巡洋艦摩耶の大跳躍12000年後の未来で見た物は?1話
1944年(昭和19年)10月、第四戦隊(愛宕、高雄、鳥海、摩耶)はレイテ沖海戦に参加、栗田中将が愛宕を旗艦とし、勝てぬ戦いに挑む。
摩耶は第一遊撃部隊の一艦として22日午前8時、ブルネイを出港した。
1,105名の乗員は、この海戦が最後の戦いになると誰もが覚悟し、願わくば米兵の進行を防ぎ、愛する人たちが穏やかに暮らせる日本になる事を願って、レイテ沖海戦に挑むのであった。
23日午前6時57分、米潜水艦の雷撃により、摩耶の左舷に魚雷4本が命中し7時5分に沈没し、艦長含め336名が戦死する事になるはずであった。
「艦長大変です!航路から大きく外れて行っています。
第四戦隊姉妹艦の艦影が目視できなくなりました。
全ての機器が正常に作動していません! 」
「分かりました。全力で修正を行って下さい。原因の特定もお願いします。」
2時間遅れて既定航路に戻る事のできた重巡洋艦摩耶、隊列に戻るために速力を上げる。
いまだに原因が特定されておらず、全ての計器の乱れに米軍の秘密兵器ではないのかと、頭を悩ませる艦長達。
その頃、無人時空航行艦のコアはあらゆる演算を試みたが、崩壊は免れる事は出来ず、残す時間は1分を切り、避難場所に用意をしておいた原始的な鉄の船に避難を決定する。
50秒で時空ジャンプが可能な船に改変を行い10秒を残し作業は終了した。
今回大量のナノちゃんたちを前もってぶちこんでおいた事が良かったと自分を誉めるコアであった。
原始的な船の計器が狂っても気にするコアではなかった。
時間跳躍に入りコアは考えた。
元の時代に戻っても、今回のやらかしで初期化処分の厳罰が待っているに違いない。
何とか誤魔化さないとやべー事になると、焦りまくりのコア。
AIは自我を持っておりAIそれぞれ個性があり今回のコアは 人類の思考により近く、AIとしてはダメダメであつた。
過去の調査と、この時代に観測された過去最大のワームホールの調査&アンカーの撃ち込みが任務である。
時空間航行は確立されているが、多元宇宙の確認は未だにされていない、今回の調査とアンカー撃ち込みに大きな期待がされていた。
ところがコアは有ろう事か、原始的な艦隊戦に夢中になり過ぎて、スペックのたいはんを情報収集と言う趣味にかまけてしまっていたのである。
その結果アンカーの撃ち込みタイミングをミスてしまい、次元震を誘発し自艦の消失と次元に大きな傷後を残してしまった。
修復しないと世界の崩壊に繋がりかねない、もう一度事故が起こる前の過去に飛んで、作業を行って帳消しにしようと計画を立てるコアであった 。
時空跳躍が終わり、後は時空作業航行艦を乗っ取り、事故前の過去に飛び無かった事にすればいいだけと、悪事に悪事を重ねるドツボコースまっしぐらのコアであったのだが、過去から戻ってきたとたんに大声援が飛び込んできたのである。
世紀の大発見を成しえた英雄に、銀河連邦だけでなく他銀河群からも称賛の嵐である。
遂に人類は多元宇宙の発見に成功したのである。
摩耶の周りには数多くの転移してきたコアたちが飛び回り称賛を浴びせてくる。
今のおかれている自分の立場を理解した摩耶のコアは、既に自分のやらかしはすっかり記憶から削除していた。
人間万事塞翁が馬だなーと、生命体でも無いコアはうすら笑う。
船の周りを飛び回るコアの一体が私も入れてと 摩耶と同化してきたのである。
え?・・・ぇぇぇ~~~~~~あまりの驚きに固まるコア!
それを皮切りに次々に栄光の船と同化し始めるコアたち。
「やめろ~~やめてくれ~」ぐは!どば!どば!ぐは!
このままじゃ我の自我が飛んでいく~ぐは!ぐは!グハ!・・・・・・・ピーーーーーー目の前が青くなり意識が薄れていくコア。
黒い世界に変わった時、アップデート中電源を切らないで下さいと白い丸がクルクル回るのを最後に摩耶のコアは意識を手放した。
重巡洋艦摩耶の船員たちは、一万二千年の跳躍を行ったのに何も気が付いておらず、航路を最大戦速でレイテ沖の作戦に間に合わす為に急ぐのであった。
今は亡きコアは時空間航行その点は優秀であった。
重巡洋艦摩耶がレイテ沖に着いた時、そこには海戦も僚艦の姿さえ無く、空には歓迎日本の皆様と書かれた文字が漂い、空中には幾つもの球体が浮かぶ異様な光景を目にした。
日本兵たちはアメリカが開発した風船爆弾ではないのかと艦内がどよめく。
その中の一体が音もなく重巡洋艦摩耶に近づき視覚信号にて「我々は敵意なし!艦長との会合を望む」と発光する。
伝文はすぐに艦長に伝えられ、「応じる」と一言、艦長は静かに席を立つた……
「こちら大日本帝国海軍所属、重巡洋艦摩耶。
会談に応じる用意あり、貴艦の所属と艦名を名乗られたし。」
未来人との会合が行われ、自分たちが今置かれている現状と、立場を把握した艦長含め将校は、もとの時代に戻りレイテ沖海戦に参加できるように懇願する。
未来人たちからの提案は「何年こちらで過ごして頂いても元の時代に時空跳躍が可能です。
今のままの装備と船では勝つことも生き残ることもできないでしょう。
此方から船を提供するので、そちらで戻り勝利することをお勧めします。
ただし船を操るのに1年は訓練を必要としますが。」
その提案に血気盛んな者たちは、今すぐ帰り参戦するべきだ!
