異世界で始まる「あいうえお」と【円】
開業って大変ですよね。
うん。よく、分かります。
領主様に了承を得て、村の中に携帯電話のショップを作れる事になった。
不審に思われるかと考えていたら、逆に領主様の方が、ショップを作る事に前向きと言うか、意欲的と言うか・・・・・・
俺が引いてしまう程に、グイグイと話を進めようとしていた。
・・・・・・
それで良いのか?異世界?
俺 昨日 来たばかりなんだけど・・・・・・
しかも、この村ってだけじゃなく、この世界に昨日 来たばかりなんだけども・・・・・・
まあ、領主様は、その辺りの事を知らないしね。
それでも、村に来たばかりの人間に、村の中で怪しい携帯電話のショップを始める事を許可するって・・・・・・
警戒心が皆無過ぎなんじゃないだろうか?
やっぱり田舎・・・・・・いや、ここまでだと田舎ってレベルを超えてるよな。
辺境?秘境?いや、魔物がウヨウヨいるんなら魔境か!?
こんなそんな環境だから、人への警戒心が薄いのかな?
領主様の話では、「村の中心に店を」との事だった。
俺としては、村の端っこで良いんだけど・・・・・・
「ねえ?アユム?これが『あ』だよね?」
「お?正解!ピコは覚えが早いね。えらい!」
今 三人娘に読み書きを教える為に、その道具を作っている。
カードサイズの板の切れ端に、平仮名と片仮名を一文字書いて、遊びながら学習出来たら良いんじゃないかと、領主様に頼んで、この板の切れ端を準備して貰った。
所謂 知育玩具と言うやつだ。
「これは・・・・・・『お』?」
「そうそう。フェムトも覚えるの早いね。うん。えらい!」
「「へへへ・・・・・・♪」」
ピコとフェムトは覚えが早い。
まだ平仮名を書いた板を作っている最中なのに、一つ作り終えたら時には、その文字を覚えている。
明日になったら、また解らなくなっているかも知れないけどね。
「私もわかるよ!これ!『い』だよね!」
「あー おしい・・・・・・ これは『け』だね」
ナノは少し苦戦している。
形が似ていると、見分けが難しい様だ。
[アユム様 月々の支払いは 金銭だけでなく 物品での支払いも可能にすると良いのではないでしょうか?]
そうだね。
こんな田舎じゃお金を使う事も少ないだろうしね。
板の切れ端で知育玩具を作りながら、三人娘に文字を教えて、同時に脳内でシムとショップの開業に関して話し合いをしている。
問題は、月々の支払いの額と支払いの方法だ。
[支払いの額は 故界の携帯電話の料金より安くなる設定が良いかと進言します。故界で携帯電話大手事業者の最安値が三千円程度ですから こちらの世界での価値で千円から二千円相当が妥当かと思われます]
どうして?
[高ければ普及の妨げになるからです]
なるほど・・・・・・
月々の支払いの負担が、その程度だと設定したとして、それをどう算出するか・・・・・・だよね。
[故界で 国々の経済力を測る指数として利用されている【ビッグマクド指数】を参考にされてみてはいかがでしょうか?]
【ビッグマクド指数】か・・・・・・
でも、そのまま活用は出来ないよね。
こっちには、マクドナットが一店舗も無い。
いや、是非とも異世界のここにも進出して欲しいのだが、かなり難しいだろう。
当然 そのマクドナットの商品の一つのビッグマクドも無い。
しかし、生きる事に不可欠な食事を基準にするのは良いと思う。
元の世界では、一般的な感じだと、多分 一食五百円前後程度の負担だろう。
それを基準とすると、千円から二千円程度の負担で・・・・・・となると、こっちの価値で言うと、二食から四食程度の負担に相当する対価って事かな。
つまり、一日二日分の食料に相当する対価が、月々の支払額として妥当なのかも知れない。
「ねえ?アユム?聞いてる?」
「あっ!?ごめんごめん」
「これは『う』?」
「正解!ナノもやれば出来るじゃん!」
「へへへ・・・・・・♪」
イカンイカン、開店の事を考えていて、ボーッとしていた。
さて、その程度の月々の負担にするとして、どうやって支払って貰うか・・・・・・だよなぁ・・・・・・
銀行も無ければ、クレジットカードも無いからなぁ・・・・・・
[【モバイル決済】や【仮想通貨】の様なモノの導入はいかがでしょう?]
