異世界の水辺はどこもが異世界らしかった
異世界の海は凄まじかった。
本当に凄まじかった。
何がって、人が足を踏み入れて、生き残れる訳が無いって、そんな環境だった。
元の世界で、人食いワニとして定番のイリエワニより、ずっと体のデカい、絶対に十メートル超えの巨大ワニも含め、超巨大な肉食の水生生物が、砂浜を埋め尽くしていた。
ワニは、二十メートルまでは無いが、大多数は十メートルを、楽に超えている。
何しろ、ワニの頭だけで、普通車並みの大きさだ。
それが何十頭も、砂浜で寝そべっている。
しかも、元の世界の首長竜とそっくりな、海棲爬虫類や幅が一メートル超えの巨大なヒレを持つ、多分 サメの一種だろうって魚影も、偵察飛行させたドローンのカメラに映っていた。
海水を手に入れられたら、塩やにがりが手に入ると思っていた俺は、この世界の恐ろしさを、全く理解していなかったんだなって思う。
今は、この世界の海を確認が終わったので、帰り道を車で走っている。
「あのさ?こうなったら、山の中の水辺にいるって言う、他の竜も確認したいんだけど、帰り道の途中で、居そうな所ってない?」
毒を食らわば皿まで じゃ無いけど、海のヤバさが俺の予想を遥かに上回っていたのなら、ついでに山の中の水辺にも居ると言う、別の竜も確認しておきたい。
どんな魔物なのか、それさえも知らなきゃ対策を立てられないからね。
「有るけど行くんですか?」
メガが不満そうに答えてくれた。
「ああ、魔道具のドローンを使ってなら、安全に見る事が出来るだろうからね」
「なるほど!それなら賛成です!!」
シュラがほっとした様子で応えてくれた。
「それなら良いかな?」
「御主人様なら直接 見に行っても大丈夫だろうけど、魔道具を使うなら、絶対に大丈夫だな」
残りの二人も賛成してくれた。
「じゃあ、案内しますぜ」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
それは、鬱蒼と木々が茂る森の奥に在る、湖と言っても良い位の大きな池って感じの場所だった。
今 立っているのは、メガもよく来ている、少し池から離れた、地面が若干 泥濘んだ場所で、
メガは、この場所でカニや半陸生の貝などを採っているのだそうだ。
「このカニが絶品なんです」
とは、この場所に居たカニを指差してのメガの言だ。
淡水性のカニなのに、どのカニも甲羅の横幅だけで、20〜30センチ程の大きさが有る、巨大なカニだ。
その割には、ハサミはそんなに大きくは無い。
「この貝も美味いんですぜ」
サザエよりも、更に一回り大きなカタツムリ?半陸生の巻貝を手で掴み、それを持ち上げて、メガが見せてくれた。
「美味いのか?甲殻類と軟体動物かぁ・・・ 養殖がしやすい生き物だから、人工的に繁殖させて、安定した食料に出来ないかな?」
「よしょく?はんしょく?ですか?よく分からないですけど、美味いから安定した食料になると嬉しいすっね」
「まあ、先に安全な街を作らなきゃならないけどね」
「街を作るって、前から言ってますよね?出来るんすか?」
「その為の巨大な魔道具だよ。多分 アレが有れば出来るって願いたいね」
「まあ、アレが有れば楽ですけどね・・・ おっ?こいつも美味いんですよ!」
今度は鶏サイズの巨大なカエルを捕まえて、メガが見せてくれた。
「それも養殖出来ると良い食料になるかもね・・・・・・」
実際 食用ガエルってのが、元の世界でも存在するしね。
他の三人も、カニなどの獲物を捕まえている。
ドローンタイプの魔道具が、池の中に、何か巨大な影を見付けて、映像を送ってきた。
それは、蛇の様に細長く、本当に竜と納得出来る程の巨体が、水中を泳いでいる様だ。
それをしっかり映そうと、ドローンの高度を下げさせたその時だった。
『バシャンッ!!』
水飛沫を上げて、水中から何か巨大な生き物が、ドローンに食らい付こうとして、水面から数メートルも、伸び上がって来た。
それは、俺の知る竜とは、全く異なる姿をしていた。
特に、違ったのは、その口の形状だ。
その巨大な細長い生き物は、口が横に裂けておらず、縦に口を開いていた。
俺が知る中で、そいつの姿に近い物は・・・ 一番 適切な姿に対する表現は、【エイリアン】しか思い浮かばない。
池に出来ていた影の大きさからすると、この竜と呼ばれている生き物は、少なくとも十メートル以上の長さが有りそうだ。
ヌメヌメとした鱗の無い体表、目は有るのかよく分からない。
灰色と茶色を混ぜた様な体色に、縦に開く巨大な口には、縦に列んだ歯が見えている。
ヒレの様な物も、手足の様な物も、空中に出した部分には見当たらない。
目やヒレの無いウナギっぽい姿だ。口の形状が、悪魔と天使くらいの差で、全く違うけれど・・・・・・
しかも
一匹の竜に刺激されたのか、何匹もの同じ位のサイズの竜が、水面から数メートルも空に向かって体を伸ばして出してきた。
十匹以上にはなるだろう。
「こいつらです。こいつらが水辺に居ると、いきなり水中から襲ってくるんです。しかも群れで・・・・・・」
シュラが教えてくれた。
「何なんだ?こいつは?魚でも蛇の様な爬虫類でも無い。本当に気持ち悪い姿をしてるな・・・・・・」
「竜ですよ。ミズチとも言われてます」
「俺の知識では、竜より蛟の方が近いかな・・・・・・」
「そうですか?こいつら、兎に角 恐ろしいんです。もっと小さいのとか、色んな大きさのヤツがいて、小さいヤツも水場で手を水に入れていると、ガブリと食い付くんです。もちろん、群れで・・・・・・」
「小さいのだと、どの位の大きさなんだ?」
「小さいと、この位ですかね・・・・・・」
シュラは両手を広げて、その広げた両手の長さ位だと、教えてくれた。
「駆除するしか無いかな・・・・・・」
「水の中に居るのに、出来るんですかい?」
メガが渋い顔をして言ってきた。
「出来なきゃ人類は繁栄出来ないよ」
「そうでしょうけど・・・・・・」
四人共 暗い顔をしている。
「何か手を考えるよ。やらなきゃ飲水の確保さえ大変で、当然 田畑もまともに出来やしないからさ。それに、これから工事でも水が必要になるしさ」
「アユムさんなら・・・ 可能・・・ なの・・・ かも・・・・・・ って、期待してしまいますね」
「まあ、頑張るよ」
この世界には、海だけで無く、山の中の水辺にさえ、恐ろしい生き物が居るって解った。
全部は無理でも、ある程度 駆除をしなきゃ人類に未来は無いのかも・・・・・・
そう思うと、ため息が出た。
自分の認識が甘かった事を痛感しながら、巨大なカニや貝やカエルを車に積み込み、村への帰り路を進んだ。
同じ世界を舞台にした「異世界『ながらタブ』事情 《異世界タブレット端末普及推進奮闘記》」も書いています。
読まなくても困りませんが、読むとより状況が解ります。




