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二十四話、地獄 〜混濁する性癖と病み〜

お久しぶりです……ようやく、ようやく、投稿できた。



「なあリーダー」

「なんでしょうか、可憐」



 アラカ達の背を眺め、二人は語る。

 その目は酷く汚れたガラス玉のように思えた。



「____菊池アラカが内に秘めていた殺人衝動が少しずつ出てきている」

「…」



 可憐は現象を極めて正しく認識して、それを告げた。



「極めて好戦的。物事の解決策が殺人や拷問といった法外の手段に寄っている」

「…」



 思考回路がどこか歪み始めてる。そしてそれは、何者かの意図を感じると告げた。




「精神的な歪みと膨れ上がった愛情飢餓を満たされたせいだろうな————心に余裕が出来て殺人に意識を向け始めてる」

「…」



 殺人癖、菊池アラカの本来抱くべき悪意。それを語り、




「お前____第六工房を完成させる気か」

「はい、そうですよ」



 そんな核心を突く問いに、平然と綴は返す。



「……」

「はじめから、ずっと同じですよ。

 目的はそれのみです」



 ————そのために、邪魔な存在は全部処分した。


 そう告げる声に、可憐は諦めるように息を吐いた。

◆◆◆


 秋の日、文化祭まであと少しという期間のこと。


 クラスの出し物の準備は滞りなく進み、あとは英気を養うのみ、なのだが



「コンビニに買い出し行くけど、なんか欲しいのあるの?」



 菊池家四姉妹は、ウェルの部屋に集まり無心で端末を操作していた。


 ウェルの目の下にはクマが出来ており、疲労が伺える。



「ウェルー、アイス買って来てー」

「アッパーとダウナーどっちが良いの?」

「いや、覚醒剤アイスじゃなくて」



 アラカは車の絵を描き、レヴィアはアイアンメイデンの顔を描く。


 どちらも疲労が滲んでいた。



「軽く食べれる…あんぱんが、いいな」

「おっけ、シンナーなの」

「いや、違法薬物(あんぱん)じゃなくて」



 疲労し切ったままウェルはコンビニへと向かう人を殺さないかが心配だ。




「今のウェルならどんなものを指定しても問答無用で薬物持ってきますよ…」

「近くの売人は全員、うちには売らないでって指示、出してる、から、大丈夫だと、思うけど…」



 よろよろ、と起き上がるアリヤにアラカとレヴィアは作業しながら返答する。



「最近は違法薬物、も手に入り、やすくて本当に困る…」


「日本国民の一割は違法薬物に手を染めてるからね〜」

「…末期だ、なあ」



「…テレビでも、つけましょうか」



 ウェルの部屋にあるテレビ(ゲーム用)をつける。




『魔法少女敗北! 魔法少女敗北! 魔法少女敗北!!』



 ムキムキのテレビキャスターがニュースを読み上げる。


 そしてその言葉はニュースの内容をこの上なくシンプルに伝えていた。



「魔法少女、負けちゃっ、たかぁ」

「お嬢様、応援してたんですか?」

「アラカは頑張ってる子に弱いから…」




 ニュースを見ると犬のような魔物に負けたようだった。



「…」

『怪異被害に悩まれる皆さん、どうか慌てず、後先考えない行動は控えて…』

「…」



 後先考えない行動に走る人は、今の日本では多過ぎた。

 テレビの女性キャスターは全裸で視聴者に『冷静になってほしい』と呼び掛けていた。



「一波乱、あり、そう…だね」

「お嬢様、手元狂って変なの描いてますよ」

「え…?」



アラカは自分の端末を見る。そこには車に後背位をしているドラゴンの絵があった。



「あ、気が付いたらドラゴンカーセックスを書き込んでた…」



「末期で草」

「お嬢様、アイス買ってきてください」

「アッパーと、ダウナーどっちがいい…?」



 アラカ、強制的に休まされることが決定する。



「…あのさあ」

「うん」「なに」



 レヴィアはギロチンの絵を描きながら、ふと思ったことを口にする。


「なんで、秋の文学コンテストに応募することになったんだっけ」



 …



 沈黙が部屋を支配する。



