魔道具師の夜鍋または夜業的な事
自宅に帰り、ナノの帰りを待つ。
うん。きっとナノだけじゃなく、もう一人一緒に“来る”んだろうけどさ。
でも、今度こそ認めない。
俺は意思が固い男だ!うん。誰にも言われた事が無いけど、自称意思が固い男だ。さっきそう決めた。
だから、絶対に大丈夫。認めない!ここは俺の家だ!
「ただいま!」
「御主人様 ただいま」
「おかえりナノ」
「いらっしゃいテラ」
「御主人様 オレにも、私にも『おかえり』と言って欲しい」
「いや、テラには自宅が有るじゃん」
「そう、ここがオレの私の自宅」
「違う!絶対に違う!テラの自宅は弟二人が住んでる所!」
「でも、ここが自宅です」
「はぁ・・・・・・ 早く魔道具を作り始めたいから、今日は呼ばれる前にガロンの所に行っておこう」
「「「「うん」」」」
「こんばんは、今日は呼ばれる前に来ました」
「「「こんばんは」」」
「こんばんは、いらっしゃいませ。どうぞいつもの所へ」
もう何度も来ていて慣れたものだ。
いつも領主様達と食事をしている所に移動する。
「あ、こんばんは、ガロン 今日は早目に来たよ」
「おお、珍しいなアユム どうしたんだい?」
「いや、今日は早目に魔道具作りをしたくてさ。それで少し早目に食事を済ませようと思って・・・・・・」
って、領主様の表情が曇る。
「アユム もしかして、夜も仕事を遅くまでしているのかい?」
「まあ、時間が足りなくてね」
「そんな事をしてたら、アユムの身体が保たないだろう?」
「大丈夫だよ。無理してないから」
「アユム シュラ達からアユムが作業員に言った事を聞いてるよ。体を壊さない様に、一日の仕事の時間を決めてるんだよね?休みの時間も決めてるんだよね?」
「そう・・・・・・そうだね・・・・・・」
「その作業員にアユムが決めた仕事と休みの時間を比較して、ちゃんと休めてるのかい?」
「あ、いや、うーん・・・・・・ 休みが取れてないかな・・・・・・」
「だろう?アユムには健康でいて貰わないと困る。本当に、アユムは村を良くしてくれている。だから無理をしないで欲しい」
「あ、うん。解った。でも、今だけ、今だけは時間が足りないから、少しの間だけ頑張るよ。ちゃんと休める様になったら休むから」
「うん。早く休んでくれよ」
「解った」
「ガロン様 お食事を早目にお持ちしましょうか?」
使用人の人が来て確認してくれた。
いつもの様に運ばれて来る料理。
来たばかりの頃との違いは、料理の中心が、野菜から肉に変わった事だ。
その分 料理のボリュームも増した。
塩や砂糖などの調味料が高価なので、あまり使われていない事は変わらない。
もちろん、醤油や味噌も無い。
出汁を使う習慣も無いので、旨味も無い。
当然 香辛料も無い。
元の世界の料理に慣れた俺には、何度食べても味気無い料理だ。
でも、これでも精一杯の御馳走なのは解るので、有り難く頂く。
「アユムはそんなに頑張って何をしたいんだい?」
「俺は・・・・・・ スマートフォンを楽しめる世界にしたいだけだよ」
「それなら今でも楽しめるだろう?」
「そんな事は無いよ。今のスマートフォンは、未完成なんだ。特にインターネットと言う物が、全く出来ていない」
「なんだい?そのインターネットって?」
「人との繋がりだよ。スマートフォンを使う人が増えて、それぞれが繋がったら、それがネットワーク、つまりインターネットの基本になるって訳だよ」
「ネットワーク?」
「繋がりだね。人と人との繋がり。みんながスマートフォンを持てば、もっとスマートフォンは便利に進化するって事さ」
「そうなんだ?よく解らないけど、もっと使う人を増やしたいんだね?」
「そうだよ。でも、使う人が増えるだけじゃダメだ。生活に余裕が無ければ、その使う人達は、スマートフォンを楽しみの為に使えない。幸せな生活をする人が増える事、それが本当の意味でスマートフォンが普及するって事だよ」
「そうか・・・・・・ 幸せな生活ね・・・・・・ それはどんな生活かい?」
「着る物、食べる物、住む所、それらに困らない充実した状態が基本かな。それから娯楽も楽しめる。それが幸せな生活かな」
「ほう・・・・・・ それは凄い。そんな事に苦労するのが当たり前で、それらが満たされている生活を・・・・・・なんて考えもしなかったよ」
「そっか?でも、俺はそんな世界にしたい」
「協力するよ」
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
「ん?何故?お礼を返されたんだろう?ハハ」
「どうしてだろうね?ハハハ」
「その為には・・・・・・ 塩や砂糖などの調味料、それに醤油や味噌、旨味調味料も・・・・・・そして、石鹸やセメントなんかも欲しいなぁ・・・・・・」
「これだけ凄い事をしてきたのに、まだ足りない物があるんだね?」
「もちろん!足りない物だらけだよ。ハハハ」
「アユムが変えた後の世界が楽しみだ」
「うん。楽しみにしててよ。じゃあ、食べ終わったから帰るよ」
「ああ、いつもの様に朝 食べる物も準備してると思うよ」
「ありがとう。受け取ってから帰る。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
「じゃあ、みんな行こうか」
「「「「うん!」」」」
まあ、一人 困った人物が混じってるけど・・・・・・
「なあ?テラ?そろそろ自分の家に帰ろうよ?」
