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二十六話、元凶ども

◆◆◆


 ガーデンから逃げて道沿いにあったレンガの壁に背を預ける。


「やっぱ、り……」



 力無く、レンガの壁にもたれ掛かり…先程のことを思い出す。



「(誰かに、悪意を、向け、ないと、ダメなのかな……)」



 レヴィア教皇に、私は悪意を剥き出しにした。

 あと少しで殺すところだった。ギリギリでどうにか回避したが、それでも私は危険なのだろう。


 胸に不快感が満ちる。



「(……謝、ら、ない、と……)」



 足が向き直り、けれどもすぐに止まる。



「(……間違い、を、成長、に、かえ、ても、ないのに…?)」



 悪くない誰かを傷付けた。


 罪のない誰かに、八つ当たりをした。



「……………」



 その事実を、胸に反芻させて。



「(……ダメだ…)」



 そう、気付いた。



「(謝罪は、その罪を悪いと思うことで、はじ、め、て、価値を、持つ。

 罪、の、い、しき…は…はんせ、い、しゅ、だん、、こうちく…で…なせ、る)」



 ゆえに謝罪には然るべき成長と反省を。



「(ここ、で…はん、せい、しゅ、だん、を…こう、ち、く…しな、きゃ)」




 まずは識ろう。

 何故私は、さっき怒った?



「(……かしこ、く……諌め、る、声を、許容でき、ない)」




 つまり私は、心を探られることさえ殺したいと思う人間だということ、

 器が、狭すぎる。



 そう、器が狭いのだ。そしてそれが問題点だ。



「(……精神的、安定……けつ、じょ。

 精神、が、あんて、いすれば……反省、と、でき、る)」



 反省目的:心の広さを手に入れる。



「(……)」



 反省手段1:綴さんをゲットする。

 反省手段2:過去のトラウマを乗り越える。


 以前は綴さんという精神安定パーツがあったため、大事は起きなかった。


 だが今はいない。ならば必然、トラウマに対する答えを得ることだ。



 ————捨てることが出来るのなら、どれほど幸福だろう。



「(……過去の、トラウマ、を乗り越えるには…何が、ひつ、よ、う…?)」






 ———— 自立のために、必要なものは……一つを除いて、全て与えています。





「っ…」



 苦痛に脳裏を埋め尽くされる。


 そもそも、何故私はこんなに苦しんでいる?

 何故、私がここまで。それとも生きるとはそういうことなのだろうか。しかし妙だ、.私の周囲の輩はどういうわけか気持ちよくよがっている連中ばかりだった。少なくとも私が笑顔らしい笑顔を浮かべた記憶はない。何故だろう、彼と我の違いはなんだろう、何故私だけがこの力に選ばれて同時にこの苦痛に選ばれたのだろう。それが己の人生だと一時期は悟っていた気がする、しかし今にして思えば不思議だ、ああ憎い、殺意を覚える苦痛が身体を締め付ける、この身体は要らない切断してしまおうか壊してしまおうかそうだそうすればきっと苦しみは少ない、相対の何割かを切断すればキッと楽になれる苦痛も何割か消えるそうだそうだそうだそうだそうだろう、そうでなければおかしい。



「…………」




「(トラウマに、対する…答え。

  トラウマを、ねじ伏せるには……心の余裕が、たらな、すぎる…)」




 だがそんなことはできない。してしまえる環境にない。

 環境にないなら、そういう環境にしてしまえば良いのではないだろうか。



「…………綴さん…」





 気がつけば、ほおに涙が伝っていた。




 だが、そこで。



「あ、いtA! miつけた、おnIいちゃん」



 心底不快な声に、総体がビクッと恐怖に痙攣をした。



 アラカの視界には黒い何かに包まれた人型の何かが喚いている。



 人型は二体。そしてその正体をアラカは即座に見破った。



「話siあいをしmaしょう! そうisればきっト分かるはauよ!!」



 ————元■妹と、元■妹。


 触ろうと近寄る黒い何かにビクッと震えてアラカはナイフを抜き放ち、その切先を向ける。


 それを見てビクッと震える黒い何か。



「そ、その刃物ha離しなsaいっ!!」



 自衛の手段を失えと命令してくる黒い何か。


 自分のしてきた行動を一切省みない恥晒し。



「(はな、し、あい……?)」




 ————今まで、こちらの声を全て切り捨てた奴らが…?



「(はな、し、あい……)」



 ————自分は、切り捨てた癖に? 自分の意見は聞け、と…?




「…………」




 胸を締める違和感。


 ただ、本当に、目の前に生きている人間が分からなくなる。




「(………と、、と、に、かく……にげ、ない、と)」



 また、何をされるか分からない。


 殺したいとは思う、だがこれは、それ以上に気持ち悪い。



「ちょ、ま、maって!!」




 逃げる気配を察したのか元■母?が声をかける。



「話si,あい、したいの」




 無理だ、と思った。


 話し合いするには余りにも遅過ぎる。




「…………」




 ————価値観の歪み。

 ————自分ではなく、敵を見なさい。




 脳裏で響く言葉。




「…………」



 少しだけ、ほんの少しだけ話を聞いてみよう。

読んでくださりありがとうございます…!

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