表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界 『ながらスマホ』事情  作者: 一等神 司
第一章 辺境から始まる異世界での『ながらスマホ』
4/83

落穂拾い ならぬ 落石拾い

うん。勝手に知識が増えて行くのは楽だ。

さて、このままここに居るのが危険なのは、知識が増えなくても解る。

危険な生き物が存在するのは、詳しくはまだ情報が最適化されて無くても、木々が鬱蒼としている事で解る。

しかも、生存に必要な情報から、優先して同期と最適化されているので、ピリピリと危機感が自然と強まって行く。

いや、本当にヤバイらしい。


[マスター では移動をしますか?]


「あ、その「マスター」は止めてくれるかな?名前で呼んでよ。ヨロシク」


[では 須磨 歩様 移動しますか?]


「あゆむ で良いよ。うん。移動しようか」


[アユム様 に進言します。スマートフォン(ワタシ)の機能を十全(じゅうぜん)に使う為に、移動しながら【基地局】や【中継器】を設置していく事が望ましいです]


「あ、なるほどね・・・・・・ このままじゃ使えない機能も有るよね・・・・・・」

そう、最大の極大基地局だとしても、最低限の通信と簡素なマップの機能しか開放されていない。

より快適に安定した通信や詳細なマップを利用するなど、スマートフォンの機能を最大限 使う為には、【基地局】や【中継器】の増設が必要になる。


「いいよ。移動しながら【基地局】や【中継器】を増やしていこう」


[では、この周辺に散らばっている、黒い鉱石を集めて持って移動しましょう]


「そうか、この黒い石が【基地局】や【中継器】の材料なんだね」

巨大な塔である極大【基地局】の周辺の木々や下草が無い所には、大小の真っ黒い鉱石が、多数散乱しているのが見えている。足元にも数個 鉱石が有る。

取り敢えず、それら足元の石を拾ってみた。


[これを【中継器】に加工しますか?]


「ああ、頼むよ」

手のひらの中の石が光り輝く


[加工 終了しました]


手のひらには、数個の十円玉サイズで丸く、そして十円玉の倍以上の厚みの黒い物体が形成された。


いち に さん・・・・・・五個だな。


これが【中継器】か・・・・・・


「これを地面に置けば、その置いた部分と同化して、【中継器】として機能を始めるんだね」


[その通りで御座います]


使い方は説明を受けなくても【理解】出来る。

【中継器】はそれ自体は単体では機能しない。あくまでも【基地局】の足りない部分を補う為の物だ。

【基地局】が広い範囲の通信を薄くカバーするのに対して、この【中継器】は狭い範囲ではあるが、【基地局】の【魔力】を補強して通信を安定させてくれる。

そして、その範囲内のマップも、詳細な物に情報を上書きしてくれる。

つまり、【基地局】の能力の補強、それが【中継器】の機能である。


「じゃあ、この周辺の石を拾いながら、この【中継器】を設置していこうかね」


[はい。それが良いと思います]


【中継器】の範囲は最大直径100メートル程度で、理想的に安定している範囲は直径20メートル程度で、本当に有効な範囲が狭い。

シムにアドバイスを貰いながら、極大【基地局】の周囲に、【中継器】を数十メートル置きに設置しながら、その【中継器】や【基地局】の材料となる石を拾い集める。


「なあシム?シムは人工知能って事で良いのかな?」


[違います]


「そうなんだ?」

才能など、自分自身の事でも、よく解らない事が多いのと同じ様に、シムが何なのか、俺自身にもよく解らない。


[私は、アユム様からスマートフォンが分かれ出た際に、そのスマートフォンの情報処理の為に形成された、新たな知性体、疑似人格で御座います]


「そう・・・・・・疑似人格なんだ・・・・・・」


「しかし、あの【神】の様な存在も酷いよね。こんな密林の中に転送させるってさ」

そう、こんな鬱蒼とした木々の中でなく、人里の中に転送してくれたら良いのにさ。


[この場所への転移は、必然だった模様です。この【基地局】との干渉で、転移が起きた様で御座います]


「えっ?この【基地局】が転移の原因の一つなの?」

そうだったのか?他の転移の原因として、俺の自作のファイル転送用のアプリが影響したらしいが、この巨大な塔の【基地局】も、転移の原因となった様だ。


[はい。理解されている様に、ファイル転送のアプリが主な転移の原因の様ですが、それ単体だけなら、転移は起きなかった様です。この【基地局】がこの場所に在る事で、アプリと干渉し合い、転移が起きて、この場所へ移動した様です]


「そうだったんだ・・・・・・」

なんだよそれ、転移が起きた時に、こんな密林の中に転移される事は、もう決定事項だったんじゃん。

最悪だよ。

まあ、自分で作ったアプリが原因なんだから、自業自得ではあるけれど、そんな自分で作ったアプリで、異世界転移のバグが起きるって、誰が想像するんだよ。


俺は拾った一部の石を【中継器】に加工し設置しながら、極大【基地局】の周囲の石を集めていく。

集めた石は、持っていた数個のエコバッグに入れている。

観光で高千穂に来ていたので、お土産物など買った物を入れる為に、いつもより多くエコバッグを持っていたので助かった。

まだ沢山のエコバッグが旅行かばんの中に入っている。


旅行かばんの中には、エコバッグ以外にも食料品など役に立ちそうな物が、いつくか入っている。

後で中身を確認しなきゃな。


極大【基地局】の周辺の石を拾い終わり、同時に【中継器】の周囲への設置が終わった。

その過程で、周囲の木々の間に一つ道を見付けた。道と言っても歩くのも大変そうな、木々の間に出来た隙間、そんな感じの道だ。獣道なのかな?幅はそこそこ有るので、もし獣道だとしたら、その幅に見合うだけの大きな獣が通る所なのだろう。

スマートフォンでマップアプリを起動する。

そこに表示されたのは、極大【基地局】の周りだけ詳細な表示となっている、それ以外はデコボコな地面が表示されているだけの簡素な地図だ。

元の世界では、御神木と言われる大きさの木々さえも、【中継器】の設置された極大【基地局】の周囲だけしか表示されていない。

地面の高低しかマップでは表示されていない。

それでも、木々の間に見付けた道が、今居る所より標高の低い所に向かっている事が解る。

当然 マップにはその道も表示されていない。

移動しながら【中継器】を設置して、マップを補完していくしかない。


しかし、大量に石が集まったよな。

少な目にエコバッグに入れたと言っても、十袋も有る。

旅行だからと、エコバッグを多く準備していて良かった。

まだ旅行かばんの中には、十袋のエコバッグが入っている。

普段から少なくても五袋のエコバッグを持ち歩く様な心配性な性格なのも、今回 かなり助かったと言える。


しかし、この石 かなり軽いよな。

この量でも楽に持てる。


さて、暗くなる前に、人里を目指して移動しよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