神聖国家マヤ
摩耶クルー達は三ヶ月もの月日をかけ復興作業に携わり、50万人分の生活必需品&食料が供出された。
津波被害者と戦争難民には衣食住の確保は言うまでもなく、心のケアも重点に行われていった。
復興作業に携わった人々の中には、災害派遣に訪れていた各国の料理人達も含まれており 潤沢な品々に驚愕する。
炊き出し担当が摩耶クルーの時は各国の料理人が見学に訪れ、鼻腔をくすぐる嗅ぐわしい香りが難民キャンプに溢れだす。
高額な砂糖は雪の様に白く、塩には不純物は一切入ってなく、香辛料に至っては一流の料理人も扱った事も無いような品々が大量に含まれ、何処で集めたのか新鮮な野菜や魚介類、精肉までもが大量に山積みされていた。
これは炊き出しに使う品々ではないと、釈然としない人達も多くいた。
毎日送られてくる時空空母摩耶からの大量の救援物資の中には、多色で彩られた多彩な衣類、タオルや毛布、石鹸から化粧品まで、貴族でさえ使ったことのないような品々が配給される。
ペットフードまで配給品に含まれているのを見た復興作業に携わっていた人々は思わず「あほか~」と叫んだと言う。
最初はテントで代用されていた住まいも、簡素ではあるが冷暖房装備のプレハブに順次変更され、ある程度快適に過ごせる環境に改善されていった。
冷暖房装備とかなんなの~と?復興作業に携わっていた人々は思わず「あほか~」と叫んだと言う。
衛生面が最も重点的に行われたため、各プレハブのトイレは全て水洗、ユニットバスではあるがお風呂も装備され、水は大量に作り出せるので、毎日1回は体を清めるようにと指示がなされていた。
お風呂とか貴族様かよ~~~~~~復興作業に携わっていた人々は思わず「あほか~」と叫んだと言う。
難民キャンプ内は別世界になっていた。
「艦長なかなか気持ちのいいものですな~人の喜ぶ姿は何時見ても気持ちがいい」
『副官君見たかね、あの人々の驚きよ、これぞ異世界テンプレの王道!じつに気持ちいいではないか』
摩耶クルー達は何も見てはいなかった。
摩耶クルー達は何も見えてはいなかった。
自分たちの担当キャンプ内の事までも、毎日増え続ける難民たちが何処から来たのかさえも、摩耶クルー達は自分たちが受け持つ担当地域以外にも支援物資を大量に送り届けていたために、何処も同じレベルの救援活動が行われていると思っていたからである。
ところが支給物資があまりにも高額で取引できるような商品ばかりだったため、難民には支給されずに復興作業に訪れていた人々に持ち逃げされていた。
十分な支援を受けられていなかった難民たちの間から、うわさが飛び交い徐々に摩耶クルー達担当のキャンプに人々が集中しだしたのである。
中には難民ですらない人々が混じっており支給品を売り払いお金を稼ぐ不届き者まで現れる始末であった。
そんな人々は津波の被害から免れた人々で、ワルダー帝国の人々の様に神の裁きの恐ろしさを身に染みて受けた者達ではなかった。
摩耶クルー達が町を歩くと、これまでの住民の服装ではなく自分たちが供給した支給品を着ており、店先には大量の救援物資が販売されていた。
商品の噂はすぐに諸外国にも流れ、水上都市アクエスには交易船があふれ、海上国際物流ハブの賑わいを戻しつつあった。
どこの国も貴重な品々を何としても手に入れたく各国の裏組織までもが入り込んでいた。
水上都市アクエスに訪問している人種も多岐多様であった。
この星には(エルフ族・ドワーフ族・竜人族・魔族・獣人族・鳥人族・オーク族・オーガ族・コボルト族・三つ目族・爬虫族・魚人族・人間族)が住んでおり、それどれ固有の能力に特化している。
ワルダー帝国の住人はオーガ族で構成され見た目はどの種族もあまり変わらないのだが、怒りを覚えると我を忘れ狂戦士状態になるのが特徴であった。
そんな彼らも強者には従順になり、間違った指導者が現れると国民みんなが疑いもなく間違った方向に進むので各国は手を焼いていた。
奴隷となっていた住民もワルダー帝国の近隣諸国が多く強者には逆らわない傾向にあり、自ら奴隷制度に立ち向かう者は誰も居なかったと言う。
皇帝が倒されワルダー帝国が滅び指導者が変わったのだが、実体の無い神の代わりに御使として行動している摩耶クルー達も何時かは居なくなり、他国の食い物にされるか、新たなる強者が現れ同じ事が繰り返されるのだなーと思う摩耶クルー達であった。
知りたくもない現状を知った摩耶クルー達は、近隣諸国会議を開く様に王女殿下に進言する。
王女殿下には救援物資の横流しをくい止める為、各国に協力と、元ワルダー帝国の復興と臨時政府の立ち上げに協力して貰う事を議題として取り上げてもらうようにお願いする。
