十八話、お風呂回
なんか前は女子全員で男湯覗きに行くとかいうトチ狂った内容だった気がしますが、今回はしっかりお風呂です。
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魔王【夢ノ結晶】邂逅後、涎まみれの一行は菊池家へと向かった。
「約束されたお風呂回」
「この前も温泉入った気がするけどね」
「この前、は、覗きを、する側、だった、ような」
「何あんたら男湯覗いたの…?」
女子組全員で男湯を覗きに向かった前回と違い、今回は女子全員で菊池家のお風呂に入っていた。
なお綴は後でアラカが洗う予定だ。
「アラカちゃん、ドラゴンの唾液ブースト切れたの?」
「う、ん…でも、このあと、綴さんに、追加で、ぶーすと、もらうから…」
「ブースト(意味深)」
ケモ耳銀髪美少女。
赤髪悪魔っ子ロリ。
メイド変態お姉さん。
金髪ブラコン拗らせ聖女。
ラスボスエレガントロリママ。
見事な美少女五人がお風呂に入っている。
菊池家のお風呂は広く、女の子(二名)とロリ(恐らく約三名)が入っても問題ないほどであった。
「お嬢様、肌綺麗でs———おい、この歯型とキスマークと手型なんだ」
「お風呂でも首輪なの?」
風呂でも首輪を着用しているメス。
その調教深度は筋金入りだった。
「うん。自動浄化機能もある、し」
アラカは首輪を触れて、ニコリと、幸せそうに微笑みを浮かべ_
「_____あと外してもいつの間にか着いてるし」
「クソドラあああああああ!!」
「おいこら、これ呪いの装備じゃねえかww」
_____周囲をドン引きされる発言を平気でする。
「相変わらずだね、みんなは」
体を洗い終えた がちゃぷ、と湯船に足を入れる。
「失礼するよ」
その姿は世界を恐怖に陥れる怪異、その創造者とは思えないほど愛らしく、また魅力的だった。
「ママおっぱいデカいの」
「御母様母乳生成能力の開発まだですか?」
「何故だ…お嬢様じゃないのに母性感じる…ぐ、右目がおぎゃれと囁いてきやがる…ッ!!」
少女なのに、海すら包む母性を感じ、
溢れんばかりの覇気があるのに、この上なく愛らしく、エレガントに存在する。
「かわいいな、もう」
不敵に笑んで矛盾を孕んだ魅力。
はにかむような微笑みに、自分は愛されてるのではないか、と錯覚すらしてしまう。
「しかし、ブースト、ね」
アラカの新技、ザー◯ンブーストの話題のことを指しているのだろう。
はアラカの側に来て、よしよしする。
「アラカ、ちょっとごめんね」
そしてそっと持ち上げると、自分の膝の上に乗せてハグをする。
「あったかいなあ、アラカ、座り心地は大丈夫?」
「…♪ だいじょぶです」
アラカから出た声は先ほどよりかはたどたどしさが失せたものだった。
「ブースト程じゃないけど、こうしてハグしてあげると効果はあるね。
このままお話ししようか。君が嫌で無ければだがね」
「〜♪」
「アラカちゃんと会話する時はハグしていいってことなの?」
大義名分を得た変態娘ども。
膝にアラカを乗せたまま、会話は進んでいく。
「しかしアラカも難儀よね〜。
あのドラゴンに恋してるとか」
「アラカちゃんは大学卒業と同時にドラゴンに監禁され、そのまま一生を終える人生設計になってるの」
「お嬢様の人生詰んでて草」
人生終了。
加えて言えば監禁対象は決して薄れない善性を宿すアラカである。綴に監禁してもらうための努力は決して手を抜かないことが予測できた。
「綴、さんに…奉仕して生きる、人生…」
「アラカー、生唾飲んでるの隠せてないよ」
つまり監禁生活が約束されている、という意味である。
「あのドラゴンの監禁され、奉仕生活とか、怪異によっては独居房レベルの苦行じゃない?」
「と、言ってもアイツ。性癖以外は完璧なスパダリなの」
「独居房並みの苦痛味わうのはアンタら被害者の会だけでしょ」
被害者の会は相変わらず綴を嫌っていた。
と、いうよりこの二人の場合は既に嫌悪は薄れており、これはメスガキ煽りのようなものだった。嫌悪とは似て非なるものである。
「独居房…」
懲罰房の記憶。
狭い、本当に狭い場所だったと、アラカは覚えている。
「一畳の半分程度の空間に、掃除されてない和式トイレだけの部屋…」
「経験者は草なの」
「そうだったコイツ冤罪事件経験者だ」
「少年院は!?」
アラカは死んだ魚の目で湯を眺めてる、
「バケモノだから特別待遇だよ」
「「「(あっ)」」」
今更でてくるアラカの辛い過去設定。
いそいそと の膝の上で身体を丸める。
「体育座りで泣いてたなあ」
「アラカー、目が死んでるよ」
そしていつもこの結論に辿り着く。
「綴さんに壊されてる間は、余計なことを考えずに済む、から、ね」
「典型的な依存だね。あの子も君がいないと精神壊れるし共依存か」
しかも両者共に奉仕属性とかいう稀有な例。ずぶずぶに沈んでいくのも納得だった。
「綴さん、かっこいいし…!
優しくてイケメンで包容力すえる、し…完璧イケメンだよ…!」
そして目をキラキラさせながら告げるそれに、全員の心は一つになった。
「「「「(まあ、性癖を除けばそうだけど…)」」」」