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八話、魔法少女との邂逅

◆◆◆


 休日。時刻は十三時…早い人は昼食を終え、ゆったりと時間が流れていた。



「くっ!! この魔獣、なんて力なの!?」



 そんな中、街中で戦いが繰り広げられていた。


 犬型の魔〝物〟と魔法少女みたいな格好をした二人の少女。



 魔法のエネルギーを飛ばす魔法少女に、犬は逃げる。



「危ない!! そこの人逃げて」



 そんな時、犬の逃げた先に一般人の女の子がいた!!


 声をかけるも、その女の子を助けるにはあまりにも距離が開き過ぎていた。



「?」

「(間に合わないっ)」



 迫り来る魔獣に、白銀の髪(・・・・)を揺らした少女は振り返り



「っ」



 ーーーーブチ   パァンッ!!




 一息で犬の喉元に刺突を貫通させ、首から上を捻じ殺した。



「は、ぁ…?」



 ポニーテールにまとめた髪に、動きやすそうなショートパンツに、少し大きい男性用のジャージ。



 全てがバラバラなのに、妙な愛くるしさと絶妙な魅力がある。





「(この子、使い魔だ…しかもこの構造、偵察型、怪異に敵意はないみたい)」




 ____無論それはアラカである。


 休日を利用してマラソン大会のために持久走をしていた。



「(ビルの上を、ジャンプ、して走ってたら、知らない、ところにきちゃっ、た…)」



 持久走の練習というには、本当にそれで良いのかと聞きたくなる様なメニュー。


 だが、そんなことを知らない人間は…この状況を別の意味で捉えた。



「あなた、その力…なんてこと!」

「うげ」

「ぅぇ…?」



 ピンク髪の少女と、青髪の少女がアラカを見て声を上げる。



「あ! 追いついた!」

「魔法少女に今追いつきました。すごいスピードです。こうして車で追っていてようやくカメラに収めることが出来ています」



 二人の少女を追いかけて来たのか、テレビ局の人間が見える。


 それをみて、魔法少女は振り返った。



「テレビの人! 逃げてください!! 新たな怪異です、討伐します!」




「……?」




 新たな怪異、いったいどこだろ。


 アラカは周囲を見渡すが誰もいない。




「え、アレって」



 そして、新たな怪異、という言葉にカメラは反応して____アラカに気づいた。



「間違いない…菊池アラカ…」



 その名を知らぬものはもはや居ない。


 最強として、今や至高の姫君と呼び声高い彼女は。





「___英雄だ」



 英雄、菊池アラカ。


 最上の姫君と謳われる存在を前に、カメラはただ包然とアラカを写す。



「清廉な白銀…」

「壊れた救世主」

「人類の希望…」



「くっ、テレビの人が操られて逃げられないみたい…! なんで卑怯なの!」

「…」



 何故だかアラカは「この子の周りは、たぶん振り回されてるんだろうなあ」と思った。



「操られてるっつーか、魅了されてるっつーか」

「ウェル」



 同じジャージ姿で登場するウェル。ビルの壁を走ってからの跳躍には、小慣れた様子が窺えた。



「隣の県にまでビルダッシュとは、狂ってるわぁ……マジで……はぁ、はぁ……」




 そして一足遅れ、レヴィアもビルダッシュを終えてきた。



「持久走、それ、で、大丈夫…?」

「まだ隣の県なの」

「50キロ走り続けてもなおマラソンの心配された!?!?」



 ビルダッシュ(50キロ)を終えたレヴィアは汗だーだーで死にかけの様相だった。



「全力疾走レベルの速さを三時間ぶっ続けとか死ぬわ」

「? だ、から、定期的、に、なおした、よ?」

「レヴィの能力とアラカちゃんの能力はここまで相性いいとは、ウェルは感涙したの」



 そんなわちゃわちゃをしてる間に魔法少女は魔力を込めて必殺技を放った。



「合体魔法! エンジェルストリーム!」

「…えんじぇるすと、りーむ」





 何か魔力の玉が飛ばられてくる、杖が射出しているようだった。



____手を振るだけで掻き消える。



「必殺技なの? 今の。流石にブラフなの」

「…今からやられたフリして、帰っちゃダメかな…」



 アスファルトにぶっ倒れたレヴィアをどうしようかと話し合う二人。

 けれどそんなことに魔法少女は気付かず。



「うそ!? エンジェルストリームが!?」

「……」



 ピンク髪の魔法少女は驚愕の声をあげ

 青髪の魔法少女はなんかもうひたすら死んだ魚の目をして、手で顔を覆う。



「どうするの? 殺すの?」

「…無害そう、だから、別に構わ、ないと思うよ…ただ、敵という認識は、解いておきたい」

「相変わらずね〜」



 アラカはふわり、と髪を揺らしてゆっくりと近寄る。


 そして、声が届くところまで来ると



「…はじめまして」



