エピローグ:怪異たちの家
母の日にこれを投稿したかった……なので、かなり無理して執筆しました
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「こんにちは、だよ」
————————?
「やあ、ムラマサくん…いや、これからは…ムラマサちゃん、かな?」
くろい、かみ……ぐんふく……琥珀の、眼…?
「この場所は…そうだね、君の心の欠損が修復されるまで過ごす場所……かな」
周囲は……やしき? くらい広い場所。
そこ、で……かなりの困惑を滲ませながら…・色々と、説明を受けて…謎の生活が始まった。
「ん? おはようだぞ、ご飯はできてるよ。
ご飯派でよかったかな。数ヶ月は家事するときいがいはいない人、みたいな認識で構わないよ」
首領さんは、後ろで髪を纏めて……エプロンを着けて料理をしていた。
ご飯は…味が、しなかった。いつもと同じ味。
そうして、よくわからないまま…この意味不明な人との生活は始まった。
「君の悪意も、激怒も俺は愛してみたいのだよ」
最初、このよく分からないひと、そんなこと言った、
「ちょ、すぐに大して信じたく無い相手を信用するのはやめなさい。自分の心を捻じ曲げてるの、よめてるからね」
…
「悪意を悪意のまま愛せないような親も、極少数だけどいるからね。そう言う潔癖症に限って子供のことを微塵も見てない。不思議だね」
……
「うん、まーた自分騙してるぞ。
さて、思考の深掘り始めようか…君の認知の歪み、今回はどこだね」
………
いろいろと、おはなしした。嫌いで、嫌悪で、殺意が渦巻いていた時期もあった。
殺意を吐き出しまくったのは、かなり時間が経ってからだとおもう。
「君が俺を〝殺意を向けてもいい相手〟と認識した、それが嬉しくてたまらないのだよ…難しいかな。共感はしなくていいから、理解だけを以て認識なさい。
君に共感はまだ早い」
理解、それだけでいいと言われ…スッと、頭に入ったと思う。よくわかんないけど。
「ああ、いいよ。おいで……その殺意は、吐き出さないと、絶対に晴れない」
実際に殺そうとして、この人は、本当に殺された。首を絞めて、息を壊した感覚が、手にまだある。
ただ、本当に殺したと言う意識が……腕に残った。
そのあと、50回くらい…不死の異能で蘇る首領さんを殺しまくったら……なんか、寝てた。
そのあと、一ヶ月は殺しまくって過ごしてた、と思う……。
けどそこ、で……なんか……初めてママが……〝俺の意思をぶちまけたこと〟に対して嬉しそうにしてたママが……信用できそうだと思った。
「信用は…いや、この状態は…うん、これはアレだね。
信用しないと生きていけないと認知が壊れてるのか、じゃあ育てるのはスペックのほうだね…」
そこで、かなりの時間が経過してから……いろいろと、けいけん、した。
「今日は……そうだね、お祭りでも行こうか。
さ、着物を用意しよう。おいで」
まつり…? と言うのは、初めていった。よくわかんなかった。
「かわゆいかわゆい……うん、ロリの方向性は正解かな」
「雨だね。あったかいミルクティーでも淹れよう、さ」
窓から雨の景色…きっと、雨模様、と表現できる世界を眺めて…ミルクティーを飲んだ。あったかい。
「大丈夫、怖くないよ…怖いなら、しばらく……ママが抱きしめたげる……そうだね、体感で軽く10年は過ごせば大丈夫かな。
他者が怖くないように体感に落とすのは…その後でも大丈夫」
ぱにっく、おこしたら……よしよし、された……パニックの、げんいんとか、理屈とか……おべんきょ、させられた。
そこで、きづいた。
みん、な…みん、な……ずっと、この、ひとに……よしよしされて、きた、んだ。
おれは、あまりしんようできないし、たぶん、もう誰も、しんようはしない。
そういうふうに、育てられたもん。
ままは、しんようしない。
でも…しんようは、しないけど、すき。
「今日はいつもの常識講座…歪んだ認知編だぞ! 終わったら、ご飯にしようね」
ずっとやさしい、ほほえみ、で……心の底から、りせい、ある……愛情を、そそいでくれ、て……
「冬だね、ほら、おいで。
暖炉の側で絵本読んだげる、毛布も用意しよう」
あったかい……あった、かい……なみだ、が、ぽろ、ぽ、ろ……
「おかーさま…おかーさま……」
「うん、おかーさまだぞ」
みんな、みんな……こうし、て…………
「おかーさま、おかーさま……」
「うん、どうしたの?」
だから、みんな……おかー、さま……が、すき、なんだ。
