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二十九話、元■■3

鬱シーンはこの辺で終了です。理由は最後にあります


「————ふざ、けるなよ、頼むから……」



 頬に、雫が伝っていた。





 もうダメだ。殺意のままに行動をしてしまおう。そうしよう。


 突き飛ばして————ナイフを取り出して————振り上げて————恐怖に染まる黒い何か————






 ————————————————————刺し殺してしまえ————



「ちょ、ま」



 ————ぐち、ぃ。




「…………」




 ぶち、ぐり……





「…………やっぱ、だめ、だ……」



 ぶち……と、自分の左眼に指を突っ込み…引き千切る。


 ナイフでぐちゃぐちゃになっている瞳は、不快なだけだった。


 片方の獣耳もない、片手もない、片目もない。そんな状況だった。




「……っ」




 ————それでも、殺すのは間違えている。



 ダメだ、ダメだ、殺したいのに、殺せない。ダメだ、ダメだ……。


 もう、逃げよう。これはダメだ。




 どんな言葉も、どれだけ真摯な想いさえ、この女は〝気持ちよくなれる道具〟に書き換える。




 〝納得したのに行動しない〟


 〝何も支払いたくない、だけど欲しいものは寄越せ〟


 〝私は意見を曲げたくない、お前が曲げろ〟




「納得し、たの、なら行動に、移せよ。それ、が、嫌なら〝高望み、だった〟と諦、めろ、よ。

 東大。行、き、たい…なら勉、強、しろよ、勉強、せずに〝でも行き、たいから、入学させ、てっ♡〟が、通る、かよ」



 何か目的があるのだろう。今まで接触せず、今接触したのには何かの因果が関わっている。



「ダメだ……脳味噌が、腐ってる……だから嫌いなんだよ……君らは。

 なに、を、言っても……本音、を言っても……全部、気持ちよく、なる、た、めの…おもちゃに、する……」



 つまり、自分の誰にも明かしたくない本音。


 それを明かしてもコイツらはオモチャにして〝遊び出す〟のだ。

 心底馬鹿に仕切っている、無意識にしているのだから尚たちが悪い。



「今、現実、に生きて、いない……」



 コイツらは成長しない。

 声が届かないなら、行動で壊せば良いのだろうか。



「ずっと妄想の世界で生きて……ここにいない……。

 だから嫌いなんだよ……」



 ダメだ、衝動は分けようと、最低でも冷静になろうとしたのに。



「頼むから…………」



 ダメだ。



「一回でいいから……現実を、見てよ……」




 ————怒り()が、止まらない。



「素晴ら、しい、自分、様を、ずっと、追いかけ、続けてるから……気持ち悪いんだよ」



 ここにいない、ここにいない、この人たちはここにいない。



「嗚呼……ダメだ……こんなこと言えば、君は思うだろう。

 ————考えたフリする私は素晴らしい……と」




 悩んだフリをして、それだけの人間。それがコイツだ。

 言葉も、訴えも、あるいは実力行使をしても、この人間は治らない。



 典型的な〝わかりたくない人間〟には、どんな声も届かない。

 世界は一人で完結しているから、傷付かないが、同時に成長もない。



「…………頼むから、夢から覚めてよ……。

 一度も、話し合い、させてくれないのは……辛いよ…」



 黒い稲妻を抑えて、帰るように促す。




「(意味ないのは分かる……でも、望み、は、ないと気付いた、はず、だ、から……

 これで、かえって、く、れる、はず)」



「————ごmeんね。■■さんもしっかりするからね」




 黒い何かに抱き締められた。


 ————は?




「————触るなあああああッ゛ッ゛!!」



 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。衝動のままに突き飛ばす。

 ダメだ、コイツらはまだ気付いていない。微塵も聞いていない、微塵も会話していない、ただそこにいるだけで夢の世界に生きている。



「汚い汚い汚い汚い゛汚い゛汚い゛ッ!!」




 肩に触れた—————肩の肉をナイフで引き裂いて皮を剥ぐ。


 二の腕に触れた————二の腕の肉をナイフで引き裂いてぐちゃぐちゃにして骨が削れてもまだ削ぎ落とす。


 ————頰の肉————触れた箇所だけナイフで壊す。




「ダメだ、ダメだダメだダメだダメだっ!!

 まだ足らない、汚い、何が壊し足らない…!?

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い゛ッ!!」



 嗚呼そうだ、コイツに私がついている、削ぎ落とさなければ削ぎ落とさなければ削ぎ落とさなければ————殺してやる。





「————やあアラカ、助けはいるかい? いや、承諾とかどうでもいいか」

エレガントロリまま来た。これで反撃ターン入れる

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