五十二話、目覚めと変革
もう一話出します。最近、出せなくてごめんなさい。
今夜の九時に出します。
ブクマを外さないでくれた読者様方には、本当に感謝です
◆◆◆
〝死んだと言う現実〟を中途半端に否定しようとした結果が、これなのだろう。
意識は、魂は、一体どの比率で、どれだけの正気が残っているのか、もう誰も分からない。
「けひ、けひひひゃ、けひゃっ」
ぐちゃぐちゃに、まるでミンチのようにこねくり回された魂は、そのまま壊滅的な衝動をその大地に撒き散らした。
そんな様子を、死にかけの私は、そっと、眺めた、
「(あ、ああ……そっか、そうだった、んだ)」
不思議と、心は落ち着いていた。
「(私、は……この光景を、見たんだ)」
視点は違う、だけど、確かに私の封じられた記憶に……この場所はあった。
「そろ、そ…………く、る」
開き始めた右目で、あの英雄の到来を…………予感した。
遠くから、何かが落ちてくる。
遠くから、この座標目掛けて。そうあの子だ、あの子が、きたんだ…。
「————また、ぼくは、遅れた……ああ、また、か」
壊れそうな瞳で、壊れそうな背中で、辛そうな、とても、とても辛そうな、彼…………。
彼、だ。彼を見て、私は…………
「(この、英雄を……怪異だと思い込むことで……私は)」
————自分の心を、守ったんだ……そんな独白を囁こうと、するところで……私の意識は深い海の中に……沈むように、登って行った。
◆◆◆◆
「————……ん」
「……ヤさ…………リアさん…………」
「アリヤさん!」
「ひゃいっ!?」
名前を呼ばれ、飛び起きる。起きると、そこには暁さんがいた。
「目が覚めましたね」
「えと、……ここは?」
「病院です、記憶はどこまで残っていますか?」
周囲を見渡す、確かにそこは病院であり、森の中では無い。
————能力が解除された…?
「え、あ……そう、ですね。話せば長く……っ」
そう呟き、同時……視界に違和感があることに気づく。
〝片目が上手く見えない〟
「あ、れ……これ…包帯…?」
「はい。先程アラカ様がお見えになり、魔法で治療してくれたようです。
アラカ様曰く〝以前より良く見える目になってる〟…と」
だから心配なさらずとも大丈夫です…と、副音声が聞こえるような声色で暁さんが教えてくれる。
片目を覆う包帯……それは私がナイフで突き刺した箇所に相違なく……。
そんな疑問を他所に、別の見舞いのメンバーが顔を見せる。
「アリヤ、大丈夫なの?」
「あ、ウェル」
おでこに〝護衛役〟と書かれた鉢巻を巻いてるウェル。かわいい。
「怪我、また精神がぶっ壊れる系のなんか流されたなの?」
「え、あ、うん…そんな感じ」
————目的は情報収集。
脳裏に過ぎる言葉、そうだ、思い出した。
「そう、だ! 話を聞いてください、お嬢様が危険なんです」
「?」
そう大慌てでいうも、ウェルは微かに困惑をしながら現状を簡潔に報告してくれた。
「アラカちゃんなら、アリヤの治療を済ませてレヴィア殺しに行ったの。
ウェルは護衛役なの」
読んでくださりありがとうございます…!