崇拝しないで下さい
今日 大切な事をし忘れてた。
やる事が多過ぎて、車で貯蔵庫に肉を運ぶのを忘れてしまってた。
いや、やる事が本当に多過ぎなんだって!
携帯電話の店は、まだ俺が居なくても大丈夫と言える程にはなってないし、貯蔵庫を作ったり、貯蔵庫に取付ける冷凍機を作ったり、お風呂を作ったり・・・・・・
あ、お風呂は俺の生活環境向上の為だけど、でもさ・・・・・・
日本人には風呂は必須だろう!!
スマートフォン購入者は、全員 照明の取付工事も希望するし・・・・・・
取付工事に行ったら、仕事を請け負ってる立場なのに、何故か過剰な接待を受けてしまうし・・・・・・
これを数日でやってるって・・・・・・
うん。時間が無い。
ほろ酔い加減で工事現場に歩いて様子を見に行くと、しっかり肉が運び込まれていた。
まあ、そりゃそうだ。
作業員のスマートフォンの契約者数が七十人を超えている訳で、それ以上の人数で、ここで作業をしているんだから、人海戦術で運び終わるよな。
あれ?作業員のみんなが、いつもと違って、俺を拝んでいる。
あれ?何が有った!?
「あのさ?シュラ?ここに来るまでに、作業員が俺を拝むんだけど、俺 何かしたかな?」
「は?私も拝みたい位ですよ」
「えっ?なんで!?」
「アユム様が疑問に思う方が変です!!」
「どうしてよ!」
「私達が山賊行為をしている時に、数十人の私達を殺さずに捕まえましたよね?一人で?」
「うん。だね。」
「魔物の大群が攻めて来た時も、一人で討伐しましたよね?」
「まあ・・・・・・ほとんどね・・・・・・」
「そして、山賊行為をしていた私達に、仕事をくれて、その報酬に魔物の肉を分け与えてくれてますよね?」
「まあ、人手として頑張って貰ってるね」
「すまほ?ですか?この凄い魔法の道具も与えてくれてますよね?」
「いや、与えては無いよ。労働の報酬の一つとして提供しただけだよ」
「くるま?ですか?あの巨大な凄い魔法の道具も作られましたよね?」
「だって、歩くの大変なんだもん」
「どろぉん?ですか?あの飛ぶ凄い凄い魔法の道具も作られましたよね?」
「色々と必要で作ったよ。うん」
「らいと?ですか?あんな太陽の様に明るい魔法の道具も作られましたよね?」
「うん。今日は取付工事で大変だったよ」
「こんな公衆浴場なんて物も作られましたよね?」
「楽に入れるお風呂 欲しかったからね」
「貯蔵庫の工事も、何故か一日で大幅に進んでますよね?」
「あ、ああ、まあ・・・・・・ 夜にね・・・・・・ ちょっと・・・・・・ まっ 魔法の道具を使って・・・・・・」
「はぁ・・・・・・ これで、どうして拝まれる事を不思議に思うのか・・・・・・私には、その方が不思議です」
「拝まれるって神様扱いじゃん!」
「えっ?アユム様は生き神様ですよね?」
「えっ?」
「皆 そう言ってますし、私もそう思ってお仕えしています」
そう言いながら、シュラが拝んだ。
「えっ!?えぇーっ!?」
「多分 村人全員が、そう思っていると思いますよ」
「いや、俺は普通の凡人だよ!」
「はいはい。そんな話を聞いた事が有ります。この世に現れた生き神様は、普通の人間を装うと・・・・・・」
「えっ!?違う!違うって!!」
「はい。分かっておりますよ。ハハハ」
あの乱暴な雰囲気の有ったシュラが、凄く丁寧な言葉を使っている。
それも正直 気持ち悪い。
お前は神官か!!
とでもツッコミを入れたくなる位に、高貴なオーラを纏っている。
何が有った!?シュラ!!