 と、シンプルに挨拶をした。



「っ、え、あ、はじめまして」

「……ハジメマシテ」



 呆気に取られた様子で返答する。恐らくこんな反応は予想外なのだろう。



「菊池アラカ、と、言います」


「あ、ども…木苺 姫です」

「ハイ…」



 ピンク髪…木苺キイチゴ ヒメ(本名)は呆気に取られながら返し、ブルーは目を逸らしながら返した。



「…こちらに、敵意はあり、ません。

 その攻撃をやめていた、だけ、ませんか?」



 魔力の玉を握り潰しながら告げる。無傷ではあるが…無意味に攻撃される趣味もない。



「争いは、好きじゃ無い。

 戦う意志も、ない。あなたを、攻撃もしない」




 そして自分の意思を伝え終えると…アラカは踵を返す。



「それ、だけ。じゃ、ね」



 帰り道に何か甘いものでも買おうか、と考えるアラカに対して




「待ちなさい!!」



 ____姫(迫真)は叫んだ。



「それなら。説明しなさい、どうしてあなたがマジカルパワーを持ってるの!」

「カエリタイ…」



 マジカルパワー…魔力を宿している理由。

 それを話さなければ許さないと宣言する…必殺技を無傷で崩した強者アラカ相手に。



「まじか、る…?」

「アラカちゃーん。天墜剣イカロスいるのー?」

「いらない」


「うちの決戦兵装の扱い雑すぎん????」



 天墜剣イカロスでぶっ殺そうぜ! と暗に告げるウェル。もうウェルの中ではウザい敵扱いらしい。



「あなたも怪異の一人なのね!

 みんなのマジカルパワーを奪うなんて、許せないんだからっ」


 びしっ、と指をアラカへ刺す姫。



「お、正義(笑)の魔法少女なのwwwwチッスwwww魔法少女さんチッスww」

「みんなのって……明らかにきゅ◯べえポジいるだろ、どこだよ」



 唆されてる枠では? とレヴィアは探りを入れ、周囲を見る。



「あれは堕ちた英雄クマ!! 二人とも、今すぐ殺して臓物引き摺り出すクマ!」

「おいパチモンきゅ◯べえいんぞ殺せ!」

「なんなら原作よりワードセンスカスなんだけど」



 熊のマスコットキャラがふわふわ浮いて指示を出してる。




「怪異、ではない、よ」

「嘘よ!! みんなのマジカルパワーを返しなさい!!」



 話聞かない魔法少女相手にアラカはどうしようかと困り果てる。



「まじかるぱぅわぁwwwww」

「ロリ、性格の悪さ滲み出てるわよ」


「そりゃ、あんな輩みたいな絡み方してくる相手には性格悪くなるの」(すん)

「うーん、正論」



 性格悪いメスガキコンビにアラカ。


 アラカ一人なら魔法少女の説得が出来たが、後ろの二人の口が悪すぎて説得しきれない。




「悪いやつは……ゆるさないっ!」


「えっと、じゃあ、はい」


「「(諦めた)」」



 会話が出来ないのなら会話を試みる価値がない。普段のアラカならそう判断して無言で去っていただろう。


 だがそれでもアラカは目の前の少女を相手にした。相手のおままごとに付き合った。



「もう一度よ! ブルー!!」

「……」

「ブルー!!」

「…ウン、ソウネ」



 死んだ魚の目をしながらブルーはステッキを構える。



「合体魔法エンジェルストリーム!!」

「…りーむ」




 アラカへと直撃。魔力の玉は爆煙となって周囲へ漂わせる。




「…」



 アラカはただ、その攻撃を無防備で受けて…そのまま無傷で立っていた。



「知ってた」

「ぐ、なんて強さなの…!

 きっと、悪の大幹部ね…!」



 悪の大幹部扱いのアラカ。大出世にアラカも喜ばざるを得ない。


「…」



 アラカは、なんかただ〝どうすればいいんだろうこれ〟と…言わんばかりに…冷や汗を垂らして瞳を閉じていた。



「く、強すぎる…!」

「それは悪い奴なんだっクマ! ぶっ殺すんだクマ!!」

「…カエリタイ」



「パチベエの焦りように草なの」

「なんかシラフのやつ一人混じっててね?」



 パチベエ(パチモンきゅ◯べえ)の煽り方をみて…アラカはパチベエを軽く観測する。




「…ごめん、ね。付き合いきらな、いや…」



 そう返す。敵意はないと告げても無駄、こちらが怪異でいと言っても聞きたがらない、反撃しなくても攻撃してくる。



「(青髪の子は、わからないけど…)」


 つまり〝どう足掻いても話し合いをする気がない〟存在____アラカの親と同じだ。



「かえろ、二人とも。

 逃げ帰る、よ」



 故、会話するだけ無駄と判断して踵を返した。


「おっけーなの」

「まだ回復してないんだけど…ちょ、置いてくなあああああ!!」




 そう二人へ告げてまた50キロビルダッシュへと向かった。



 ビルの壁を走り、跳躍してビルの上に、そこから50キロビルダッシュ…うーん狂ってる。

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