表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/205

おまけ1 露天風呂だから裸を覗きに行こう!


◆◆◆


 それはムラマサ戦を終えてからの話。

 色々な事後処理のためにその場に留まることが決まった。



 と、言ってもアリヤ、ウェル、アラカなどは学校があるため明日には暁の運転で帰されるのだが…綴さんはテレワークも可能。



「なあー、男連中が居ないの。どこ行ってるか知らないの?」




 旅館の一室…三姉妹に割り当てられた扉を開き、ウェルが問いを投げる。



「今、温泉、だよ。綴さんと上司と、暁さんと、鋼さんが」

「あれ、アラカちゃん喋り方戻ってるの」

「ぶーすと、きれちゃって……」



 テーブルに問題集を開いて、女の子座りで勉強をしているアラカに…アラカの足の指を舐めているアリヤ。



「でも、そうかー。男連中で風呂なの」

「ウェル何か用事でもあったん?」



 アリヤは敷いてある布団に寝っ転がり、ウェルに声をかける。


「いや、特に無いの」




 そういうとウェルは、ふぅ…と布団の上に寝転がる。


 三人は既に温泉に入り、浴衣の姿だ。



「…アリヤ、アラカちゃん」


「んー?」「どう、したの?」




「……奴らの裸って、どんな感じなの?」


「「______」」



 アラカはシャーペンを落とし、アリヤは固まった。





「……」


「……」


「……」




 そして、一人がゆっくりと立ち上がり始めた。それはアリヤだ。




「…温泉は確か露天風呂だったわよね」


「ありや、さん?」



 ウェルはココアシガレットを口に含むと…ふぅー、と息を吐いた。



「それはそれは美しい紅葉を見れたはずなの」

「うぇる、さん?」


「…紅葉、ね。それってかなりの大きさの…〝木〟…よね?」




 木、露天風呂、男の裸。



「「「……」」」




 すっ、とあるものはカメラを手に。

 すっ、とあるものは手紙を回し。



 すっ、と…英雄は、道(扉)を塞いだ。



「そこをどいてくださいお嬢様!!」

「手紙よ、旋回しろ」


「だめ…だめ、のぞき、だめ」



 そのびくつきながらも譲らない姿勢に、ウェルは手紙から一枚の〝布〟を放つ。



 そしてそれがアラカの顔に被さると。


「____」




 アラカはその布を抱き締め…膝から崩れ落ちた。



「ウェル、何を出したの? なんかもう予想できるけど」

「うん、あれは引き寄せ(アポート)で」



 動きを止めたアラカを尻目に、ウェルはその技の正体を明かした。



「くすねてきたクソドラのワイシャツなの」

「すぅーーーーーはぁーーーー♡♡」




 英雄の落日。英雄は血に堕ち、怪異の軍門へと降る。



「お嬢様の買収には成功したけど…何か策はあるの?」

「当然なの」



 浴衣を脱いでワイシャツによる彼シャツをするアラカ。袖の匂い嗅いで幸せそう。



「放射線の検査員を装って侵入するの」


「まさかのがいが◯かうんたぁ」

「びっくり、する。ほど最低…」



 くんかくんかしながらワイシャツに身を包むアラカ。アリヤとウェルは冷めた目を向けていた。

 


