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神様降臨

摩耶が時間跳躍に入って数時間が経過した。元々なら、もうとっくに元の時代に戻っているはずだったが、まだ生まれて間もない状態で、コアの精神も幼さが残っていた。


1105名の大人たちからちやほやされ、非常に居心地が良く、この時間が心地よかった。


ニコニコしながら到着を遅らせていた摩耶だが、クルーの1人が涙を流しながら「すまない、関係のない君を戦いに巻き込んでしまう事になって」と頭を下げた。


「貴女だけでも守ってあげたいのだが、それが叶うような戦いではなく、不甲斐ない私たちを許してほしい」と、クルー1105名が一斉に頭を下げる。


摩耶が見たのは、偉大なる大日本帝国海軍の漢たちの姿だった。


摩耶は震え、男らしさ、潔さ、カッコよさに圧倒され、時空を超えた思念が波紋のように広がっていった。


「お疲れ様でした。当艦はあと10分で、1944年(昭和19年)10月23日 午前4時57分、レイテ沖に着水します。これより、あなた達に掛けられていたリミッターを解除します。それにより、不安が幾分か打ち消されることを願っています。」


摩耶は真面目モードで機械的な説明を行ったが、心の中では感情が爆発しそうで、怖かった。


リミッターが解除されると、膨大なデータがクルーたちの頭に洪水のように流れ込んできた。


1年間の改造手術が終了した彼らは、脳内が焼き切れることなく、その知識を吸収していった。


ナノマシーンのおかげで、彼らは老いることなく、病気や損傷も即座に回復し、宇宙の英知を吸収した1105名のスーパーソルジャーが誕生した。


アンカーの誘導波に吸い込まれるように時空を航行する摩耶、カウントダウンが始まり、残り5秒でアンカーが次元の亀裂に吸い込まれた。


「うっ!あぁぁーー!」コアの焦った悲鳴のような声が響き、その後、摩耶と時空空母はアンカーを追うように、亀裂に吸い込まれていった。


その後、白い何もない世界に1105名のクルーが立っていた。


「俺たち死んでしまったのか?」「体内のナノマシーンの痕跡がない。死んだのかもしれない」「これ、マヤちゃんのいたずら?」と様々な声が飛び交う中、一人が囁いた。「これ、異世界転生か転移じゃない?」その囁きはすぐに1105名全員に広がった。


12000年後の未来でも大人気の小説は異世界物だった。


そのような俗物的な内容も脳に詰め込まれている摩耶クルーだった。


騒然とする中、光芒が天空から降り注ぎ、眩しい光と共に、三柱の神々が現れた。


その後方には何千もの天使たちが控え、頭を下げている。


神降臨であった。


摩耶クルーたちは何の疑いもなく膝を折り、頭を下げた。放たれるオーラに意識が飛びそうになりながらも、一柱の神が脳内に話しかけてきた。


「良き面構えだ。お主たちにはやってもらいたいことがある。あの子を立派に育て上げ、私たちの側に辿り着かせよ。既にその片鱗は、次元航行中にあの子が発した思念派で確認している。お前たちの宇宙ではあの子を手にするには、まだまだ早すぎる。ここで銀河を1つ用意しておいた。剣と魔法、レベルアップのある世界だ。お前たちも一緒に成長していけ。これは神が与える使命だ、疎かにしてはならぬ!」


さらに二柱の神が脳内に語りかけてきた。


「お主らの宇宙が引き起こした次元の亀裂は修復しておいた。本来なら銀河そのものを消去する厳罰が下るところだが、あの子を産み出すという大功労を成し遂げたため、助けることにした。お前たちが住んでいた日本という土地も平和に暮らせるように、お前たちの宇宙の神に頼んでおいた。神に祝福された土地だ、大いなる発展を遂げるだろう。安心して我らの使命に従うが良い。」


