小さな小さな村から始まる『ながらスマホ』
昼頃になったら、領主様の遣いの人が、俺を食事に呼びに来てくれた。
本当に饗してくれるらしい。
味は・・・・・・美味しいとは・・・・・・ゲフンゲフン。
それでも、見ず知らずの旅人でしかない、怪しい俺に対して、山賊退治の感謝の気持ちとして、こうして饗してくれるのだから有り難い。
異世界から来た身には、宿と食事の提供は、何よりも助かる。
それが感謝の気持ちとしての行動だとしても、逆にこちらとしても感謝しか無い。
いくら凄いチートが有ったとしても、転生先が洞窟の中で、食い物を自分で確保しなきゃならなかったり、
俺と同じく森の中に転移して、凄いチートは金を使わなきゃ行使出来ない無茶仕様で、単独でのオオカミとの近接戦闘から異世界生活が始まるのに較べたら・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ダンジョンと言っても言い過ぎじゃ無いくらいに、危険な魔物が溢れ返っていると言う、深いジャングルの中に転移して・・・・・・
初めて会った異世界人には、超警戒されて縄で拘束されて・・・・・・
拘束された状態で、魔物がウヨウヨいるジャングルの中を長距離歩かされ・・・・・・
拘束された状態で、数十人の山賊との戦闘になって・・・・・・
その戦闘では、三人もの人間を護りながら、しかもそいつ等は、俺を拘束した犯人って言う・・・・・・
・・・・・・
あれ?目の所に滲んできたのは、これは汗だよね?
うん。きっと涙なんかじゃ無いよね。
うん。俺 男の子だから強いんだ。泣かないよ!!(涙)
「どうしましたか?何か食事に問題でも・・・・・・?」
「あ、いえ、少し考え事をしてました」
領主様が心配して声を掛けてくれた。
優しくて助かる。
「ねぇ?アユム このすまほってどうやって絵にしてるの?」
「ああ、この裏側のカメラのレンズから光を取り込んで・・・・・・ まあ、それで勝手にスマホが写真って絵にしているんだよ」
どうやってって!説明難し過ぎる事を聞くな!
[正確には光をレンズを使って取り込んではいません。魔鉱と魔石を利用した素子に]
いや、シム 説明は良いから。
それ、フェムトとかに説明しても解らないから。
「ねぇ?アユム さっきの記念写真って絵を見せて!」
「ああ、良いよ。ほら・・・・・・」
「むふぅ〜♪ 私がアユムの隣♪」
「まあ、隣だけど、反対の隣には、ピコも居るし、前にはフェムトが居るけどね」
「そうそう。みんなアユムの隣だよ」
ピコがむくれてナノの言葉を否定した。
小さな事なんだから、そこまで全否定しなくても良いのに。
「アユムさん?それ・・・・・・そのさっきから飯を食べながら三人がいじっているのは、何なのでしょうか?」
「あ、これはスマートフォンと言う、私の魔法です。これ一つで色んな事が出来ます」
「ほら、三人共 ご飯を食べながらスマホをいじるのは、お行儀が悪いんだよ。ご飯を食べ終わってからにしようよ」
とか言ってるけど、俺も食事の時に、よくいじってたけどね。
でも、流石に目上の人との食事の時には、ご飯を食べながらのスマホ操作はしていなかった。
フェムト ピコ ナノの三人も、俺と一緒に居たので、領主様が一緒にご飯を済ませれば良いと、一緒にご飯を振る舞ってくれた。
それなのに・・・・・・ 食事をしながらのスマホって・・・・・・
「えーっ!?良いじゃん!」
「いや、ダメだよ。自分だけでの食事とか、仲の良い人との食事でなら、まだ良いかなとは思うけど、領主様にご飯を用意して貰ったのに、その食事中にスマホをいじるのは・・・・・・」
ナノが反発しているだけでは無く、他の二人も嫌そうな顔をしている。
「でも、領主様とは仲良し・・・・・・ ね?領主様?」
「あ、ああ、私は気にしてないですよ」
「えっ?そうですか?でも・・・・・・」
フェムトの言葉を領主様が肯定しちゃうと、注意した俺が悪者みたいになってしまうよ!?
