三十七話、吐き気が止まらねえよ…。
一週間も空けて、すみませんでした。
いちゃいちゃしーんみてると、吐き気が止まらなくなる……
◆◆◆綴視点
胸板の上に、ちょこんと乗り……顔面で私の胸の匂いを嗅いでいる小さな温もりを感じながら今後の対策を想起する。
「(…………聖女派、潰さねばなりませんか)」
今まで放置していた巨大派閥…それの解体を視野に入れて情報整理を始める。
「(現状……我々の敵は聖女派。いや、私だけが敵視しているのでしょうが……まあそこはいい)」
「(聖女派は聖女一人に依存した怪異の集団……ただ一人に依存した〝宗教国家〟が本質……。
ならば聖女を殺してはいおしまい……とはならない、寧ろアレは抑止力の側面も宿している)」
そしてそれが、私が今まで聖女派に関わらなかった理由だった。
「(目的:聖女派の解体。
に対して危険な課題が多すぎる……それが今まで放置していた理由だが……さて)」
瞳を閉じる。胸で寝ている彼女を抱き締め、引き寄せる。
「(この子がいるなら、別に他の人はもうどうでもいいのですが……。
被害を無視して、この子の善性が化学反応をする可能性もある…か。
まあ、やはりあの方法しかありませんか)」
————暴力振るって愛しなさい。
「…………」
————女性に対して重度の敵意を抱く貴方は、そうするしか。
「……アラカくん?」
「あ…やべ…」
名前を呼ぶとアラカ君はすぐに胸にまたパタン、と倒れてすぅすぅ、と寝たふりをし始めた。
————数秒後に、マジに寝た。
「(いつから、気付いていたのでしょう)」
ぽすん、と枕に頭を預けて天井を見た。
十数秒前に聞こえた声、それは恐らく……彼女の声だ。
そして彼女は私がどうすれば救われるのか、それに気付いている。
「……暴力、ですか……」
確信した、この子は私の心理に指にかけ始めている。
「……アラカくん、私が君に……暴力行為ありの、そういうことをしたいと言ったら、受け入れますか?」
「勿論」
「…………」
即答だった。そしてさっきまで寝ていたはずなのに……。
「というか」
————ガツン゛ッ゛!! と、いきなりアラカくんに頭突きを放たれた。
「貴方が先に、私の闇を闇のまま、肯定したんだ。
自分の闇は肯定されないなんて、許せません」
呆気に取られていると、ドガッ……と強引に私の胸部に乗ってきた。
「貴方が私の闇が暴走することを是としたのは、どうしてですか」
「それを直視したいと思ったからですね」
以前から告げていることを、ただ告げる。
小さなベットの上で、彼女の銀色の髪が揺れる。
「それはどうして?」
「自分の都合のいい部分だけを視たがる脳内御花畑にはなりたくないからですね。
————ッ……」
————脳裏が、軋む。
それを振り切り、顔がかすかに歪んだのを隠して、言葉をつづけた。
「もし、そんな奴がいるのなら……ソイツは人と微塵も向き合っていない。
君の■■が良い例でしょう……人と会話するフリをしているだけで
妄想の中にだけで生きている病気猿です」
善人ズラしてる自分様に酔うことでしか自分を守れない病気猿が、あまりにも憎い。
「ああ、つまり、それは」
私がこの子の闇を受け止める、その理由はつまるところ。
「君の闇を受け止めて、初めて君と向き合えてる気がするからでしょうね」
そう告げると、アラカくんは溢れるような微笑みを浮かべて
「そんな貴方だから、闇を闇のまま、受け入れたいと思ったのですよ」
かり……と、私の肩に、牙を突き立てる。だがそれはいつもの衝動的なものではなく…甘噛みのそれだった。
「暴力を振るうのが負い目なら、先に私の方から暴力振るっておきますね」
————ぶち、と牙が減り込んだ音が聞こえた。