竜の身肉料理騒動記【二】
一昨日昨日と仕事を休んだのに、何故か今日も休みを取らされた。
しかも、休む様に言ってきたのは、俺の部下の筈のシュラ君だ。
シュラの主張では、俺が全く休んで無いって事だが、ちゃんと一昨日と昨日 休んだのに、どうしてこうなる?
しかも、一昨日はシュラも同行してたのに!!
うん。俺が街を造る予定の場所の視察って、有意義な休日の利用の仕方だったのに、何故に怒られて休みを取らされてるのか、謎で仕方無い。
本当に、異世界は謎だらけだ。
さっきも携帯電話の店に村の人達が持って来てくれる料理を、昼食にする為に取りに馬技で移動してたら、気が付くと大量の料理が、俺に対して供えられていた。
何十人分もの料理が・・・・・・
どうしてこうなる?
まあ・・・・・・
携帯電話の店に持って来てくれてる料理も、俺に対して供えられていた物だけどさ・・・・・・
極めて異世界は謎に満ちてる。
んで、多過ぎる分を携帯電話の店に置いてきて、今は自宅に帰った所だ。
「なあシム?昼食を終えたら、また動画を作りたいんだけど・・・・・・」
[はい。解ってます]
「うん。よろしくね」
流石 俺の分身だ。何も言わなくても解ってくれている。
今回は、肉の塊と芋など野菜を煮た物が昼食だ。
軽く一口味見する。
うん。薄い・・・・・・と言うより、塩をほとんど使ってない。
極めて健康的な食事・・・・・・いや、塩分だって健康に必要なミネラルだから、ここまで薄味が健康的なのか、悩んでしまう程の薄味だ。
どの位 塩分を感じるかと言うと、ポ○リみたいなアイソトニック飲料で感じる程度だ。
うん。本当にほとんど感じない。
しかも、出汁を使って無いから、尚更 味が薄く感じる。
なので、そっとポケットから小さな包を取り出す。
パラパラ・・・・・・
軽く掛けてから、煮物を軽く混ぜる。
それから一口味見する。
うん。かなりマシになった。
パラパラ・・・・・・
もう少し振り掛ける。
そして、また一口味見する。
「うん。こんなもんかな?」
足りないなら足せば良い。
塩味が足りないなら塩味を足せば良い。
軽く塩を振り掛けて、塩味を調節した。
それだけで、劇的に食べやすくなった。
この世界じゃ塩が極めて貴重品だから、気軽に使えないのは解るけど、それでも味が薄過ぎるのは辛い。
それでも、前よりはマシだ。塩を物々交換で提供する様にしたから、前よりは使われている。
前は、全く塩を使ってない料理が圧倒的に多かった。
「はぁ・・・・・・ 美味かった」
もちろん、塩を加えて味を調えたからだけどね。
卓上塩でも作ろうかなぁ・・・・・・
「さて、じゃあ様子を見に行こうかな・・・・・・」
昼食を終えて、馬技に乗って、最初は池の近くまで移動する。
「ほとんど運び終わってるけど、小さいサイズのが少し残ってるか・・・・・・」
元の世界の基準で言えば大きいが、二十メートル級の超特大サイズの蛟と較べたら、かなり小型の二メートル前後の物が、十匹程度 運び切れずに残っていた。
「ん?あれ?特に小さいサイズの近くにいるのは・・・・・・」
そう、一メートル程度のサイズの蛟の近くで動いている、丸っこい生き物がいる。
それは、昨日一昨日と食べたカニだ。
一昨日捕まえて食べたカニが、何匹も蛟に群がっている。
そろりそろりと、そのカニが群がっている蛟に近寄って見てみる。
「あれ?もしかして・・・・・・」
カニは一昨日捕まえた種類だけでは無く、何種類も混ざって、蛟に群がっていた。
そんなカニが群がっている蛟は、かなり食べられてしまっていて、ボロボロの状態だった。
何種類ものカニは、そのハサミで蛟の皮を切り裂き、ハサミで身を穿り取って、器用に口に運んでいた。
食べたカニより、かなり大型のハサミを持つカニやより大きなカニもいる。
もちろん、小型のカニもいて、全てのカニで言える事は、元の世界のカニと較べて、甲羅がゴツく、明らかに頑丈そうな見た目をしている。
特に大きなカニは、その甲羅を砕いて食べれる様な生物は、そうそういないだろうと解る。
「なるほどね・・・・・・」