「私にも見せて貰えませんか?」
上座?多分 そんな席だろうって位置で食事を一緒にしていた領主様が、席を立って横に来た。
「あの・・・・・・」
領主様 こんな山の中の村なのに、元の世界で売れっ子のモデルになれるだろうって、2メートルを超えてるだろう高身長で、鍛えられた整った八頭身の身体に、美形系?中性的な整った顔立ちの超イケメンで、同性なのにドキッとしてしまう。
凄く若そうだけど、何歳なんだろう?
って!こら!シム!勝手に解析の機能をオンにしちゃダメ!
[気にされていた様なのでオンにしてみました]
あれ?解析の表示の領主様の年齢の項・・・・・・
八十八って・・・・・・
えっ!?おじいさんじゃん!!
エラーじゃないの?
[解析では その様な結果になっています]
エラーだね。うん。きっとそうだ。
どう見ても、十代か二十代前半だもん。
「こっ!?これは何ですか!?本当に絵なんですか!?中に入っているじゃない・・・・・・ですよね。目の前に本人が四人居ますから!?えっ?この魔法は凄い!!」
「あ、はい。写真という絵です」
写真の説明が難しい!
領主様 平静を装ってますが、俺は心の中で大汗かいて説明しています。これで納得して下さい!
「領主様 これは電話って魔法も使えるから、遠くの人とも話せるんですよ。ほら・・・・・・」
プルプルゥー
「いきなり掛けるな!」
ピコが通話してきた。もっと説明が大変になるだろうがっ!!
「何ですか!?これ!?声が・・・・・・この板の中から!?えっ!?えっ!?えっ!?これは遠く離れても同じ様に使えるのですか?」
「あ、はい・・・・・・ そうなんです・・・・・・」
どうやってとか聞いてくれるな!領主様 お願いします!
「旦那様 テラさんがお会いしたいと来られましたが・・・・・・」
「ちょっ!?ちょっと待ってて貰ってくれ。いや、後で来て貰ってくれ」
「はい。では、その様にお伝えします」
「あの・・・・・・ お客さんならそちらの対応をして頂いても良いですよ?」
「いやいや、山賊から救われた者と、その者を救った英雄なら、当然 アユムさんを優先するのは当然ですよ」
ふーん・・・・・・
テラって人は、山賊に捕まってた人の一人なんだ・・・・・・
「これ・・・・・・良いですねぇ・・・・・・」
うわっ!?欲しそうな目で見てる。
「ねえ?ねえ?このかめらって丸い所の横の丸いのはなに?」
「それは、暗い所で写真を撮る為のライトだよ。それを向けた方向を明るく照らしてくれるんだよ」
フェムトがカメラのレンズの横のライトの事を質問してきた。
「こう?」
「違う違う。ライトをオンに、スイッチ・・・・・・ いやまあ兎に角 ライトを起動させてから向けるんだよ。ほら、こう・・・・・・」
「「「「凄い!!」」」」
「これは明るいですな」
「部屋の中が外に出たみたい!」
「これを使ったら夜も明るいよね?」
「これも魔法!?」
「まあ、魔力を使ってるから、一応 魔法かな・・・・・・」
「あの・・・・・・ 私も・・・・・・ 私もこれが欲しいのですが・・・・・・ 売って貰えませんか?いや、凄く高価でしょうから、私の資産で買えるか解りませんが・・・・・・ あ、いや、あれ?あれ?三人は買えたのですか?あれ?三人共 資産は無かった筈ですが・・・・・・」
「あ、三人には村への案内のお礼として、プレゼント・・・・・・ お礼として贈らせて貰いました。高価ですが・・・・・・」
「そっ・・・・・・そうなのですね・・・・・・」
なあ?シム?まだスマホって作れる?
[はい。もちろん作成可能です]
どうしよう?この世界だと、スマートフォンはかなりのオーバーテクノロジーだと思うけど、領主様にあげても大丈夫かな?
[大丈夫でしょうが あげるのでは無く 買って頂いた方が宜しかろうかと 進言します]
えっ?そうなの?
でも、こうして宿を提供して貰ったり、食事も出して貰ったりしているから・・・・・・
[では お聞きしますが こちらのお金を持っていない状態で これからどう生活するのでしょうか?]
うん。わかった。
「そうですね。お互いに納得出来る取引でしたら、お売りしましょうか?」
[アユム様に提案します。取引の際 安い定額で良いので 月額料金も必要と説明する事が望ましいです。領主様から貰うか免除するにしても ランニングコストが必要だと説明する事で これから欲しがる者達への抑止になりますし この世界でスマートフォンの販売を行い始めた時に 月々の収入になります]
えっ?この世界でスマートフォンの販売?
