人手不足とセル
人手が足りない。
いや、人手は有るんだけど、必要とする能力を持つ人材が、圧倒的に足りない。
今 俺は携帯電話の店と魔物の肉の貯蔵庫の二つを必要としている。
俺だけスマートフォンを持っていても、スマートフォンを深く楽しむ事は出来ない。だから、携帯電話の店を作り、スマートフォンを普及させる事は急務だ。
それに、スマートフォンの普及は、人々の安全にも影響するアイテムだ。いや、大事なのは普及させて俺が楽しめる環境にする事だけどね!
みんなの為じゃないよ。うん。本当。
そして、肉の貯蔵庫も、山賊をするしかなかった人達を、飢えさせない為に必要だ。
このガロンが領主をする村も、そんなに食べ物が豊かな訳では無い。
肉なんて、猟師が獲ってきた物を分けて貰って、僅かに食べる位だそうだ。
肉が貯蔵庫で長期保存が出来たら、かなり食糧事情が良くなるだろう。
いや、みんなの為じゃないよ!俺も美味しい物を食べたいし!
でも、やっぱりこの世界で暮らすなら、笑顔が溢れる世界の方が良いよね。
誰もが安心して暮らせて、誰もが飢えない、そして誰もがスマートフォンを楽しめる様な世界が良いって思う。
あっ!俺の為にね!うん。他人の為じゃない!偶然 そうなるかもってね!
しかし、本当に困った。
携帯電話の店を任せられる様な人材が、あの三人娘しかいない。
だって、あの三人以外でスマホを使った事が有るのは、領主様か領主様の所のサラ位で、しかも二人はほとんどスマホを使った事が無い。
それでいて、貯蔵庫の工事の説明を俺から聞いて、監督を出来そうな奴も、あの三人娘と領主様の所から手伝いに来たサラ達三人だけ。
今は、肉の保存が最重要だから、昨日はお店をお休みにして、貯蔵庫作りを優先させたけど、ずっとこのままって訳にもいかない。
「今日から三人娘と俺も加えた四人の中の二人は、携帯電話の店の仕事をする様にしたいな・・・・・・」
「そうだよね。ずっと しょぷ をお休みにしてられないよね!」
「うん。早くスマホが欲しい人も居るだろうしね」
ナノは賛成の様だ。
「でも、二人で出来る?凄いお客さん多かったよ?」
「初日は珍しさも有っただろうし、スマホが何か知らない人ばかりだったからだと思うから、これからは少しは落ち着くと思うんだ」
確かにフェムトの心配はもっともだ。
「でも、誰が すまほ を作るの?」
「あー 誰でも作れる様になる機械・・・・・・ 魔法の道具を作ったんだ。これを使えば大丈夫だよ」
そうだよね。ピコに限らず誰でも気になるよね。うん。
「「「誰でも作れる!?」」」
「あー うん。もちろん制限は有るけどね。スマホを持ってなきゃ作れないし、許可されたスマホでなきゃ作れない様になってるしね」
「ねぇ?じゃあ私達は作れるの?」
「うん。ピコも他の二人もね」
「「「凄い!」」」
「えっ?私もアユムみたいな魔法が使える?」
「私も魔道具作れるんだ!」
「アユムが居なくても大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。最初の一巡は、俺も一緒に居るからさ」
「「「うん!」」」
「でも、もう少しスマホ販売に人手が欲しいんだよね・・・・・・」
「サラは?」
「フェムト達みたいにまだスマホに慣れて無いから無理でしょう」
ふぅ・・・・・・
まあ、やっと俺以外の所有者が、四人って状態だからなぁ・・・・・・
もっと普及するまで仕方無いか・・・・・・
「で?誰から携帯電話の店で働く?」
「私からで良いんじゃない?」
「フェムトからか・・・・・・ 他の二人はそれで良い?」
「「うん。良いよ!」」
「二番目は?」
「じゃあ私かな?」
「それで良い?ナノ?」
「うん。私は三番目で良いよ」
「じゃあ、フェムトは携帯電話の店の開店の準備を始めてくれる?」
「うん。解った」
「ナノとピコは、先に工事現場に向かってて。俺はスマホの作成をする機械と、【中継器】を作成する機械を準備したら、工事現場に一度行くよ。工事現場で説明が終わったら、携帯電話の店に戻るね」
「うん!わかった!」
「まかせて!」
「さて、先ずは・・・・・・ スマホ作成機をカウンターとして利用している所に設置して・・・・・・ その横に【中継器】・・・・・・」
「終わったの?」
「うん。簡単だからね。スマホの作り方は、帰ってきたら教えるね。工事現場の今日の作業の説明が要るから、ちょっと行ってくるよ」
「うん。いってらっしゃい」
はぁ・・・・・・
村の中も車で移動出来れば速いんだけど、村の出入口が狭くて通れなかったんだよなぁ・・・・・・
まあ、村の出入口まで行けば、車に乗れるから良いけどね。
「さてと、じゃあ行きますかね・・・・・・」
車の操作を可能にするのには、スマートフォンを使う。