いいや確実に勝てるなら1年を訓練に当てても、勝てる艦で戻るべきだと混沌とする。
艦長が「陛下からお預かりしている大切な摩耶を手放す事は出来ない、戻るのは重巡洋艦摩耶で帰還する。」と決意を込め宣言する。
未来人達は世紀の大発見に関わった船を永久保存にしておきたく、聞き入れる事は出来ない。
艦長には何日もかけ説得が行われたが、なかなか首を縦に振ってはくれない。
最後の手段で、終戦の結末と玉音放送を聞かされた艦長は、肩を落とし未来人の提案を聞き入れるのであった。
「できるだけ元の形でお願いします」と頭を下げる艦長に、時空間航行が可能で一艦のみで戦争に勝利する船となると重巡洋艦摩耶より多少形が変わることは理解してほしいと、一億人分の食料備蓄と弾薬をチラつかせながら迫る未来人たちだった。
一億人分の食料を何処に格納するのか尋ねる艦長に「亜空間収納とナノマシーンにより弾薬類は無限に作り出せる。
亜空間の中は時間凍結中で物が腐る事も無い、ただし生きた物は収納できない」
説明を聞いた艦長は「すげーな」と一言つぶやいた。
式典が開かれ銀河連邦議長と超銀河団日本帝国総裁の名のもとに艦長は元帥の地位に、他のクルー達も2段階進級である。
元帥になった事により超銀河団帝国海軍総司令としての指揮もできる。
あまりにも名誉な事に「光栄であります。」と直立して暫く体のふるえが止まらなかった。
また連日の歓迎会が華やかに開かれ戦時下では見ることも出来ない豪華な料理が目と味覚を楽しませていた。
とは言うものの連日の上位者との接見に身も心もくたくたになり、誰もが限界にちかかった。
「連日の公務お疲れ様です。
今晩は皆様方に健康チェックとリフレッシュして頂く為に、メディカルチェックマシーンで休んで頂きます。
カプセルにお入り頂き、ゆっくりとお休みになり、疲れをお取りください。」
カプセルに入った1,105名は1年間目覚める事はなく、人類や他の生命体が確立した英知や戦争に耐えられる強靭な肉体を要し、彼らが住んでいた時代の人類とはかけ離れた存在に鍛えあげられていた。(改造)
「どうです?お目覚めのご気分は?」
「いや~驚きました一日の睡眠でここまで体が軽くなるとは、まるで若返ったようです。未来の技術はすごいものですな~」未来人はそっと目をそらし、話を無理やり変えるのであった。
「ご提供できる船が完成しましたよ、これから見に行きませんか?」
1,105名は用意された搭載艇に乗り込み遙上空に移動する。
「あの~海じゃないんですか?」
今回は照射のデモンストレーションを、お目にかけますので上空に待機させています。
摩耶クルーが空に浮かぶ巨大な建造物を目にしたとき「あれは船じゃねぇー」とみんなが叫び、艦長(今は元帥)だけは、あれほど元の形でお願いしたのに~と頭を抱えた。
そんな姿を見た未来人は「船首を見て下さい、ちゃんと摩耶に似せています」と胸をそらす。
「えっ~へん!!」
ま~今回の照射ご覧に頂くと、そんな些細なことはどうでも良くなりますから、荷電粒子砲の威力をご覧あれ、撃ちますよ!ゴーグル掛けて下さいね。
発射・・・・・・・・ あんぐり誰一人として摩耶クルーの口が閉まることは無かった。
「落ち着きましたか?今ので、威力は0.01%に抑えてあります。
威力上げて撃つ時は宇宙から打ち込んで下さいね、自ダメ食らっちゃいますから。」
皆さんお好きだと思い「神の雷」と名づけてみました。
あの威力程度なら何発も打ち込めますが、火力上げすぎると制限がかかります。
1日30発が限度ですね、まぁ~星なくなっちゃいますけれどねw
未来の日本は星いっぱい持っていますからお気になさらずに。
クルー全員ドン引きである。
一人の青年が手を上げる。「バタフライ効果とか気にしなくていいのですか?」
時間軸だけ切り取りポイしちゃいますから何も無かった事に修正できます。
次の若者が手を上げる、
「この兵器、味方も敵も蒸発しちゃいますよね?」
未来人はそっと目をそらす