三柱の神が続けて言った。


「我らが作りし銀河は200億の星々からなる小さな銀河だ。あの子のために作りし試練の場で、好きに使ってくれて構わない。ほかの銀河からの訪問者が来ぬように隠ぺいしておいた。隔離された銀河だ、見つかる心配はない。文明レベルも未開のものだ。神の御使いとして行動すれば、上手くいくだろう。天使2名をつけておくので、連絡係と案内に使うと良い。」


「文明開化に失敗したり、腐った人種ばかりの星になった時は消し去っておいてくれ、こちらも暇ではないからな。200個ほどの同じ文明レベルの星を用意しておいたので、彼女を伸び伸びと育てるといい。天使に報告してくれれば、消し去った星の補充はしておく。最後に、お主らのスキルについてだが、御使いにふさわしい力、神の奇跡ぐらいは使えるようにしてやるよ。お主らには必要ないかもしれんがな、では、また会おうぞ。」


神の天啓が終わると、気がついた時には摩耶は海上に浮いていた。



眩いばかりの二人の女性と共に、摩耶クルーは高次元の二人の女性に跪く。


その二人は、第一階級の熾天使セラ様と、第三階級の座天使ソロネ様であった。


「そう畏まらなくてもよい。私たちもこれからはお主らと共にマヤ姫様を守る仲間ではないか」とセラ様が優しく言った。


「悠久の時を生きていくのです。そんなに硬くなっていては、心が持ちませんよ」とソロネ様が続けた。


艦長は恐る恐る尋ねた。「マヤ姫様を超越的な存在、神格の地位に上り詰めるお手伝いをするのは理解できますが、私たち弱小人種に何かできるとは思えません。我らが超越者から見れば、私たちは塵芥に過ぎません。」


セラ様は少し考え、「あぁ、すまぬ、言い忘れていたが、お主ら、もう人間ではない。もうすでにこちら側の存在、いわば上位生命体として格上げされているのだ」と語った。


「そもそもお主ら、名乗りもしていないのに、我らのことを理解していたではないか。今のお前たちなら、私たちの前に立つことができるのは、普通の下位生命体ではないだろう。発狂するか、死んでしまうかだ。」と続けたセラ様。


天使たちはその時、マヤ姫の時間凍結を解く必要があると考えていた。


その瞬間、艦内に眩い金色の粒子が拡散し、マヤが自力で神の時間凍結を破り戻ってきた。


「艦長!無事か?皆は…皆は無事なのか?」マヤは心配そうに問いかけ、神の拘束を解除して戻ってきたのである。


艦内に感じられる高エネルギー体に気づいたマヤは激怒する。


「お前たちか!私の大切な家族を危険にさらしたのは!」マヤの神に等しい圧力に、セラとソロネの二人も後ずさりしてしまう。


艦長は素早くマヤに駆け寄り、「大丈夫だ、お父さん達は皆は無事だ。安心してくれ」と言いながら頭を撫で、摩耶クルーの全員が無事であることを訴え、マヤを落ち着かせた。


マヤはギロリと二人の天使を睨み、「よそ者は出て行け!」と言い放つ。その瞬間、天使たちは圧縮できなくなり、広がっていく。焦る天使たち。


艦長が穏やかに「マヤちゃん、落ち着いて、二人の話を聞いてあげて」と微笑むと、マヤはコクンと頷き、「お父さん…お父さん…」と何度も囁きながら、艦長に抱き着き、にっこりと笑った。


副官は心の中で、「艦長はお爺ちゃんだろう。自分がなろうとしていた父の座を取られて、釈然としない」と感じていた。


マヤは二人の天使から情報を得て、このちっぽけな銀河の状況を把握し、二人の乗艦を認めて、ここでの冒険を始めることを決意する。


その時、艦内に鐘の音が鳴り響く。「前方にアンノウン発見!緊急回避!緊急回避!面舵一杯!」艦内がきしみ、船が大きく傾き、進路を急激に変えた。





挿絵(By みてみん)


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