スマートフォンを設置するホルダーが付いていて、そこにスマートフォンを置くと、防犯で施されていたロックが解除されて、操作が可能になる。
「ナビもさせる事が出来るけど、まだ要らないね。」
この車の変速ギアは、パーキング、ドライブ、ニュートラル、バックの四つ。
「音楽でも流したくなるけど、あっという間に着くから意味無いね」
ペダルは二つで、アクセルペダルとブレーキペダル。
ギアをドライブに入れて、アクセルペダルを踏むと動き出す。
「ピコ!ナノ!乗りなよ!」
一応 ハザードランプやウインカーも付いている。
「「うん・・・・・・」」
「まだ怖い?」
「うん。魔物みたいだから」
「大きくて見た事が無いもん」
「そう?慣れたら便利だよ」
「ほら、もう着いた」
そして、駐車する時は、サイドブレーキを付けなくても、パーキングに入れたら動かない。
「先に行っててくれる?荷物が有るからさ」
「うん。一つずつ持って行くよ」
「うん。掘削機全部は大変だろうから」
「俺なら持てるんだけどね。ははは・・・・・・」
もちろん車には、夜間走行用にランプも付いている。
「全員揃ってますね?」
「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」
「では、今日の作業予定を説明します。解らない事が有ったら、班長に聞いて下さい。あ、フェムト班の今日の班長は、代理でピコになります。だから、フェムト班はピコに相談して下さい」
「「「「「はい!」」」」」
「今日は、この洞窟一つを完成させましょう」
「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」
「その後に、この横に小屋を作ります。これは今日中では無くても良いですが、出来れば明日には完成させたいです。完成図は管理者の持っているスマートフォンに送ります」
「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」
「魔物の処理を行っている人達は、これから一緒に行って、車に燻製肉や干し肉を載せましょう。今有る分は、村の中に貯蔵します」
「「「「「はい!」」」」」
「あの・・・・・・ アユムさん」
「はい。シュラ 何でしょう?」
「今は男達しか働いていませんが、女子供も手伝える事は手伝いたいって言ってます。何もしないで村の中に居るのが、居心地が悪いみたいで・・・・・・」
「そうですか・・・・・・ 貯蔵庫を作っている所は力仕事ですし、魔物の処理をしている所は、もし魔物に襲われたら隠れる所が無いので、危険だと思って男衆だけで仕事をして貰ってたんですが・・・・・・」
「ダメですか?」
「解りました!正直 人手がもっと欲しいとは思ってたんです。良いですよ。手伝って貰いましょう。ただ、そうなると、魔物の処理をしている所に、魔物が現れた時の避難場所が欲しいですよね。後で何とかします。取りあえず、シュラは希望者を迎えに行って下さい」
「はい!ありがとうございます!」
「じゃあ、五人に後を任せますね」
「「「「「はい!」」」」」
セルを加工済みの肉を載せる為に、処理済みの肉をまとめて置いてある所に向う。
うーん・・・・・・
「これで、避難場所の作成が必要になったなぁ・・・・・・」
昼間 セルが隠れておける場所も、今日中に作らなきゃならないし・・・・・・
「困った・・・・・・」
[セルに両方共 作らせたら良いのでは無いでしょうか?]
「作らせる?」
[はい。両方共 岩山などに避難出来る穴を掘れば良いので その程度ならセル自身が出来るだろうと思います]
「昨日 ドローンに良さそうな所は映ってた?」
[はい。御座いました]
やはり、ドローンを大量に作って良かった。
ドローンなら人が行けない所の情報でも集める事が出来る。
「昼間からセルに作業をさせるのなら、車でセルを移動させるより、ドローンにセルを運ばせた方が良いね」
昨日は、この車を作った場所から移動させるのが大変だった。
山賊の住処だった所から村に続く幹線道路道までの細い道を、車が通れるだけ拡張をしなければならなかったからだ。
まあ・・・・・・
悪路を行く事を想定した造りの車だから、ナタに近い形状の大剣を作って、それで根本から木を斬って、後は少し整地すれば通れたけどね。
避難場所にする所までの森の中を、また昨日と同じ事をして、車でセルを運びたく無い。
「じゃあ、バケツリレーで車に燻製肉や干し肉を載せよう」
「御主人・・・・・・ アユム様 ばけつれぇ とは何ですか?」
「あ、そっか?こっちにはバケツリレーなんて無いか・・・・・・ うん。質問してくれて、ありがとうテラ。じゃあ説明するね」
「はい」
「この車と処理済みの肉の間に二列で並んで下さい」
「これで良いですか?」