きらいというか、しんじられないし、どこか〝親〟とかいうから、気に食わない…と、思う差別意識も、あるけれど。
それでも、それでも、
「…場所………ばしょ……い、ばしょ…」
ぼく、らが……もらえ、なかった…………あたりまえ、の……かてい…かん、きょうを……この人、が……、
あんしんできる、一人でも生きていける、空間を、このひとは…くれる。
理性的な、かいい、が、おおいの、は…………なっ、とく。
こんな、やさしいひとに……りせいてき、で、そだてて、くれる……ままの、背中……みた、から…………。
「そっか……もう、立とうとしてるのだね」
よしよしして…まま、ころしたい…さつい、さつい、でも、しゅき。
「分かった。なら…次の試練を出来たら……この場所から出られるようにしよう」
さついも、あくいも、こうてい……というか……理解、され、る。
表面上じゃ、な、くて…傾聴して……理屈とか、仕組みとか……殺意を抱くに至る道筋を、ぜんぶ、ぜんぶ、あいして、くれ、る。
「うん。今回は少し難しかったね。
この試練はいつでも挑戦できるからね……大丈夫、とりあえず見本から見せよう」
「正直言って…本音はまだ、外に出したくないのだけどね。
精神も治ってない、添い寝をやめようとしたらすぐに大泣きする、この場所にいるのも10年ほどだからね…まだ」
10年経って……この人のことの内面や、性根を見ようとしていたら……とても誠実な人だという認識だけが残った。
「そのためには……少しずつ、自立のためのお勉強も始めておこうかな」
ある日も、
「————さて、お説教の時間だよ」
ある日も、
「誰かに優しくしようとなんて思えない。
だから誰かじゃなくて、自分の利益にためだけに…人に優しくなさい。君にはきっと、そちらの方が向いている」
ある日も
「物事の焦点を〝迷惑の有無〟で見てみなさい。
今の話……誰かを傷付けたり、迷惑かけていたかな?」
ある日も、ある日も、ある日も……
「思考が飛んだね。
その思考は後に回すとして、今の話を深掘りしようか。恐らくそこに君の歪みがあるのだろう」
お勉強、と……認知の歪みを、ただす、勉強も…………せかいを、観る……ほうほう、も……
「人はね、君の思っている以上に、臆病だよ」
このひとは、ぎゅって、しながら、おしえてくれた。
「よしよし……うん、よくできました、だぞ」
恐怖のない生活……息苦しくない生活……それは、なんだか奇妙だった。
さいしょ、何か、信じられない……ひたすら新鮮で、ある時期気味が悪いとすら認識していた。蛙化現象というらしい。
でも、
「誰も信用したく無い、という気持ちに寄り添ってみなさい。
自分で試して、それで不快感が無ければ、それが正解だ」
だれも、だれも、しんようしなくていい、という環境を、与えられて…とけた。
「うん、この調子なら外に出るまであと50年もかからないね……無理はしないでね、よしよし」
ただ、それも数年で慣れた。
時より、トラウマで吐きそうになるけれど…それだけ
「(まま……いいにおい)」
いい匂いに包まれて、添い寝してスースー寝るの、気持ちいい。
毒婦じゃなく、説教も、躾もして、背中で語って、優しく甘やかしてくれる。
「この場所ではどれだけ過ごしても、外では一秒。
人間はいない」
あと……何年でも、一緒にいてくれる。
まま、まま……あたま撫でて。こわいから、怖いから添い寝して…少しずつ、お説教うける…けど、内容は全部わかりやすい、から、説教というより、授業みたいな……やさしさ。
「これで100年くらいかな……精神治療は、まだ不安が残るけれど……常識は教えた、世渡りの経験も積ませた……」
ふわり、と……頭を、撫でられて…………この幸福な夢から…………少しずつ、さめようとしてた。
「マズローの欲求五段解説……生理的欲求、安全の欲求、所属の欲求、承認の欲求は満たした…………うん、心も治り始めてるね……」
最後の試練も……終えて。
【————の加護】 取得
「自己を高めるために、歩みなさい。この家の門はいつでも開けておくからね」
「ぁぅ……」
「……………………精神の幼女化は……かなり不安だけど……まあ、なんとかなるはず。
うん、理論上は…………スペック的にも、うん……技術も育てたし」
「ぅん!」
ぴょこりっ! と、すっかり小さくなった手をあげる。
選別にもらったリボンもお気に入り。
「…………やっぱり少しの間は、ママの助手してみない……?」
…………ひとりだち……まだできない……?
◆◆◆
100年ヨシヨシしてたら幼児退行してた件。
連載開始っ!!(大嘘)