蛟対策 ちょっと考えなきゃならないかもなぁ・・・・・・
確定じゃないけどさ。
そんな池の状態を確認した後、馬技で貯蔵庫の所まで移動する。
「よっ!」
「あっ!アユム様!あ、いえ、アユムさん!ダメですよ!今日はお休みなんでしょう?」
貯蔵庫の所に居た作業員に言われてしまった。
「大丈夫だよ。仕事に来たんじゃなくて、蛟の身が欲しいなって思ってさ」
「あ、はい。お持ちしますよ。一塊で良いですか?」
「いや、生を凍らせたのと燻製の塊を、それぞれ三つずつお願い」
「わかりました」
戻ってきた作業員から蛟の身肉の塊を受け取り、そのまま領主様の屋敷まで移動する。
「こんにちは。今日も蛟の身を使った料理を作ろうと思って来ました」
「あ、いらっしゃいませ。アユム様。どうぞどうぞ」
「あ、はい。じゃあ調理場に行きますね」
「はい。どうぞご自由に」
うん。もうお互いになれたものだ。
いつもの如く、すんなりと領主様の所の調理場に移動する。
「こんにちは。また蛟の身肉を使った料理を作ろうと思うんだけど、作り方を見てて覚えてくれる?」
「あ、こんにちは アユム様 はい。わかりました。こちらこそ宜しくお願いします」
蛟の身肉を使った料理を作り始める前に、準備をする。
先ずは、スマートフォンを一台 調理の様子が分かる位置に固定する。次に、領主様の所のスマートフォンを持っている使用人を、二人呼んで貰って、その本人のスマートフォンで、調理の様子を撮って貰う様に頼む。
一人は、まな板の置いてある位置を中心に撮して貰う。もう一人は、焼いたり煮炊きをする竈門などの所を中心に撮して貰う。
「さて、調理開始!」
チャラチャチャチャチャッ♪
チャラチャチャチャチャッ♪
チャラッチャチャチャチャチャッチャッチャ♪
古くから日本のお昼の時間頃に放送されている、料理番組のテーマソングを脳内再生しながら、調理を開始した。
調理をしながら、領主様の所の調理担当の使用人に、料理の仕方を教える。
うん。これも、料理番組の雰囲気を出しながらの説明だ。
料理番組でやってる様に、蛟の身肉や野菜の切り方、火の通し方、味付けの基礎を伝える。
俺はプロじゃないけどね。でも、ほら、俺にはシム先生と言う、頼りになる方が付いてますので・・・・・・
シム先生に言われている事を、同じ様に説明しながら料理する。
そうして、冷凍された前回の蛟の身肉の残りも使い、次々と調理をしては、出来た物を冷ましていく。
そうして、粗熱の取れた料理は、領主様の所の冷凍庫に入れて保存する。
冷製の形で、夕食に食べる物は、冷蔵庫に入れる。
次々と、次々と何品も調理をして、夕方近くなったら調理終了。
もちろん、撮影も終了だ。
二人の領主様の所の使用人に撮って貰った動画は、俺のスマートフォンに送って貰う。
「それじゃ帰りますね。今回の調理の様子を撮った動画は、編集後に【Do 我】と言うアプリの所に公開しますから、必要な時は観て下さい」
「はい。わかりました。今回はありがとうございました」
と、言う事で、自宅に帰る。
帰ったら、当然 シムに動画を編集して貰う。
「じゃあ、シム さっき撮った動画の編集をお願い」
[はい。既に開始しています]
「おお、流石!シム先生は良い仕事しますね」
[もっと褒めて下さい]
「えっ?もっと?すっごいなぁ〜!流石 シム先生!」
[心が籠もってません]
「えっ?」
[えっ?]
「本当!シムは凄い!」
[やはり心が籠もってません。もう良いです]
「えっ?はい・・・・・・」
[動画は作成しておきますので 他の事をされてても良いですよ]
「そう?任せ切りで悪いね」
[いえ サポートが私の仕事ですから]
それじゃ、動画の作成は、シム先生に任せて、風呂にでも向かうかな。
そろそろ携帯電話の店も閉店作業をしているだろうから、寄ってピコを拾って車に乗せよう。
同じ世界を舞台にした「異世界『ながらタブ』事情 《異世界タブレット端末普及推進奮闘記》」も書いています。
読まなくても困りませんが、読むとより状況が解ります。