摩耶クルー達は表に出る事は無いため王女殿下に全て丸投げである。
会議が開かれ各国の強欲な要請だけでなく、水上都市アクエスからも利権を勝ち取ろうと好き勝手を言い出す大臣達に会議が成功するはずもなく、摩耶クルー達から受け取った1トンに及ぶ金塊の山迄もが各国が放ったスパイに情報が漏れており収集がつかなくなり解散となった。
1回発言の場を得た各国は抑える事無く強欲な要請が留まることが無かった。
今日は会議の結果を御使様に報告の日である。
セラ様ソロネ様も聞きたいと言うことで、此方から出向くことになった。
死に衣装に着替え、側近に支えられ出迎えに来られた御使様と共に、搭乗艇に乗り込み遙上空の船へと向かう。
死を覚悟しての謝罪ではあるのだが、足の震えが止まらない。
騎士二人は既に詰め腹を行っており長くは持たないだろう。
「すまぬ我が不甲斐無いばかりにお主たちを道ずれにすることになり許せ」と頭を下げる王女殿下に、騎士の一人が「何処までもご一緒させて頂きます。」もう一人の騎士が「お先に旅立ち姫様のお着きをお待ちしておりまする」周りを見渡すと側近たちが深々と頭を下げる。
「我は誠に良い家臣に恵まれたものよの~」
セラ様ソロネ様の前で会議の報告を行う王女殿下
セラ様が「みにくいの~」
ソロネ様が「マヤ様の教育によくないですね」
セラ様が「艦長この星はもういいです。次の星に行きましょう後の処置はお願いします。」
ソロネ様が「この星の崩壊でマヤ様の神格がまた上がるかもですね」
二人の天使様が結論を出された時に、王女殿下がそっと手で合図を行い15名の側近は口に含んでいた毒薬をかみ砕き流し込むのであった。
戦士2名は既に息絶えており、跪いている姿を崩すことは無かった。
「我らこの命代償にどうかご慈悲を」王女殿下も毒薬を口に含み息を引き取る。
ソロネ様とセラ様が「これは私たちは今何を見ているのですか?艦長・・・」
『人類の一番尊きものでございます。我が国では大和魂と言い人の格を成すものでございます。』
「今マヤ様の神格が上がりました。このもの達に褒美を与えます。」艦内が金色に輝き18名の命が吹き返す。
「艦長もう少しこの星の様子を見てみましょう」
『ありがたき幸せ』
王女殿下と側近たちが地上に戻り神の名のもとに大粛清を行う。
水上都市アクエスは名前を変え神聖国家マヤに変えられる。
マリア王女はマリア教皇に17名の側近は枢機卿と名乗りこの星を変えていくのであった。
『副官君、何なのかな~?この顚末、こんなの望んでいなかったよね』
「艦長知っていますよ。マヨネーズ作りたかっただけですよね、まだ冒険者ギルド残っていますけれど行ってみます?」
『この国早く出ようか、この国息苦しいよ他の国で冒険者登録してチートテンプレしようぜ!』
「艦長私たち強いのですか?魔法も使えませんけれど、レベルアップしましたと鳴り響いていましたけれど0.01%だったかもしれませんよ?冒険者ギルドに行ってぼこぼこに殴られる未来しか見えないのですが」
『わかった。1回マリア様に話聞いてみるよ少し待っていて、副官君はその間にこの国から撤収の指示出しておいてね』・・・・・・
「はい魔法を使うには教会に行き魔格を活性化しないといけません。昔は誰でも行うことが出来たみたいなのですが、今は教会しかできなくなりました。」
『じゃ~早速行ってみます。ありがとう!!』
「お待ち下さい神聖国家マヤにはそんな異教徒は何処にもおりません!周辺国家も異教徒狩りが進んでいます。あと少しで処理が終わるでしょう、我らの信仰は全てマヤ様の為エイメン」
エ・イ・メ・ン・・艦長は背筋が凍り着く『マリア様経典の一説をお読み願いますか?』
「我らは神の代理人 神罰の地上代行者 我ら・・・・・・・」あああああああ~艦長は頭を抑え込んだ。
『そそそのバイブルは何処で』
「マヤ様から頂きましたお父さん好きだからマリアちゃんにもあげると、10巻からなる聖典です。」
艦長が手に取らせてもらうと立派な製本がされており、文字もこの国の言葉に訳されていた。
艦長はふるえる足を抑え込みながら副官のもとに急ぐのであった。
『副官君~~すぐに出発だ、もたもたしていると、この星で魔法が使えなくなる』
「艦長またなにかやらかしたんですね?」
べ・つ・にと目をそらす艦長であった。
そのころ宇宙では、副官の摩耶1隻では心許ないの一言でナノマシーンが頑張り姉妹艦を始め連合艦隊が造船されていった。
『副官君私たちのテンプレが一回も成功しないのは何が問題なんだろね?』