七話、文化祭前準備
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秋の学校。その日、教室では生徒たちがわいわいと賑やかな雰囲気で語り合っていた。
「ぶんか、さい…」
嫌な思い出しかない、と言った表情に顔を曇らせるアラカ。いつものことだった。
そして彼女が今発した言葉こそ、生徒らが浮き足立つ一番の理由だった。
「そういえば秋だったわね。
なんかこの前までアスファルト溶けてたのに早いわ〜」
「使っただけで死ぬゴミソードの話はやめるの」
不滅の夏をあった聖女騒動から数週間。
文化祭にて何を出すか、という時期になった。
・ジュリエット(アラカ)、ロミカスなど不要
・メイド喫茶
・唐揚げ、ポテト、ウインナー(屋台)
・お化け屋敷
「ロミカス消されてて草」
「アラカちゃんガチ勢がいたせいなの」
「ロミカスいないロミジュリってなんだよ(迫真)」
ロミカスがいないロミジュリ。
話が進行しねえ。
「しかし無難ね」
「そうなの。無難なの」
【票数】
・ジュリエット 0票
・メイド喫茶 35票
・屋台 0票
・お化け屋敷 1票
「うーん、無難(遠い目)」
「欲望に忠実で草なの」
驚きの投票率に呟く二人。
時期が時期だからだろうか、クラス全体がワイワイとしており、二人の会話も特に浮く様子はなかった。
「そりゃ、四大美少女のうち三人がうちのクラスいるんですもん」
そんな二人へ声をかける少女かいた。
「あ? あー、確か、如月さん? だったかしら」
「如月。四大美少女ってなんなの?」
如月。アラカガチ恋勢にしてロミカス削除の主犯である。
「学校でとびきり可愛い女生徒四人の通称ね。アリヤさんにウェルちゃん、レヴィアさんに…御神体」
「なんか今変なルビが見えたの」
「気のせいだと思うわ」
そんな会話をしながら、レヴィは一人…黒板に書かれたメイド、の文字を投げやりに眺める。
「しかしなー。メイド服か」
「うん、まあ…メイド服…なの」
「? メイド服がどうかしたの?」
ウェルもレヴィに続く形で呟き、それに違和を覚えた如月が問いかける。
「え、いや、だって」
「うん」
「「昨日アラカちゃん、メイド服だったし」」
「「「「!?!?」」」」
響めくクラス、誰もが教室の隅のアラカを凝視した。
その瞬間ビクッと震えるアラカ。それを見て「あ、ごめんなさい…」と如月が謝罪して…目を逸らした。
「え、あの、それどうゆう…」
「あのドラゴンの趣味じゃない?」
「あー、絶対そうなの。アイツ本当アラカちゃん大好きすぎて暴走しがちなの」
菊池アラカ、家ではコスプレをちょくちょくしている。
その事実に驚愕し、誰もが「何だそれみたい」と思った。
「ちなみに、その、画像とかって…?」
「ん? あー、今ウェルの待受なの。少し待てなの」
「スマホナチュラルに持ち込んでるの草」
ポケットから取り出して如月に見せるウェル。
「ぐぁあああああ!!!」
「漫画みたいにぶっ飛んだ!?」
「如月ーーーー!!」
「あ、やべ、これブルマの時のアラカちゃんなの」
「あー、あの画像、ウェルお気に入りだもんね〜」
良いアングルで撮れたから当然なの、と自信満々に言うウェルに全員が驚愕する。
「メイドにチャイナ、体操服とアラカちゃんコスプレ大会は見飽きてるの…なんか別の欲しいの」
「けど普通にメイド喫茶になりそうだけど」
「「「(羨ましすぎる)」」」
心が一つになるクラスメイトに、担任の霧はどうにか収集させようと…アラカへ目を向ける。
「みんな、悩むのも良いけど当事者の意見を聞かないとダメでしょう…」
つまりアラカに全てを委ねる、ということ。
「えと、菊池さんの意見を」
「「「?」」」←全員菊池
「あー、アラカさんの意見を聞きましょう。
みんな、どうせそのためだけにこの票を投じたのでしょうし」
そして教室の隅の席でちょこんと座ってるアラカに、霧は膝を曲げて同じ高さの視線となり。
「アラカさん、アラカさんはどんな格好でカフェをしたら面白そうですか?」
「? ええ、と」
◆◆◆
「無事に決まったみたいで良かったの」
「う、ん…あれで、よかった、のかな…」
「いんじゃない? 結果的に全員納得してるし」
その日の帰り道。三人で並んで歩く。
アラカを中心として歩くのはいつものことであった。
「そういやアリヤはどうしたの?」
「何か、用事が、ある、みたい。集会? とか、いってい、たけれ、ど」
この文化祭準備の段階。皆が浮き足立ち、加えて外部の人間が招かれるという状況…KTCが動かないわけがない。
「みんなみんな、浮かれてるわね〜。文化祭も良いけど…その前に、やるべきことがあるでしょうに」
「「??」」
それは何だろう、と首を傾げる二人に、レヴィは残酷極まりない言葉を告げる。
「____マラソン大会」
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