「はい。よく出来ました」
「肉の近くの人から隣の人に順に渡して、車の近くの人は車に載せて下さい」
「「「「「はい!」」」」」
バケツリレーで車に運ばれる処理済みの肉を、安定する様に、俺は奥から積んでいく。
「みんなでやるとあっという間に終わりましたね」
「「「「「はい!」」」」」
「後は、昨日と同じく、処理をお願いします」
「「「「「はい!」」」」」
「先程 シュラと話した様に、後でシュラが女性や子供の中で、働きたいと希望をする人を連れてきます。優しく作業を教えてあげて下さいね」
「「「「「はい!」」」」」
本当は、子供は働かせたく無いんだけどな・・・・・・
学校が在るのなら、通わせてやりたいけど、この世界には無いから・・・・・・
「それじゃ私は行きます」
「「「「「はい!」」」」」
村の出入口まで肉を運ぶ。
貯蔵は領主様の所だ。
村人達総出で車から領主様の所まで、肉を運んで貰う。
「ありがとう」
次は、セルの移動だ。
シムに一番 大きなドローンの操作をして貰い、セルのいる洞窟まで移動させる。
車も洞窟の前まで移動させる。
「さて、糸を吐き出してた個体に、糸を出して貰って、それでセルを載せる網を作れたらって思ってるんだけど、どう指示を出せば良い?」
[統率用の個体に声で指示を出せば大丈夫です]
「そう?」
「じゃあ、糸を出させてくれる?」
統率用の個体に指示を出したら、複数のセルが糸を吐き出した。
「いや、ごめん!指示が悪かった!適当に出させちゃうとダメなんだ!ここに!ここにまとめて出して!出させて!」
そう、適当に指示を出したから、出して欲しい場所にではなく、全くの明後日の方向に、複数のセルが糸を吐き出した。
俺の身体にまで糸が纏わり付いている。
失敗した!
「ありがとう!これだけ有れば大丈夫」
一箇所にまとめて吐き出して貰った糸を、薄く四坪程 シート状に広げた。
「じゃあ、次に粘着性の液状の物を、この広げた糸の上に指示した位置に出して欲しいんだ」
「先ずは ここ」
「次は ここ」
「ここ」
「次 ここね」
「ここ」
「ここ」
「ここもね」
・・・・・・
かなり雑な作りだけど、それでもこれで糸が網状に纏まった。
「後は、これを最大サイズのドローンに付けて・・・・・・」
「じゃあ、セルは統率用の個体も含めて、乗れるだけこの網に乗ってくれるかな」
おー!一斉に動いた。
でも、全部は無理だろう。
半分ほどかな?それで一杯の様だ。
「シム 洞窟に残る個体の中にも、統率用の個体が欲しいね」
[では、昨日と同じ手順で、統率用の個体を作りましょう]
「よろしく!」
統率用の個体を作成した頃には、ドローンでセルの作業予定地まで運搬が終わっている。
「ねぇ?シム?遠隔でも統率個体に指示が出せるって言ってたよね?指示をしておいてくれるかな?」
[解りました。作業の指示をします]
はぁ・・・・・・
バタバタしながら、何とか貯蔵庫での指示は終わった。
車は村の出入口付近に停めて、歩いて携帯電話の店まで移動。
うん。フェムトは一番 真面目な性格だから、しっかりと準備が終わっている。
ピコも大丈夫そうだけど、ナノだと不安だ。
あ、心の中で、一応 ナノに謝っておこう。うん。ごめん。
でも、雑な性格の君には、どうしても不安を感じる。うん。
「準備を任せて、ごめんね」
「ううん。大丈夫」
「じゃあ、お客さんが来る前に、スマホ作成機の使い方を教えておくよ」
「うん」
「凄く簡単だから、ここにこの小石を入れて、蓋をして、蓋の上のこの四角い部分にスマホを置いて、スマホの画面に表示されるスイッチを押すか、声で「アイ 作成して」って言うと、作成されるから」
「えっ?それだけ?」
「うん。それと、【中継器】も販売するから、この【中継器】作成機の使い方も教えるね」
「うん。お願い」
「もうね。この中に黒い小石を入れて、蓋をして、こっちも四角い所にスマホを置いて、スマホの画面のスイッチを押すか、声で「アイ 作成して」って言うと、入れた量に合わせて、作れるだけの量の【中継器】を作ってくれるから」
「この【中継器】はどの位で売るの?」
「一食分の食料で交換するよ」
「安いね」
「うん。これを設置して貰うと、地図の表示が詳細になるから、設置して貰うと助かるからね。ただ設置の手順を購入者に伝えて欲しいんだよ」
「どう伝えたら良いの?」
「設置する場所は、スマホのマップ、地図だね。それを確認して欲しいんだ。詳細表示になっている所に設置しても意味が無いからね。別に詳細表示になっている所に設置しても良いんだけど、設置する人が損するからさ。で、設置する時に、この出っ張りを押してから、地面に置く。それだけ」
「うん。伝えるね」
「じゃあ、開店しようか?」
「うん」
お店の戸を開けて、携帯電話の店を開店する。