「まあ勿論冗談なの、茂夫くんの真似はしないの、犯罪なの」



 そう切り捨てると、旅館の窓からも見える巨大な木を眺める。


「巨大な紅葉の力を借りて覗くの」



 その旅館は代々、その紅葉を大切に育て…夏は青々しい紅葉を眺め、秋は美しい紅葉を眺められる。



「流石、に旅館の大切な木には、登りたく、無い…」


「当然、炎上への配慮は欠かさないの」



 そしてウェルは少し大きめの窓を開けると、そこへ手紙を舞わせる。



 すると手紙から魔力障壁が大量に貼られる。それは地面と平行に貼られており…その意図を即座に見抜いた。



「これは…!?」

「手紙の基礎、魔力障壁を階段のように貼ったの。

 たぶんアラカちゃんも出来るの」



 ____階段。怪異〝死想〟は、手紙(想い)に力で覗きを意図も容易く可能にした。




「あ、これなら…うん、出来る。位置固定が、少し面倒だけど」


「位置の把握は済んでるわ、任せて」



 アラカも魔力障壁を広げ、その上に乗る。こうして三人は徐々に絶景の覗きスポットへと辿り着く。



「これを使い、階段を生み出して…覗く。

 大丈夫なの、我々には紅葉という強大なる自然に愛されてるの」

「ものは言いようの極地を見た」

「紅葉利用し、てるだけ、ていき」



 紅葉の影に隠れ、男湯を三者は覗く。



「おっほーなの」

「良い筋肉……自衛隊、さすが」

「……障壁は、わたし、が、維持しとく、ね…………いまになって、罪悪感、が」




「くっ、愚弟…タオルどけろなの、ち◯こ見えねえなの…!」

「筋肉…いい…」

「…綴さん、の、筋肉…少しだけ、少しだけなら…」




 そして各々、覗きを堪能しはじめた。


 だが悲しいかな、この世には人の欲望や悪意を大切に扱いたがるドラゴンもいる。

 そしてそういった手合いは相手の欲望を感知することには人一倍優れており…




「? あ、やべ」




 ____綴がこちらを見上げてきた。

 このままでは三名は怒られることになるだろう、そしてそれだけは避けたい三人は。




「綴さんにバレた…! ウェル、どうするの!?」

「くっ、ここは……奴の好物で買収するの…!」

「好物…? それは?」



 ————彼シャツアラカ。ウェルはここまで読んでいたのだろう。いやたぶん偶然だわ。



 その愛らしい新コスチュームを見た瞬間、綴は胸を押さえた。



「クリティカルヒットなの…!」

「あとひと推しね…」



 そこで綴が立ち上がり、こちらへ向けて口を動かし始めた。



「…? なんかあのドラゴン、喋り始めたの」


「ええと、読唇術、する、ね」




 アラカがそこで前に出て、綴の口元を観察する。




「『あ』」



 そして声に出して、綴の言いたいことを告げる。



「『あ』『ら』『か』『く』『ん』

 『お』『す』『わ』『り』

 ————わんっ♪」




 ————瞬間、魔力障壁が解けた。




「しまっ、た…! 無意識、に!」

「この全方位調教済み娘ーーー!!」

「お嬢様の変態プレイーーー!!」




 アラカのお座りポーズと共に壊れる魔力障壁! そして三人はどぼーーーん、と湯に落ちた。バカめ。



「いてて…」

「アラカちゃんの調教深度を甘く見てたの…」



 湯に落ちて、起き上がる二人。

 しかし二人が顔を挙げるとそこには__



「これはどういう、ことかね?」




 何処か覇気のある正道に、二人は「「ひょえ」」という声を漏らした。



「……二人とも、部屋にて正座で待ちなさい」

「「ぐ」」



 正道は息を吐き、紅葉の方と…周囲を見渡す。


 紅葉には特に枝の折れた様子は無く、また他の客もいない。


 そうして、ふぅ、と息を吐いて。



「……まあ、他の客がいないのを見計らってやった。また、何かの迷惑行為を働いていない。

 という点は評価しよう…そういう行為を好むのも学生ならではなのだろう」



 誰かに迷惑かけてないから、まあ許す。という沙汰を聞いて二人は顔を明るくし。




「____というわけで、お小遣いを一ヶ月無しにする。

 またその間、各々の稼いだ資金は預かっておく」



「そんなぁ! お嬢様フィギュアの制作費が」

「ウェルの金ーーー!!」



 絶望に叩き落とされた。








 そして、ここに何故かいない子は何をしているかというと。



「え、あ、あの」

「静かに」



 細い線に、引き締まった筋肉に抱き寄せられ……アラカは綴を見上げた。



 中性的で、端正な顔立ちをしている…銀色の髪が、視界に映る。性壁以外完璧な男は顔も良い。



「お風呂は静かに入るものですよ」

「ひゃ、ひゃい…」



 今現在、アラカは綴と一緒に湯船に浸かっていた。


