十六話、第二天魔王【夢ノ結晶】
短いです。ごめんよ
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〝ちョ 白ョ〟
〝ちょ ■ちょ〟
〝チ■うシ ょ〟
「気を付けろ、あれに魅入られると終わりだぞ」
楽し気に奏でられる不協和音のちょうちょ、可愛い声のような、バグり続けて音割れが発生しているような、金切り声のような…なにか、聞いているだけで不安になる音が響き続けている。
「あ、英雄、だ! たすけ————」
歪な蝶々、それに追随する中に、幾らかの人間がいた。
人間だけではない、ライオンに、カエル、馬に羊にラクダと旅人……
「えが、お…?」
全てが笑顔で、涙で、悲劇で、喜劇で素敵で可笑しくて
————すべてがすべて。演技めいたナニカを浮かべていた。
「永遠に終わらないおままごと、その人形どもだ。
お姫様はただ一人、スポットライトの当たらない存在は永遠に不快で惨めで、じわじわと侵すような苦痛を味わい続ける」
————アレに魅入られれば、そうなる、と暗に告げる声に全員が息を呑んだ。
「向こうに敵意はない、あるのはお姫様のチープな祈りだけの存在だ」
お姫様は輝き、人々へ愛を向けるものだから、そこに悪意はカケラもない。
「夢のように空虚…ゆえに対話も不可能だ。
常に阿片に酔った存在だと思え…アラカも今は観測癖はやめておきなさい」
視線を決して外さないまま、 は警戒を囁く。
「ウェルも下手に動かない様に。逃げるのもダメだ。
逃げ惑う観客の〝人形〟として運用される。
攻撃もダメだ、お姫様を攻撃する悪役の〝人形〟だと気に入られる」
対策はこうして、ただ〝魅入られない〟ということだけ。
「不可能だろうが、恐怖の表情も抑えておくれ。
何かに怯える子供の〝人形〟と、それを愛で助けるお姫様のおままごとが始まる」
何かの役割を見出されてはいけないのだ。蝶々が去るまで、息を殺し、感情を潜めるしかない。
「今は涎まみれの汚い…〝もう遊べないオモチャ〟として振る舞え。感情も可能な限り表へ出さない様に。
自分はこの劇に参加できない存在だという意識をしっかり持ちなさい…みんななら出来る、大丈夫、大丈夫…誰も奪わせはしない」
〝チ ょu…♪〟
ふと、第二天魔王は、アラカらの方を見る————綴の涎まみれだ。
〝…〟
若干、動きを止めて
〝チョ■ y〜♪〟
そのままどっか行った。
「何だろ、この嬉しいのに釈然としない気持ち」
「愛じゃね?」
「愛か…これが、愛」
「ぜってーぢげーの」
読んでくださりありがとうございます…!