ん?どう言う事?
[先に一定額に相当する対価で【仮想通貨】として【チャージ】して貰い 支払いは【モバイル決済】の様にスマートフォンで行う。これなら月々の支払いも可能かと思われます]
なるほどね・・・・・・
「なあ?みんな?お金ってどうやって数えてる?通貨は何だろう?通貨単位とかどうなってるのかな?」
「「「えっ?」」」
うわぁー・・・・・・
ドン引きされてるのが、凄く解る。
三人共 これまで見た中で、一番 凄い顔して俺を見てる。
そりゃそうだよな。元の世界で日本人が日本人に同じ質問をしたら、同じくドン引きされるよな。
「お金 村ではほとんど使わない。物で交換して貰うのが普通」
「みんな変な質問をしてごめんな。フェムト 教えてくれてありがとう」
「センの事を聞いてるのかな?」
「そっか?センと数えるんだ?ありがとうピコ」
そうか・・・・・・センね・・・・・・
昔の日本と通貨単位が同じなんだ。
字は違うんだろうけどね。
なあ?シム?【仮想通貨】や【モバイル決済】を導入するとして、通貨単位は何にしようか?
[【円】を使用すると良いのではないでしょうか?アユム様が利用する上で、一番 違和感が無いのではないかと]
そうだね。こっちの通貨単位と被らない様だし、それで良いかもね。
「ふぅ〜 出来た!!」
やっと平仮名の分の作成が終わった。
三人分だから、作っている間に、外が薄暗くなってきている。
「「「おつかれさま!!」」」
「うん。頑張った!」
「ありがとう!アユム!」
「おっ!と・・・・・・」
ピコが抱き着いてきた。
「あっ!ズルい!ありがとう!」
「ちょっ!」
ナノも真似して抱き着いてきた。
「じゃあ・・・・・・私も・・・・・・ありがとう」
「えっ?フェムトも!?」
フェムトは後ろから抱き着いてきた。
いや、俺 ロリコンじゃ無いから。
いや、三人共 日本では成人している年齢みたいだけど、見た目が幼くて無理だから。
でも・・・・・・
大人だから出る所は出てる!?
何かムニムニしてる!?
身長が低いだけか・・・・・・
いやいや、三人共 ただ読み書きを教えて貰える事に感謝しているだけだから。勘違い危険!!
「なあ?スマホのお店の話だけど、教えて欲しい事が有るけど良い?」
「「「いいよ!」」」
「うん。もちろんだよ!」
「ありがとう。でね。スマホの購入者に、月々の利用料として、三十一日に一回位 食事二回から四回分の食料などを、対価として貰おうかと思っているんだけど、対価として高くは無い?」
「その位なら便利だし買う人が多いと思うよ。スマホ自体はいくらなの?」
ん〜?一日の食事が千円位として、十日で一万円相当か・・・・・・
三十日で三万円相当で・・・・・・
日本で一番 シェアの高かったスマートフォンが、約十万円前後だったけど、
それを基準にすると、こちらでは三か月から四か月程度の食費分かな・・・・・・
九十日から百二十日分か・・・・・・
安過ぎても良くないだろうしなぁ・・・・・・
元の世界で安価なスマートフォンだと、一万円程度からだったから、十日分程度のこちらの食費か・・・・・・
[スペックに差を付けて 複数の端末を販売するのはどうでしょう?]
なるほどね。
簡素な低スペックの物は一万円程度の対価で、良い物は十万円位の対価で購入可能にって事か・・・・・・
[はい。その都度 作成するので複数の種類が有っても大丈夫です]
あ、でも店舗に展示してある端末はどうするの?