「まあ、良いや。暗くなる前に片付けも・・・・・・」
「はい。片付けも含めて作業を終える様に・・・・・・ですよね?」
「そうそう。それで、終わったら皆でお風呂に入ると良いから」
「はい。ありがとうございます」
「かなり作業が進んだね?」
「はい。明日には貯蔵庫となる岩穴は完成すると思います」
「いや、まだだよ」
「えっ?」
俺は指を岩山の崖の五メートル程の高さの部分を指差し
「上にも作るからさ」
「はぁ?上?上ですか?上!?」
「うん。外に階段を作って上にもね」
「なるほど、流石はアユム様です。確かに魔物の肉の量に比べると、貯蔵庫として作る穴が足りませんでした」
「シュラ どうしたの?アユム様って、そんな畏まってさ?もっと気楽に接してよ?」
「いえ、私は感動しているのです。こうしてアユム様にお仕え出来る事に。他の者をまとめる様に指示を頂いて、感謝するばかりです」
「そ・・・・・・そうなんだ?でも、アユム様は止めてね」
「そう仰るなら仕方ありません」
「うん。よろしく!」
「はい。承知しました」
「じゃあ、俺は、冷凍機や照明を作って、完成した貯蔵庫に取付けられる様にするよ」
「はい。お願いします」
もう俺が普通の人間だと解って貰うのを諦めて、自分の作業に向う。
貯蔵庫予定地の工事現場の邪魔にならない所に置いてある魔石などの材料を使い、冷凍機と給湯器が一体になった物と、照明を作る。
眩しく輝くと、より拝まれそうなので、材料を取付ける穴の中に持ち込んでから作って、出来上がったら外の邪魔にならない所に置いた。
もうほぼ穴からセルの切り出した石のブロックが運び出されているので、六箇所全ての分を作ったから、かなり時間が掛かった。
とは言っても、材料さえ揃っていれば、後はシムに頼むと、一瞬で出来上がるので、そんなに時間は掛からないけどね。
隠れて作っても今更だとは思うけど、少しはマシだろうと思いたい。
元の世界のエアコンや冷凍機と較べると、かなり薄くコンパクトなので、運ぶのが楽だ。
主要な部分を魔法に置き換えて作ったから、こんなに小型化出来た。
魔法で送り出す空気の熱を奪うから、代替フロンを圧縮する様なモーターを使う仕組みも要らないし、庫内に冷気を送り出すファンも要らない。魔法で空気を動かしているからだ。
奪った熱は、冷凍機内の管の中の空気を高熱に温める、その高温になった空気は、管を通って給湯器側に送られる。
そして、給湯器側では、逆の事が行われている。
給湯器内部では、周囲の熱を奪い集めて対象物を高熱にする。
その熱を奪われるのは、給湯器内部を通る管の中の空気だ。
その熱を奪われた冷たい空気は、もう一本の管を通って冷凍機側に送られる。
「もう少しだな」
後は、今夜 セルに貯蔵庫内部を樹脂でコーティングして貰って、冷凍機や照明を付ければ完成だ。
「シュラ 俺の作業は終わったから、風呂に入るね。みんなも作業を終えたら入る様に伝えてね」
「はい。そう伝えます」
「日が傾くと、ちょっと薄暗いなぁ・・・・・・」
面倒だが照明を作って公衆浴場の天井に付ける。
公衆浴場は、貯蔵庫側が男湯、反対は女湯だ。
朝 入った時より湯が熱い感じがする。
仕方が無いので、水を入れて温度を調節する。
掛け湯をしてから、温度を調節した湯に浸かる。
「ふぁ〜♪ 良い湯だ♪」
やっぱりお風呂は良い。
温泉なら、より良いんだけど、それでも数日 お風呂に入れなかった時が有るから、こうしていつでもお風呂に入れるのは有り難い。
「アユム!」
「あ、ナノもお風呂に来た・・・・・・ おい!」
「ん?どうしたの?」
「こっちは男湯!女湯はもう一つの入口だよ!」
女湯から声が聴こえたのかと思ったら、まるで当たり前かの様に、ナノが素っ裸で男湯に現れた。
「良いじゃん!これだけ広いんだから!」
「いやいや、ダメダメ!ここは男が入る所!女はあっち!」
「どうしたの?アユム?」
「フェムト!ダメ!ダメだって!ここは男湯で、あっちが女湯!」
「どうしてダメなの?広いからみんなで入れるよ?」
「どうしてって、どうしてもだよ!ここは男専用だよ!」
「あ、アユムさん これがお風呂ですか?お風呂か、初めてだな」
「シュラ あっ!?今 ナノやフェムトが入ってるんだよ!」
「そうみたいですね」
「うわっ!?どうして他の女性作業員も男湯に入って来るの!?あっちが女湯だよ!」
「えっ?私達もアユム様と一緒にお風呂に入りたいなって・・・・・・」
ぞろぞろと、仕事を終えた作業員が、男女共に男湯に入って来る。
分かれて入れば、まだそんなに混雑しない筈なのに、女性まで入るから、一気に男湯は満杯だ。
俺の横には、ナノとフェムトが座って浸かり、その周囲を作業員の女性達が座って浸かっている。
しかも、ぎゅうぎゅう詰めで入っているので、かなり密着してしまってる。
色んな意味で、身体が熱くなったので、湯船から出て、身体をセルの樹脂糸を丸めて作った物で擦り、掛け湯をして出た。
本当にヤバい!!
本当は、夜になるまでお風呂に浸かったり出たりを繰り返し、公衆浴場や工事現場から誰も居なくなったら、セルに作業の指示をしようかと思ったけど、俺が居ると、みんななかなか帰りそうに無いので、一度 自宅に帰る事にする。
「お風呂にも入ったし、帰って少し休んだら、車の運転も大丈夫かな?」
空に浮かんだ白銀の月を眺めながら、帰路へとついた。
同じ世界を舞台にした「異世界『ながらタブ』事情 《異世界タブレット端末普及推進奮闘記》」も書いています。
読まなくても困りませんが、読むとより状況が解ります。