「…担任に土下座されたからなの」



 その沈黙を破ったのはウェルだった。ウェルはコンビニの袋をテーブルに置き、そのまま無言で作業を始めた。



「過去の事件を蒸し返したくない校長と、少しでも町おこしをしないと後がない市長が詰め寄ってきたそうですよ」

「コンビニの袋の中、消化器入ってんだけどお前どこいってきた」



 上司と市長が凄い剣幕で迫ってきて、真っ青になった霧先生。


 それが事の始まりだった。



「この二人に挟まれて中村先生の精神が崩壊、死んだ魚の目で廊下に来て土下座し始めたのはなんか、切なかったですね」


「校長と市長が妥協できるギリギリが英雄の作った同人誌を配布するってどうなんだ…」



 今でも四姉妹は覚えている。霧の過酷すぎる表情を。



『同人誌作ってくださいッッッッ!! お願いしまぁぁす!!!』



 あまりの迫真さにドン引きしながらアラカは綴に仕込まれてたロ◯ターでイキながら承諾した。


 その様子を見て他の姉妹がドン引きしたのは言うまでもない。



「…にしても姉妹で各々好きな話書くよろずねえ…」



 レヴィアはチラリ、とその中身を見る


【英雄の休日】(ウェル&アリヤ担当)

【お兄ちゃんに殺されたいっ♡】(レヴィア担当)

【ドラゴンカーセックス 〜車のそんなところに入れないでぇっ〜】(アラカ担当)



 ラインナップを眺めて、レヴィアは無言で虚無の瞳を浮かべた。


「…レヴィ。今更、なんだけどさ、これ、大丈夫なの…?」

「…何が」



 アラカは端末を操作し、レヴィアと共有してる原稿データを眺めた。



「全ページに渡って、レヴィ似の女の子がお兄ちゃん(?)にありと、あらゆる呪術と拷問で、殺されまくっ、てるのだけど」



 闇が深すぎるナニカを眺めて、気が遠くなるのをアラカは感じた。



「…アラカの方も聞きたいんだけど、さ」



 アラカの原稿を開き(以下略)


「ドラゴンと車の恋愛で、最終的に全宇宙公開ドラゴンカーセックスは業が深すぎない…?」

「そ、そんなことない、よ…?」

「…」



 レヴィアは無言で机の上に端末を置き、アラカの方へ滑走させる。



「この台詞のところとか、見てよ」

「…?」



 アラカは指摘されたページを見る。

 それは車がドラゴンを励ますシーン。極めて真面目なシーンである。



『フォンフォンフォンフォンwwwww』

『ぐがああああ!』

『ぷーwwww』(クラクション)

『ぐ、ぐる…?』

『ドドドド♡♡♡♡♡』(エンジン音)



「…? 何かおかしなところある…?」



「全部だわ!! 鳴き声と車の作動音だけで台詞全部埋め尽くされてるんだけど!?!? なにこの狂気!?!?」

「それ言ったらレヴィのやつも全部悲鳴か絶叫か命乞いだけじゃん!! 私でも理解が追いつかない拗らせたマゾ性癖って何!! 羨ましい!!」



 机をドンっと叩き両者が立ち上がる。精神も末期だった。性癖も末期だった。



「はあ、はあ」「…は、ぁ、はあ」



 そして二人はその場にまた座る。


 そして未だ言及されてないアリヤとウェルの作品(完成済み)へ目を向ける。



「二人のこれは、何」

「主人公視点で、英雄アラカと休日にデートして、幸せな気分になるやつね。アラカの闇の部分を描写して、主人公がホールド…そのあと幸せそうな二人の背中で終わり…ほーん」



 極めて王道、そしてウェルとアリヤの〝してみたい依存イチャイチャシチュ〟がてんこ盛りだったため…確実に人気になるであろう内容だった。



「「…」」





 …それに対してアラカとレヴィアは無言で原稿を閉じ、



「…続き、かこ」

「…そうね」



 自分の作業を進めた、アラカとレヴィア(本人とブラコン)には、この魅力が分からなかったのだ。



「あ、魔法少女調べるとか、どうなりました」

「その翌日に担任から土下座されたの」

「そういやそうだった」

TAS十六夜咲夜様、レビューありがとうございます〜。


いつも感想だったりで励まされております〜

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