 落ちる瞬間、アラカは綴に引き寄せられていた。



 そして彼はニコリと微笑み————



「それと、湯に服はつけてはいけませんよ」




 ————そう告げた。





「…」



 数分後、顔を真っ赤にして…綴の膝上に座っているアラカがいた。湯船に浸かっているものの、それで羞恥が晴れるわけでもない。



「アラカくん…言っておいてなんですが、難しければ部屋に戻ってくださいね。

 茹蛸みたいになっています」


 そしてその近くには、綺麗に畳まれたワイシャツと、下着があった。


◆◆視点切り替え



「湯船は気持ちいいですか、アラカくん」

「……ひゃ、ひゃい…」



 背中に綴さんの、体温を感じながらヒクッ、と体を揺らす。

 温泉はあったかいけれど、何故かそれ以上の熱さを感じる。



「そんなに入りたいのなら女湯があるのに…間違えて入ってきてしまうなんて、可愛いですね、本当に」


「……」



 背中と、お尻に綴さんの体温を感じながら…罪悪感を覚える。



「罰です、しっかり恥ずかしがってください」

「っ…ひゎ」



 すっ、と抱き寄せられて…更にドキドキする。


 耳まで真っ赤になっていると、思う。

 全裸で綴さんの膝上で…露天風呂に入らされて。



 綴さんの大きな身体に隠されて奇跡的に他の人には見つかってないものの…動けばバレるのは確実で。




「(背中に、綴さんの、熱…

 身体、動かせない…おふろ、はだか)」



 ぎゅ、と綴さんの腕にしがみ付く。



「…破壊力、凄いですね、相変わらず。ふわふわのからだ…」



 湯気に包まれて、私の銀の髪先を撫でるように伝う雫が…ぽつんっ、と湯に落ちて…波紋を微かに広がる。



 それが他の人にバレませんように…と祈って、また心臓に動悸がくる。



「アラカくん、落ち着いて…空を見てください」

「え、…あ」




 そこは、この世のものとは思えないほど美しい世界だった。




 紅葉に、雲一つない美しい星空。


 湯気の微かな白色が、その世界を幻想郷めいたものにしていた。



不滅の夏(エーテ・イモルテル)の影響でしょう。

 雲は全て散らされて、しばらくはこの夜空に溢れている」



 ほう、と息を吐く。


 その光景に見惚れながら、背を…自然と綴さんへ、預ける。



「うん、落ち着いたみたいですね」



 ふう、と綴さんが息をついて…私の背中に、触れる。



「…?」

「君が欲しい」





 声の様子が、がらりと変わる。なんだか強烈な情念の混ざっているような…!




「君が欲しい…君が欲しい、君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい君が欲しい」




 壊れちゃった綴さん…上半身を捻って、綴さんの口を、口で塞いだ。



「なら好きなだけ、うばえばいい」




 これが一番効果的。綴さんはふと、我に帰ったように小さい声で「すみません」といった。


 まだ暴走状態のようだけれど、会話はできるまでにはなっている。



「それで、なんで今回は壊れ、ちゃったのですか?」



「……君の裸、が誰かに見られるかもしれない状況に…壊れそうになりました」


「自分から、この状況にしておいて、すごくポンコツですね」



 さてこの人、本当にヤンデレで独占欲の塊ですね。


 どうやって甘やかそうか…と、考えた刹那。



「……きんにく」




 目の前に、とてもえっちで、素敵な胸板が。



「え、ちょ、どこ触って……うわっ、あ、あらかくん!?」



 胸板胸板胸板胸板胸板胸板胸板胸板胸板胸板胸板。



「(雄っぱい…!)」



 夜空が、とても綺麗だった。狂いそうなほど、美しい月の光…これはきっと、月の光の魔力なのだろう。



「わ、ちょ、だ、だめ……です…! というかこういうのは、男女逆のよう、な……ふぁあっ…!?」



 リュバンが、月の光に照らされて茶髪の彼女に手を出したように…私は月の光に惑わされ…綴さんにしゃぶりつく。



 そうして、温泉宿での一晩は過ぎていく…。


「灰色のヤンデレに捕まってるのを見たの」

「…灰色のヤンデレの餌食に、おいたわしや」



 そしてしっかり、私もお小遣い一ヶ月禁止にされた。

読んでくださりありがとうございます…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これはヤバい、何とは言わないがヤバいすごく良い。 アラカくんが綴さんのおすわりにすぐさま反応するところがしっかりと調教されていて良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