二十七話、元■■1
鬱シーンのため、鬱シーン終了まで連続投稿しますー。
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少しだけ、ほんの少しだけ話を聞いてみよう。
「………………」
ナイフを構えたまま、逃げる気配を止める。
声を出そうとする。
「……?」
口を開けて、声を出そうとする。
「……っ」
————声が、出ない…?
「刃物を置きなさい!!」
ビクッ、と震える。
————バチンッ、と乾いた、電流のような音が聞こえる。
「親no言うことguらい聞kiなさい!!
こっit の気持ちぐらい考えor よ!!!」
真っ赤に腫れて頬を、ひと撫でする。
指にほんのりとした熱を覚える。内出血だ。
「(……気持ちを、考えて、欲しいなら……まずは自分から、じゃないんだ……)」
そういえば、この人たちはそうだったな……と、今更ながらにアラカは思い出す。
この人たちはまともに受け止めない。全てが薄い。だからこちらも……誠実である必要はない。
内側から、何かが抜け落ちる。
「…………」
ただ黙る。
「…………っ」
————ダメだ、声が出ない。
声が でない。
つまり
どうなる?
にげ れな い?
はん ろん ふ か
————また 壊される。
「(こわい、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)」
脳が恐怖で埋め尽くされる、今すぐ殺したくて堪らない。
平気で暴力を振るう、命令してくる、怒鳴り散らしてくる、怖い、殺したいのに、殺せない。
傷つけて、傷付けて、傷付けたコイツら、が…? 今更? 会話しよう? こちらの会話要望は斬り捨てたコイツらが? てか今コイツ暴力振るった?
————もう、諦めても、良いんじゃないか…?
「(殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと)」
———— もし、私が……一人で、自立でき、て……このストックホルムが、杞憂であったら……その時は、もう一度……捕まえて、くれますか。
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