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二十五話、文化祭っ!

おひさし、ぶり、です(死にかけ)



◆◆◆


 漫画を描き続ける深夜の菊池家。死んだ魚の目で魔法少女について語る。



「出てきたら、確保したいのだけど…」


「? 何か問題が?」


「…あの迷彩能力が、かなり厄介なんだ」



 アラカはアリヤへとスマホを飛ばす。

 スマホの画面には地図アプリと…一つの反応が示されていた。



「これ、この前会った時…丁度発信機が余ってたから付けたんだ。あの魔法少女に」

「丁度余ってたのあたりから何も入ってこない」



 そして、アリヤはアラカの言う〝迷彩能力〟が何を指しているのか即座に理解した。



「発信機が…これ、は」



 地図上で、〝建物をぶち抜きながら進む〟反応に苦虫を噛んだような顔を浮かべる。



「何か、ビルの上を超高速で移動してるのかと思って三次元上にしてみたけど…地図上では、どうみても〝建物をぶち破りながら高速移動〟をしてる、の」



アリヤは地図アプリを眺めて、その規則的な動きに困惑する。




「え、なにこれ…反応が、長くなっ、て____」

「…」



 そこで妙な変化が起きる。

 点だった反応が急に伸び始めたのだ。


 そして長く伸びた発信機の反応は、やがて文となり…


『ばーかwwwwww』

「____」(イラッ)



 そんな煽り文章を〝こちらがみていると知っているかのように〟地図上で再現するのだ。



「まるでなんでもできる超越者が「魔法少女の正体は誰もわからないんだよ」って、ケタケタ笑ってくるみたいな気味の悪さがある」




 間抜けかと思えば狡猾で、雑魚かと思えば悪辣で、馬鹿かと断定できず、狡猾かとも断言できない。



「なんて、言うか、あらゆる方面で…気持ち悪い」



 意味の分からない気持ち悪さがある、表現できない複雑な不快感。



「…まあ、パチベエ捕らえてからの楽しみ、だね」



 にこり、と全員に微笑むアラカ。


 その瞳は、底知れない闇を孕んだ真紅だった。


◆◆◆


 文化祭当日。


 前日までに練習や当日の流れの伝達は済ませており、同人誌は完成した。



 そしてありとあらゆるモラル全無視の作品を渡された霧は青い顔になり教室の隅っこで「ちがう、わたしはわるくない」と現実逃避を繰り返してる。




「廊下に同人誌が販売されてるらしいから後で様子見に行くの」

「あんたアシスタントで腐るほど見たでしょ」



 廊下に置いてある倫理全無視イカれクソゴミを眺めた霧は、現実逃避を始める。



「にしてもウェル……男装似合わね〜赤髪ツインテールやめたら?」




 執事服を見に纏い、クラスの出し物『男装女装喫茶』…そのための衣装を着たウェルはどこかヤグされ執事感があった。



「は? るせえよボケなの」

「赤髪ツインテールが似合うのはサキュパスかツンデレヒロインに相場決まってんのよ。まな板でシンプルに性格終わってるメスガキには過ぎた代物よ」



 煽り散らかすレヴィアは長髪を敢えてそのままにし、目が少し隠れる程度の長髪執事を気取っていた。



「あー、確かに清楚系ヒロインって同人誌でクソビッチに成り下がってるの。そりゃwwwwお似合いの髪型(・・・・・・・)wwwwかぁwwwwww」


「そーそー、アンタは自分に似合う髪型で我慢しときなさい____貧乳で赤髪ツインはwwそのww惨めってしょ?wwwww」



「「————」」




 手紙が周囲を旋回し、天墜剣イカロスがその場に柄に入った状態で突き刺さる。




「ちょ、二人とも…こんな日に喧嘩は、その」


 

「「あ?」」


「————」



 首から上を女生徒へ向けてキレる二人…その顔の良さに女性との何割かがふらっとする。



 金色の髪をかき揚げ、ドス黒い悪意を凝縮した瞳が覗くレヴィア。


 何処か危険さを放つスラムのガキみたいなウェル。



「(顔良っ! イケメン、アッ!!)」




 そんな二人は、乙女の心をこれでもかと貫いていた。





「目隠れイケメン執事が、オレ様系なのを私だけが知っている……お、一本書けそうなの」



 ウェルが新たな漫画のネタを見つけた、そしてこのままでは間違いなく戦いに発展する_その刹那に。



「————二人ともそこまで」



 そんな、清廉な声が響き渡る。


 小さく、けれどもこの上なく凛々しい声に全員が振り返る。普段は雌犬キメて、卒業後も末永くオ◯ホ生活が約束されているとは思えない声だった。



「「「(だ、男装の菊池さん!?)」」」




 登場した英雄の姿に、全員が息を呑んだ。


 頬にガーゼ、オデコに包帯。そして可愛い獣耳…全てが庇護欲を掻き立てる存在。それが菊池アラカだ。




 そのアラカが執事服を着て、しかも中々似合っているという状況。



 髪を後ろに纏めたポニーテールは綺麗に整っており、清楚さを思わせたところもまた可憐だった。



「危ないから、天墜剣イカロス、を、預かり、ます」


「アラカ腕消し炭になるよー」





 傷だらけの狼執事…しかもアラカ自身、顔がとんでもなく整っているのだ。


 傾国の美少女とすら言われるアラカ…それが執事なんて格好になったら。



「「きゃあーーーーーーー!!!」」



 答えは、この黄色い声が物語っているだろう。



「待って、待って無理!! 破壊力が!!」

「一匹狼で俺様系のイケメンショタ執事感えぐいいいいい!!」

「最初ボロボロで警戒心強いのに、最後にデレてくれるやつ!!! 乙女ゲーで見た!!!」



 発狂する女子生徒、それだけ菊池アラカ執事verは刺激が強すぎた。



 傷だらけで包帯を巻き、狼のような獣耳に、常に周囲を敵視…軽度の警戒心を向けた視線。


 全てが日常で見られない要素だからこそ、より強い夢心地へと女子生徒は誘われたのだろう。




「(綴さん…どんな、反応するかな)」




 天墜剣イカロスを腰へ帯剣させ、アラカは飼い主へと想いを馳せる。

読んでくださりありがとうございます…!

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