[はい。この世界でスマートフォンが普及しなければ ウェブサイトも増えませんし 動画の配信も始まりませんし SNSも存在出来ません。この世界でスマートフォンを便利に使って行きたいのであれば 普及される事が望ましいです]
「はい。ただ、このスマートフォンをずっと使う為には、このスマートフォンを買うだけではダメで、月々 えっと・・・・・・三十一日に一回程度 使用料を払う必要が有ります。そんなに高くは無いですけどね」
「それは珍しい購入の仕方ですね・・・・・・ その使用料は高くは無いのですね?」
「はい。えっと・・・・・・」
なあシム?いくらが良いかな?
[申し訳御座いません。こちらの通貨も貨幣価値も分かりませんので お答え出来ません]
ですよねぇ・・・・・・
「はい。まだこちらの物価?経済の状況を知りませんので、いくらとは明言出来ませんが、安い使用料金で提供します」
「えっ!?私達もお金が掛かるの!?」
フェムト達が困惑した顔になっている。
「あ、いや、三人にはお礼としてあげたら、月額料金 三十一日に一回程度の料金は、免除 つまり払わなくても良いよ」
「ホントか!?」
「ああ、ナノ 安心して」
「良かった・・・・・・」
ナノへの返答を聞いて、ピコがスマホを胸に抱き締めて、ホッとしている。
「あの・・・・・・ 領主様 宜しければですが、このスマートフォンの村の中での販売を許可して頂けませんか?」
「いや、それは構わんが・・・・・・ こんな凄い物を、村人が買えるのだろうか?」
「はい。買える程度の金額にする予定です」
「それなら、私も買える・・・・・・ と・・・・・・」
「はい。それに、領主様と、この三人しか村内で持ってないない状態では、スマートフォンを有効活用出来ません」
「うっ・・・・・・ 確かに・・・・・・ 先程の通話という魔法も、相手が持っていなければ無理だ・・・・・・」
「実は、使う人が増えれば増えるだけ、このスマートフォンと言うのは、どんどん便利になって行くんです」
「そうなのか!?それは凄い!!うむむむ・・・・・・」
難しそうな顔をしている。
「村の中での販売 やはり難しいですか?」
「は?何を言っている!?先程 良いと答えただろう!?」
「いや、領主様が難しそうな顔をなさっているから・・・・・・」
「ああ、このすまぁとふぉん?すまほ?のお店を、村のどこに作ったら良いかと思ってね・・・・・・ ほら、よく売れた方が良いからね」
えっ!?悩んでたのはソレ!?お店の場所を考えてたの!?
「領主様 気が早いですね。ははは・・・・・・」
苦笑いした。うん。素で苦笑いしてしまった。
「いや、アユム 私の事はガロンと呼んでくれ。是非 アユムとは親しくしていきたい」
「えっ!?でも、領主様を呼び捨てって・・・・・・」
「何だ?アユムは私と仲良くしてくれないのか??」
「いえっ!そんな事は無いですよ!あ、じゃあ・・・・・・ガロン様・・・・・・」
「「様」は要らん」
「・・・・・・ガロンさん・・・・・・」
「「さん」も要らん」
「えっ?じゃあ・・・・・・ ガロン・・・・・・」
「おう!これから宜しくな!アユム!」
「は・・・・・・はぁ・・・・・・ こちらこそ宜しくお願いします」
そのまま、村の中のスマートフォンのお店、つまり携帯電話のショップの開店に関して、領主様と話し合う事になってしまった。
ああ、後で車を作る為に、山賊の住処になってた崖の所に行ってみようと思っていたのに・・・・・・
ピコはピコで、さっきからツンツンと突いてきて、小声で「読み書き算数を教えてくれるって約束は?」と何度も聞いてくる。
やりたい事や約束していた事をするだけの時間的な余裕が無い!!
あれ?でも、これって・・・・・・
俺が元の世界で就職したかった携帯電話のキャリアを、自分で開業するって事になるのかな???
いや、そうなるよね。
しかも、独占企業!?あ、企業じゃないけど・・・・・・
ここには独禁法も無いし、ガンガン売れるじゃん!!
あれ?でも、売れるのかな??心配になってきた。
携帯電話のショップの開店、いつからかな・・・・・・
徐々に異世界での『ながらスマホ』が増えて行きます。
お行儀悪いですよね。
はい。ごめんなさい。反省します。




