工事は会議室でするんじゃない現場でやってるんだ
今日は早朝から自宅の周囲が騒がしい。
そりゃそうだ。数十人の男達が、外で待っているのだから。
昨日の夜は、頑張って八台の掘削機を作り上げた。
こんな物 仕組みとしては簡単だ。モーターと動力源さえ有れば、ほぼ完成だ。
モーターは魔力を使う魔力モーター。動力源は魔力バッテリーだ。
後は、モーターの回転運動を、ピストン運動に変えてやれば良い。
そして、一台のスマートフォンを作成した。
これは、ガロン班のリーダーをするサラに貸与する物だ。
贈与では無い。あくまでも貸すだけ、岩穴を拡張する工事の監督をするのに、連絡手段が有った方が良いだろうと判断した。
それに、作業を指示する相手が、食い詰めてとは言っても、山賊行為をしていた数十人の男達だ。
安全の為にも、班に一つはスマートフォンを持たせておいた方が良いだろう。
貰っておいた昨日の夕食の残りを食べて、簡単に朝食を済ませてから、外に出て挨拶をする。
「おはようございます。」
「「「「「「「「「「おはようございます!!!」」」」」」」」」」
うおっ!?
流石 この人数から一斉に返事を返されると、凄い圧を感じる!
「皆さん お聞きになっているでしょうが、私が皆さんを雇わせて頂く事になった【アユム】 【スマ アユム】と申します。宜しくお願いします」
「「「「「「「「「「宜しくお願いします!!!」」」」」」」」」」
ペコリと頭を下げると、痩せ細ってはいるが、屈強な体格の元山賊達が、一斉にお辞儀をした。
ここは異世界の土木の工事現場の朝礼なのでしょうか?
あ、そうだった。その予定で人を集めたんだった。
それなら仕方無いね。
「では、ここでは近所の方々に迷惑になるでしょうから、現場に向かいましょう。話の続きはそちらでします」
俺を先頭に歩き、続いてナノ ピコ フェムト、その後には、サラと二人の男の娘、もとい男の子。名はカオとマオらしい。漢字にしたら【華夫】【真雄】とでもなるのだろうか?サラは【沙羅】かな?
漢字なんて無いか、有っても識字率が低くて、使われてないみたいだけどさ。
三人の中で、一番 読み書きが出来ると言うフェムトに、文字を書いて貰ったけど、象形文字っぽい感じだった。
ん?カオとマオの後ろに・・・・・・
あの巨体の三人組が居る!!
筋肉の塊の様な野獣的二人の男と、高身長ナイスバディの美女さん!!
えっ?何故 あなた達がここに?
うん。現場に着いたら、先ず三人に聞いてみよう。
邪魔をする目的かも知れないしね。
「はい。到着です。ここで皆さんには作業をして貰います」
「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」
「で、作業の説明に入る前に・・・・・・」
「あの・・・・・・」
「お三人さんは・・・・・・ 何故 ここに、いらっしゃるのでしょうか?」
恐る恐ると、直球で三人に聞いてみた。
「ほら、姉貴!」
ドンッ!
「えっ!?あ・・・・・・」
「ほら、話さないと!」
ドンッ!
「解ってるよ!」
二人の屈強な肉体の男達に促されて、高スペックな体躯の美女が、口を開いた。
「オレ達も・・・・・・ 私達も手伝いたい」
「えっ??いや、人手は欲しいですが、どうして?」
「あ、あの・・・・・・ えっと・・・・・・」
「あっ!お肉!そうですよね。お三人さん共 体格が良いですから、お肉を沢山 食べたいですよね!?」
「そっ・・・・・・そうそう。お肉だよ!」
「ああ、じゃあ・・・・・・ 人手が少しでも欲しいし、お願いしようかな・・・・・・」
手伝ってくれると言うのなら、これだけ体格が良いんだから、絶対に役に立つ筈だ。
「はい!ありがとう!」
「ギガ!メガ!やるよ!」
「「おう!任せろ!」」
「男性の二人は、ギガさんとメガさんと言うんですね。あなたの名前も伺って良いでしょうか?」
「オレは、私はテラ!テラです!」
「テラさんですね。良い名前ですね」
「ありがとうございます!家名はギガンテスです!」
「家名をお持ちなんですね」
こちらで姓を持つ人は珍しいらしいのに、この三人は姓を持っているんだ。
「はい!領主様 ガロン様やフェムトやピコやナノ達とも遠縁です!」
「そうなんですね」
他の村人達と髪色の違う人達は、みんな血縁関係があるみたいだ。
「はい!」
「では、男性の二人は、フェムト班とガロン班に分かれて指揮下に入って下さい。テラさんは魔物の解体と保存の加工の組に入って貰います」