[展示用に一台ずつ作成すると良いかと]
なるほどね。操作を試せるホットモックを展示して置くって事ね。
[はい。それが分りやすいと思います]
「能力に差の有る複数の端末を販売するつもりだから、安いのだと約十日分の食料程度の対価で買えて、高い高機能な物だと百日分以上の食料程度の対価で買える価格にしようかなって思ってるよ。その間の価格帯の物も準備するけどね」
「それは良いかも」
三人の中で、一番 頭が良いって感じているフェムトが賛成してくれた。
これならイケるかもね。
「二人はどう思う?」
「私は安いと良いかな」
「そりゃそうだ。はは・・・・・・」
ピコの答えに少し苦笑い。
「私は貰えるのが良い!!」
「対価無しでって事?そうかも知れないけど、俺が困るよ。はははは・・・・・・」
ナノの答えには、全力で苦笑いするしかない。
「そろそろ暗くなってきたね。御飯を食べたら、三人共 暗くなり過ぎる前に、早目に帰らなきゃね」
朝 獲ったキジは、血抜きの処理をしてから、食事を準備して貰っているお礼に、領主様に渡した。
ただ、三人にも食べる権利が有ると思うので、キジは三人にも食べさせてやって欲しいともお願いしてある。
「えっ?ん・・・・・・私はアユムの所に泊まろうかな・・・・・・」
「泊まるって、同じ村の中だから、ナノの所は近いだろう?」
「うん。近い。だから泊まろうかな」
「それなら私も泊まりたい」
「ピコも自分の所は近いでしょう!?」
「ナノの所より離れてる」
「大差無いんじゃないの!?」
「じゃあ、私が一番 離れてるから、私が泊まろうかな」
「フェムトまで!?いや、昼間 村の中を歩いた時にフェムトの自宅を教えて貰ったけど、近かったよね?」
「ダメ?」
「いや、ダメって言うか、男の所に若い女の子が泊まるって、普通にダメでしょう」
「もっと色々と教わりたい」
「明日でも良いんじゃない?」
いつもは大人しいフェムトの押しが強い。
三人共 抱き着いたまま、泊まるとか言ってる。
俺も健康な男の子ですから、そんな泊まったりしたら、間違い?いや、間違って無いのかも知れないけど、危ない事?になるかも知れないのに、俺って三人に男として見られてないのかな?
俺の敏感な一番男の子の部分が、今 危険な感じで変化している。
ヤバいです。
俺も健康なんです。
「あのぉ〜 アユム様!?御食事の準備が出来ました」
「あ、はい!今行きます!!」
「ほら、俺 御飯に行くから!ごめん!放して!三人も行くよ!」
「「「えーっ!?」」」
「「えーっ!?」じゃない!」
危ない!まだ子供で男への警戒心が無いんだろうけど、危ないって!
そんな事をしてると、襲われちゃうよ!?
「お待たせしました!ほら、三人共 ガロンを待たせちゃ悪いから行くよ!」
「ガロン・・・・・・」
あ、迎えに来てくれた人が、領主様を呼び捨てにした俺を睨んでる。
「あの・・・・・・領主様から名前で呼べと言われて・・・・・・しかも、「様」も「さん」も要らないからと言われて・・・・・・「領主様」って言うと怒られちゃうんです・・・・・・」
「そうでしたか?それは失礼しました」
「いえ、知らないとビックリしますよね?ごめんなさい」
ふぅ〜 笑顔になってくれた。もう領主様は・・・・・・呼び捨てにしろって無茶振りするから・・・・・・
「さあ、みなさん行きましょう。旦那様がお腹を空かせて待ってますよ」
独自用語説明:故界 = 転移前の元の世界。アユムとシムが決めた独自用語。ビッグマクド指数 = 日本各地にも出店している最大手のハンバーガーチェーン店の一商品を基準とした経済力指数、大人の都合上 架空の名称にしています。




