表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/205

プロローグ:約束されたエンドより

注意:主人公はこの話で湯たんぽを自称する女の子です。



 冬の日のことだった。朝、薄く、けれども透き通る朝日が、カーテン越しに見えた。



「(雪でも降っているのでしょうか)」



 そんなことを想い、上体を起こそうとする……刹那に、胸の温かい感触に気づいた。



「〜〜♪」



 すりすり、と彼女が私の胸に犬の耳を擦り付けてくる。



「湯たんぽ、のお熱は、如何ですか? 綴さん」



 大型犬用の首輪を着けて、銀色の髪を揺し、獣耳をぴょこぴょこと愛らしく動かす少女……。


 体の至る所に包帯を巻いており、その隙間からは痛々しいアザが見える。



「(……ああ、ここはもう、あの苦しい場所ではないのでしたね)」



 改めて、傷だらけの彼女を見て……そう思う。




「ええ、とても、とても暖かいです……」



 そっと抱き寄せる。すると、あることに気付く。



「……その首輪、ボロボロですね」

「…? ああ、もう、何年も着けていますもの」

「新しいものでも、買いますか?」



 首輪、犬用の首輪……それは、私が彼女に対する独占欲で嵌めさせたものだった。



「いえ、もう少し、もう少しだけ……これが良いです」



 彼女は首輪をそっと撫でて、そう……少しだけ、頬を赤らめて、嬉しそうな顔を浮かべる。


 その表情に、ドキ…と心臓が高鳴る。



「思い出の品、ですので」



 ああ、私はやはり……彼女に弱い。



「……」



 頬から涙が溢れ出す。


 悪夢が全て、彼女という天使に拭われていく。



 いい匂い……うなじから溢れるフェロモンが、意識を溶かす。



 この子の身体をもっと味わいたくて、腕の力を強める。



 私のために首輪を着けてくれる、天使。監禁しても彼女は受け入れてくれる、



 私は女の子を監禁している犯罪者だ、だというのに……こっちが彼女に閉じ込められている気分になる。



「(……湯たんぽ。側にいて、監禁(悪意)すら愛して、好きになってくれる天使……)」



 この生活を始めて、どれだけ経っただろう。



「(ああ……今夜はきっと、良い夢が眠れる)」



 彼女の匂いを嗅ぎながら、そんなことを思う。

 抱き締めてくれる、彼女。優しい銀髪の彼女……傷付いているのに、私に依存してくれる彼女。



「(この部屋も……少し悪趣味が過ぎていますから、少しだけ改善しようかな)」




 壁には鎖が付いており、その鎖の先には手枷と首輪。


 壁に立て掛けた拘束椅子。電気を流す機能があれば立派な拷問器具である。


 扉にはナンバーロックが全部で30個。愛している、愛しているんだ。逃したくない、閉じ込めたい、殺してでも側に置きたい…嫌だ殺したくない。




「(……ふふ)」




 ————改めて見ると本当に酷いな、これ。




「結局私は、恐怖から逃れられないのか」


「————そんな貴方だから、私は心を許せたのですよ?」



 胸の内を読んでいたのか、彼女がそんなことを言う。



「……改めて思うのですが、どうしてこんな…監禁生活を、受け入れてくれたのですか?」



「言うほど監禁でしょうか……外に出たい時は出してくれるし、読みたい本はお願いしたらくれますし……縛りらしい縛りは勉強させてくることでしょう」



 ……確かに、監禁というより軟禁に近いのかもしれない。


 家事も任せており、料理もしてくれる。材料はスーパーで買っている中でうまく回している……本当に感謝しても仕切れない苦労をかけていると思う。



「ですが、そうですね。

 この軟禁……を受け入れた理由があるとするのなら」



 布団から、身をかすかに乗り出して……私の胸に手を乗せる。



 布団が微かに折れ、彼女の白い肩が……露出される。



「貴方が、そうでもしないと楽になれないから……でしょうか」



 こちらの悪意を見通して、その上で受け入れてくれる、彼女。


 甘い香りのする彼女………菊池アラカと、かつて呼ばれていた彼女は、とても愛らしく、今日も……私の心を癒してくれる。



「と、いうかですね。

 貴方は自分がしたことに気付いてください」



 そう言いながら、彼女は私を枕がわりにして仰向けに眠る。



「そうですね……じゃあ貴方の心が休まるまで、思い出話でもしましょうか」



 そう言って彼女……アラカくんは、ポツリポツリ、と思い出を語ってくれた。

読んでくださり、ありがとうございます…!


作者は常に承認欲求に飢えておりますので、感想をくださるととても喜びます!


途中まで読んで〝この話が面白いなあ〟などと思いましたら、どうぞご気軽に。





追記:二日に一回くらいのペースで現れる〝1時間で全部(約150話)を読む読者様〟にはモチベを支えられています…ありがとうございます…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりハッピーエンドだと安心ができる 最高!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