「はい!」
「では、この三人にも加わって貰って、最初の朝礼と作業の説明を開始します」
「では、改めまして、おはようございます」
「「「「「「「「「「おはようございます!!!」」」」」」」」」」
「今日から作業を始めますが、ここで守って貰う事があります。先ずは、さぼらない。きちんと途中で休憩をとる。ケンカなどの作業の邪魔をしない。何か問題が起きたら監督をする私やこの六人に相談をする。以上です。他に決まりが必要になったら、随時 追加して、毎朝 ここで行う朝礼で伝えます。ここまで良いですか?」
「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」
「皆さんには、七日の間に五日間働いて貰います。残りの二日はお休みです」
ざわざわ・・・・・・
「どうしましたか?」
「お休み・・・・・・ ですか?それは何ですか?」
山賊の頭だった男が聞いてきた。
「お休みはお休みです。働かずに休んで、体の調子を整えて、仕事をする日に備える日です」
「えっ?そんな日が有るんですか!?」
「そりゃそうです。働き通しじゃ体に疲れが蓄積して体調を崩してしまいます」
「私達は犯罪者として労働を科されているんですが、休ませて貰っても良いのでしょうか?犯罪者の労働じゃなくても休みなんて有りませんでした」
「ここでは休みを取って貰います。これは絶対です」
「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」
「一日の仕事の時間は、約八時間です。約四刻ですね。それより長くなってしまう場合は、残業代として追加の報酬を出します。そして一日の作業の途中で、約四半刻の休憩を二回、半刻の食事休憩を一回取って貰います」
ざわざわ・・・・・・
「どうしました?」
「休憩も取らせて貰えるのですか?」
先程の頭だった男が聞いてきた。
「当然です。疲れ過ぎたら作業効率が悪くなります」
「はあ・・・・・・」
凄く驚いている様だ。でも、長く・・・・・・長い期間 彼等には働いて貰う事になる。現代日本の方式で、体調を崩さずに働き続けて貰いたい。ブラックな職場環境なんて、俺の所では要らない。
「お休みの日や休憩の指示は、それぞれの班長にして貰います。ここまでは良いですか?」
「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」
「班長と、補佐の二人は、昨日 話した様に、作業員に必ず休憩を取らせて下さい」
「「「「「「はい!」」」」」」
「サラさん これは贈与では無く貸与として貸し与える道具の一つです。領主のガロンさんが購入したスマートフォン、スマホですね。これを貸すので、私に緊急の連絡をしたい時に使って下さい」
「はい!」
「フェムト班と連絡を取るのにも使って貰って良いですから」
「はい!」
「使い方は、後で教えますね」
「はい!」
「班長とその補佐は、自分達の班だけでなく、魔物の解体や保存加工している作業員の様子も、定期的に見に行って下さい。そして休憩の指示もしてあげて下さいね」
「「「「「「はい!」」」」」」
「えっと・・・・・・ あなた名前は何と言いますか?」
山賊の頭だった男に声を掛ける。
「オレはシュラだ」
「じゃあシュラさんは、フェムト班に入って貰いますが、作業員のまとめ役になって下さい。つまり、二人の班長やその補佐の四人の補佐役ですね。テラさんと協力して、解体と保存加工をする人達の助けもしてあげて下さいね」
「わかりました」
「今回 山賊行為の罰として、こうして作業をしてる人達は、この場所の工事が終わったら、村の塀の強化や道の整備をして貰います。最終的には、魔物の群れに村を破壊され、山賊行為をするしかなかった皆さんが、安全に生活出来る新たな村と住まいを提供する予定です。ですから、頑張って下さいね」
「本当ですか!?」
「はぃ?何がですか?」
「新しい村って!?住む所って!?オレ達にそんな・・・・・・」
「ええ、本当ですよ。その許可も領主のガロン様に貰っています。約束しますよ」
「ほんとうに・・・・・・」
あれ?なにか不味かった?
シュラが泣いて膝をついてしまった!
あれ?他の元山賊さん達も、泣き出してる!?
あ、元々 住んでいた村に愛着が有ったのに、新しい村に住まわされてしまうから、悲しんでるのか!?
新しく作るんじゃなくて、魔物に襲われて住めなくなった村の跡地に、村を復興してやるべきだったか!?
