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十七話、異変発覚






◆◆◆◆

 生きた心地のしない三分間。



 蝶々は消え、スポットライトから解放される。




「去った、か」


「お、おええ…おぼ…おえ、え…」



「なに、あれ、は…気持ち、悪い…」



「死ぬかと思ったの…」



 

 ゲロぶち撒けるアリヤ、口を押さえるレヴィア、腰が抜かるウェル。



「アリヤ嬢は順調にゲロインの道を歩み始めてるね」


「アラカくん大丈夫でしたか?」



 飄々としてる超越者二名はメンバーの様子を流し見ながら警戒を絶やさず周囲へ視線を向けている。



「ママ今のは?」

「今のは魔王、と呼称される存在だよ。

 陳腐なネーミングセンスなのは許しておくれ、それ以外に形容できなくてね」



 ただ共通して〝世界に影響を齎す〟という域にまで達している怪物。


 即ち、不滅の夏(エーテ・イモルテル)を生み出したムラマサ並みの存在であることを意味していた。




「ムラマサのエーテ・イモルテルの三十倍は危険な存在だ。世界に影響を与えるのは同じだが…密度の桁が違う」

「インフレはや」



 聖女編ラスボスが速攻でかませになったこのに驚きを隠せない。




「俺でも、力を五十分の一程度に制限したら…おそらく負ける可能性が高い」

「更なるインフレのフラグ立つの草なの」



 自称ラスボスを謳うだけはあるのだろう。


 事実この少女はそれに見合う力を宿している。



「破壊力の一点ならエーテ・イモルテルの方が高いから」

「なんかブラコン拗らせ女が兄最強説を諦め切れずに遠吠えしてるの」



 不滅の夏が齎した世界は、何もかもが溶け、流れ、蒸発する死の世界だった。


 それと比較すると破壊力という面では確かにそうなのだろう。




「しかし、妙だ」


「何がなの? まま」



 魔王の出現



「あの魔王、普段はドイツ周辺にいるはずなんだよ。日本に来る理由が分からない」





「故郷帰りとかじゃないですか?

 幼いハンスみたいに」

「あー、確かに蝶々って、日本の歌うたってたしありえるの」



 ちょうちょの原曲、ドイツ民謡『幼いハンス』。


 幼いハンスが旅に出て、大人になってから故郷帰りをするという歌…それをなぞっているのではとの指摘に    は顎へ手を添える。



「可能性はゼロではないが、少し考え辛い。

 幼いハンスが大人になってから帰ったように、アレも年齢の概念があり、大人になった…と呼べるのかもしれないが」



 _____問題は、今であること、だ。



「アレが故郷帰りを起こすなど見たことない…誕生して7年経っても、70年たってもあのままだった」



 ゆえ、その可能性は捨てた方がいいだろう。と結論づけて_____ならば別の要因があるはずだ、と意識を切り替える。



「綴、第三拷問室を借りる。

 本来それ目的でここに来たのもある」


「報告は受けてます。

 第三の魔王も異常な動きが見られている、その情報が欲しいのでしょう」



 第三魔王————アレと同レベルの存在が他にもいる、という事実に全員が息を飲む。



「そうですね…そろそろ例の場所を知ってもいいのかもしれません。

 ウェル「呼ぶな殺すぞ」、レヴィア「死ね」、アリヤさん「はい」、アラカくん」



 各々に声を掛けて返答をもらう……だが、そのうち一人の返答がない。



「…アラカくん?」


「? アラカちゃんは平…気、な…n」


「何よロリ、アラカがどうし」




「ぁっ、ぁっ…♡ かひゅ…かひゅ…♡」





 地面で身悶えしてる。


 気のせいだろうかこの上なく興奮して、身体をビクンビクンさせてるように見えた。




「……」



 こんなことするやつは、一人しかいない。


 全員が心を一つにし、犯人へと目を向ける。



「…綴、君、まさか魔王がいる時…」


「いやいや!? これは私何もしてませんよ!?」



 ジト目を向ける    、しかしすぐにアラカへ目を向けて「まさか…」と呟き。



「あー、これは…うん。

 綴の涎を浴びせられる、という状況だけでイッたな、この娘」



 未だうつ伏せでビクンビクンしてるアラカ、この子ホンマ…。



「この全方位調教済み変態英雄お嬢様がッ!」

「英雄色を好むっつーか、色そのものになってるっつーか…」

「涎浴びせただけで発情するように調教したクソドラにも責任があるの」


「綴しゃん…♡ 綴さ、ん…っ…♡」




 キスで戦闘不能に陥る。声で戦闘不能に陥る、唾液で戦闘不能に陥る。


 英雄、堕ちてなお堕ちる。



「…心当たりは」

「……この前、水分補給と言って唾液飲ませました」

「おし、ママからのゲンコツだ歯食いしばれ」

読んでくださりありがとうございます…!

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