「そうだな」
「うん。弟達の所にね」
「いや、オレの私の家は御主人様の所だ」
「はぁ・・・・・・ さて、じゃあまた魔道具作りをするね」
「「「「うん!」」」」
領主様に釘を刺されたけど、まだゆっくり休むには時間が足りない。
また今夜もコッソリと作業部屋を抜け出し、村の出入口め車に乗り、貯蔵庫の周辺まで移動する。
待っていたセルの群れに仕事をさせる為に、統率個体に指示を出す。
今夜 一番最初に指示するのは、魔物を処理した後の周辺の洗浄だ。
洗浄とは言っても、水などで洗わせる訳では無い。
魔物の亡骸が有った場所、解体処理をした場所に残る、血や肉片などの有機物を取り込ませ分解させる。
それに群がってた害虫も捕食させる。
そう、流石にこれだけ殺してから日数が経つと、ハエなどの虫が多くなってきている。
もっと増えると疫病の原因にもなるだろう。
だから、少しでも環境が改善される様に、セルに後処理をさせる訳だ。
それが終わったら、岩山の三階部分の続きと、更に四階以上の階層を掘る下準備をさせる。
そう、掘るのでは無く、下準備だ。
あくまでも、セル達は岩山の岩に切れ目を入れるだけだ。
きれいな正四角形のブロックに侵食して切れ目を入れる。
後は、作業員がそのブロックを取り除く事で、穴を掘る訳だ。
見ると、もう二階までの外側の階段部分は、切り目が入れたれたブロックが取り除かれていた。
二階部分も通路の部分まで、殆どブロックが取り除かれている。
明日には、二階部分も完全に貯蔵庫となる穴が掘られているだろう。
「さて、じゃあ、一体だけ連れて行って作業させたいんだけど・・・・・・うーん・・・・・・一体だけで良い作業量だけど・・・・・・ でも、統率個体が居ないと指示が出せないから、統率個体を一緒に連れて行くと、今度はここの指示が出来ないよね・・・・・・」
「シム 統率個体をもう一体作るから、また融合させる部材を作って」
[了解しました。作成しました]
眩く手に持ってた素材が輝いた後、手にはセルと融合させるプレートが出来ていた。
そのプレートをまたセルに融合させる。
さて、そんなに大きな仕事をさせる訳じゃ無いから、統率個体だけでも良いんだけど、一応 統率個体と糸を吐く個体と液体の樹脂を吐く個体、合計三体を車に載せて村の出入口まで戻る。
そこからは、大きな袋にセルを入れて、携帯電話の店まで運ぶ。
携帯電話の店では、統率個体に指示を出し、冷凍庫にする予定の小さな石室に、糸状の樹脂を吐かせて、全体を覆わせる。
その後に、液体の樹脂を吐くセルに、石室全体を樹脂でコーティングさせると完成。
外の石室にも、外側だけ糸状樹脂を吐かせ、その後に液状の樹脂をコーティングさせる。
セルの作業が終わったら、店舗内の石室には、薄く広い板状にした冷凍機を前面と奥に貼り付ける。
外の石室には、底に加熱機を敷き、その上に小石を敷き詰める。
これで、冷凍庫と電子レンジっぽい物?オーブンぽい物?石焼器っぽい?が出来た。
冷凍庫は、元の世界の冷凍庫と基本的に同じだ。
庫内の熱を、魔力をエネルギーにして、魔法の作用でガンガン奪う。
加熱器は、基本は元の世界の電子レンジみたいな感じだ。
底に埋めた加熱機のプレートは、敷き詰めた小石の上を中心に、常に熱を集める。つまり、その熱を集められた辺りは、物の分子が振動を激しくする。
そこは元の世界の電子レンジに似ている。
違うのは、常に熱を集めているので、小石や石室の中が加熱されている状態と言う事。
集められた熱は、適当な場所から奪った熱では無い。
底に敷いた加熱機のプレートの裏には、管が通っている。
その管は、冷凍庫内の冷凍機に繋がっている。
その二本の管で、それぞれの熱と冷気を交換し合っているのは、貯蔵庫と公衆浴場の冷凍機と給湯器のシステムと同じだ。
これで、持ち込まれた料理の傷みを抑える事が出来る。
さて、セルを返して家に戻るか・・・・・・
でも、返さなくても大丈夫?
敷地内に隠せないかな?
なあ?シム?どう思う?
[セルは潜むのが得意なので隠せると思います]
だよな。床下でも良いんだし・・・・・・
「じゃあ、このまま帰るか・・・・・・」
自宅に帰り、床下に潜む様に、セルに指示を出す。
「さて、見付からない様に戻らなきゃな」
部屋に戻ると、また魔道具の制作をする。
先程 作った物と同じ物を、もう一つ作る。
それと、魔力モーターを使って、工事現場用に新しい魔道具も六台程作る。
これは、今回作っても、これからも活躍してくれる道具になる筈なので、絶対に無駄にはならない。
後は、いつもと同じ様に、スマートフォンと照明と貯蔵庫と公衆浴場の冷凍機と給湯器の作成だ。
今日で、ある程度の数が完成するだろうから、明日 また作業員に渡そう。
かなりスマートフォンの所有者が増えてきた。
それに合わせて、シムが自動的に元の世界のアプリに近い物を増やしている。
まだみんな文字が読めないから、ダウンロードとか促せないけどね。
魔物の肉の貯蔵が一段落したら、読み書き算数などの勉強会を開かなきゃな。
つまり、学校を作る。
早く俺の理想とするスマートフォンの環境が出来て欲しい。
みんなが笑顔でスマートフォンを楽しむ世界に・・・・・・
同じ世界を舞台にした「異世界『ながらタブ』事情 《異世界タブレット端末普及推進奮闘記》」も書いています。
読まなくても困りませんが、読むとより状況が解ります。




