顔を見せた。



「は、…ぁ、っ…っ…!」



 ぽた、ぽたと青い汗を垂らし、呼吸がままならないアラカ。



 膝を折り、今にも壊れそうな様子をしていた。




 黒アラカは、そんなアラカの頬を手で触り、顔を上げさせる。



「…っ」「…汚い目」



 アラカの真紅の瞳を覗き込む。


 鏡写の瞳は、あまりにも濁り、底無し沼のような闇が鳴動していた。



「違うだろ? そうじゃないだろ、なあ?

 お前が壊れた理由はソレじゃない。豚と豚が交尾することで壊れる精神性してねえだろテメェ」



 意識が朦朧とするアラカを至近距離からそう追い立てる。



「傷ついてトラウマ化しているが、それはそれ…心が壊れた〝本当の原因〟にはなり得ない」




 そして、アラカは



「________________原因、思い出した?」




  ________その言葉で、ヒビ割れた記憶を自覚した。




 思い出してはならない記憶、菊池アラカが壊れた〝決定的な悪夢〟と、向き合う時が迫っていた。

残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業残業。





あ、休憩回はここでおしまいです。

全年齢版でのリクエスト、あとノクターンの方でのリクエストはまだ待ってます。気軽にね。

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