でも、バラバラでどの位 ここから離れているか解らない所だし・・・・・・
複数の村を復興するのは大変そうだし・・・・・・
「ごめんなさい。勝手に決めてしまって・・・・・・ 嫌だったですか?」
「まさかっ!?そんな事は無いです!」
シュラのその言葉に合わせて、シュラや元山賊達が、一斉に首を横に振りまくってくれている。
嫌じゃない様だ。
良かった・・・・・・
「ホッとしました。良い住み良い街を作りましょうね?」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
「じゃあ、この機械の使い方を教えます。ずっと使っているのは体に悪いので、定期的に使う人を交代しながら、作業を進めて下さいね」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
「班長とその補佐の六人も使い方を覚えておいて下さい」
「「「「「「はい!」」」」」」
「では、先ずは、ここをこうして・・・・・・」
一通り伝えるべき事を伝えた。
後は、六人に任せれば良い。
新しく工事に加わってくれたテラさん達三姉弟は、今日はフェムトやサラさん達のサポートをして貰って、明日以降 大丈夫そうなら、三人もフェムト達六人の管理者の立場に加わって貰って、九人の管理者で、工事を進められる様な体制になってくれると助かるかな。
そうなるかは、三人の協調性の有無がカギだろうな。
元山賊の人達も、様子を見て、管理者を任せられそうな人には、それなりの立場になって貰おう。
さて、俺は、魔物の肉の保管庫の予定地を六人に任せて、山賊の住処だった所で、自分のやるべき事をやらなきゃならない。
これは、俺にしか出来ないからね。
「三度目か・・・・・・」
もう三度目ともなると、ここまでの移動は慣れたものだ。
うん。途中の蜘蛛の巣には、慣れないけどね。
毎回 道の途中の蜘蛛の巣を払うが、次に来た時には、もう新しい巣が出来ている。
子犬や小猫位の大きさのジョロウグモやオニグモとかの巣がね・・・・・・
でも、この蜘蛛の巣って蜘蛛が大きい分、かなり糸が強いけど、何かに使えないかな?
まっ今はそれよりも・・・・・・
「さてさて、この世界初の自動車を作ろうかねぇ」
そう、自動車だ。ゴムが無いからタイヤに問題は有るが、それ以外は、何とかなるだろう。
材料は、魔石 魔鉱 魔鉱石、それと木々かな。
樹木は樹脂も含んでいるから、ゴム程 柔軟じゃ無くても、それなりに弾力の有る物は作れるだろう。
ボディも樹木の繊維を加工すれば出来るだろう。
鉄とかの金属も有ると良いが、今は魔鉱で代用かな。ただシムの話だと、鉄より強度が無いそうだから、鉄が手に入ったら、素材を変更しよう。
「じゃあシム 指示を頼むよ」
[はい。了解しました。先ずは動力の部分を作りましょう]
「おう。魔石と魔鉱と魔鉱石を手に持てば良いんだな?割合は?」
[では 魔鉱を八割程と 魔鉱石を二割]
「魔石は要らないんだね?」
[いえ 後で使います]
「了解」
着々と部品が出来上がって行く。
部品を組み立てたり、組み立てた機構を、他の機構と組み合わせる為の道具も、同時に作って行く。
「出来た!」
この世界で初めて作られた自動車だ。
二時間程の時間で出来た。
魔力をエネルギーとして使うから、元の世界の電動自動車ならぬ、魔動自動車とでも言えば良いかな?
魔力モーターと魔力を貯めるバッテリーが心臓部だ。
ボディは黒のメタリック的な感じになった。
フロントガラスは珪素を材料にすれば作成可能なのだそうだが、強化ガラス程の強度を持たせる事が出来ないそうなので、樹木から採った樹脂を加工して、少し色の着いた透明に近い樹脂パネルにした。
道が悪くてスピードも出せないし、ワイパーも無いから、取りあえずは、これで良いだろう。
形的には、屋根の取り外し可能なトラックの様な感じ。
大きさ的には、2トン車位かな?
運転席は真ん中で、運転席から少し下がった所に長椅子の形で助手席を付けた。
つまり、基本は四人乗りだ。助手席に詰めて座れば、もう一人位は座れるかもだけどね。
荷台の部分には、折り畳みの長椅子も最大六ケ所 取付けられる様になっている。
最大数取付けて、一椅子三人で座れば十八人、詰めて座って一椅子四人なら二十四人、22〜29人まで乗れる。
ただ、魔力の消費量が大きいから、俺じゃなきゃ魔力を補充し切れず、他の人間は運転出来ない。
悪路を行かなきゃならないからね。
自動車は出来た。しかし問題も出来た。
問題は、自動車の作成に材料を大量に使い、周囲の簡単に採れる魔石や魔鉱、魔鉱石を使い切ってしまった事。
掘削機や他にも作りたい物が有る。
[アユム様 牢となっていた洞窟の奥に 更に資源が埋まった状態になっています]
「えっ?そうなの?」
[はい。まだそこなら容易に採掘出来る筈です。【中継器】でのセンサーによる調査で かなりの規模の空洞が確認出来ています]
「じゃあ中を確認してみるか・・・・・・」
一旦 機器の作成を中止して、洞窟探検をする事になってしまった。
でも、素材が無ければ、何も作れない。
と言うか、洞窟探検とか、男のロマンだろう!マロンをタップリ使ったモンブランも好きだし、ケーキ好きのロマンだと思うけど、異世界の洞窟で探検って、ワクワクしてしまう部分もある。
いや、部分じゃないな。全面的にワクワクしてます!
まあ、何も無いんだろうけどね。宝箱とか期待しても無いんだろうけどさ。
凶悪なモンスターとかね。出たりって無いんだろうけど!
さて、サクッと調査してしまいますか・・・・・・
何事も現場の事は現場の人間が詳しい訳で・・・・・・




