無言の圧力と領主様と苦笑いと宿と
ふぅ・・・・・・
やっと領主様ってのと会える。
高千穂って九州の宮崎県の熊本県との県境に近い観光地に旅行していて、
自作のファイル転送用のスマホアプリをテストしてたら、
突然 異世界へ自分自身が転送されてしまった。
うん。異世界へ転移した。
その途中で自分自身がエネルギーに分解されて、自分自身さえ無い変な空間を経由して、神様みたいな存在とかって奴に会うし・・・・・・
まあ、そのお陰で異世界でもスマートフォンを利用可能になったんだけどさ。
で、転移された先は、大自然豊かなジャングルの奥地。
真後ろには、雲を突く様な巨大な塔だけが存在している、古代文明だろうと思われる遺跡跡からのスタート。
そこからも困難の連続。
超スーパーハードモードからの異世界生活スタートって、哀し過ぎる位に悲壮な状態。
延々と黒い石を拾わなきゃならなかったり、初めて会った異世界人の美少女的な女性三人に捕まったり、数十人規模の山賊の集団に襲われたり・・・・・・と、ずっとムリゲーなクソゲーな展開が続き、
やっと・・・・・・本当にやっと、さっき人里に到着。
で、スマホのマップアプリで、異世界転移直後の位置から、この人里までの直線距離を測ったら、35キロ以上も有った。
もちろん、真っ直ぐな道では無くて、グニャグニャのデコボコのワサワサの急坂と言うより崖を降るって感じの所もありぃーのだったりグチャグチャビチビッチチャップチャプな泥濘もありぃーのって所を歩いて移動した。
実距離は約50キロだった様だ。
うん。酷い。
最初がこれって、スーパーハード過ぎだと思いますっ!
泣くぞ!泣いちゃうぞ!って言うか、思い出して少し涙ぐんでるぞ!
そして、それでやっと山賊の件で、この村?人里の領主様っての会える。そう、今 やっとココ。
「ガロン様 お連れしました」
「入ってくれ」
カチャッ・・・・・・
ゴジがドアを開けると、細身の少し耳の長い色白な品の有る男性が立っていた。
「よく来て下さいました。このアガタの領主のガロン、ガロン・エルブズです」
「初めまして。アユムです。須磨 歩です。こちらの地域の言い方だと、アユム・スマかな、よろしくお願いします」
領主様が手を伸ばして来たので、俺も手を差し出し握手する。
「山賊に襲われた三人を助けてくれたそうで、ありがとうございます」
領主様がお礼を言ってきた。
う〜ん・・・・・・ と言うか、三人が自ら虎穴に入り込んで、そこに居た虎の集団に囲まれて窮地に陥ったって感じだったと思うのだが・・・・・・
言わない方が良いよな。
って言うか、横の三人から無言の圧力が凄いのだが・・・・・・
「いえいえ、人里へと歩いていたら、山賊に襲われるちょっと前に、たまたま偶然 三人とお会いする事が出来まして、ここへ案内して貰っている途中で、山賊に襲われまして・・・・・・ それでお力を貸す事になったのです」
無難に説明をした。
誤解で三人に捕まってたとかも、言わない方が良いだろうと判断した。
「それはそれは、三人は運が良かったですね。フェムト ピコ ナノ アユム様に感謝しないといけませんよ」
「「「はい!」」」
「一緒に「ありがとうございました」って言うよ・・・・・・いい?」
「「「せぇーの」」」
「「「ありがとうございました!」」」
フェムトの誘導で三人が同時にお礼を言ってきた。
捕まえてたりもしたし、心底 そう思っているのだろう。
「あ、ああ・・・・・・ みんな無事で良かったね」
「そして、捕まってた村の者達も助けて頂いた。本当に、ありがとう」
領主様も再度 深々と頭を下げてお礼を言ってきた。
「いえいえ、降り掛かる火の粉を払ったら、偶然 助ける事になっただけですよ」
「それでも、ありがとう」
領主様は礼儀正しい義理堅い人物の様だ。
遠い親戚らしいが、ポンコツ三人組とは違うな。
「もう気にしないで下さい。ははは・・・・・・」
苦笑いしながら返した。
「あ、そうだ。ここで宿を取りたいのですが、残念な事に、ここに来るまでに路銀を使い果たしてしまってて、どこか泊まれる所を準備して貰えたなら嬉しいのですが・・・・・・」
そうなんだよな。金が無い。
「宿なんて気にしないで下さい。もちろん準備させて貰いますよ。山賊を討伐して下さったお礼も渡します。この村でゆっくりしていって下さい」
「そうなんですか?こちらこそ、ありがとうございます。それは助かります」
「ちょっと宿代わりになる所を準備してきますので、少しお待ち下さい」
「ありがとうございます」
本当 助かった!今夜の寝床 ゲットだぜ!
カチャッ・・・・・・
「ふぅ・・・・・・ 怒られずに済んだぁ・・・・・・」
フェムトが大きなため息をついた。
「良かったねぇ・・・・・・」
ピコも泣きそうな顔で応じてる。
「アユムが話を合わせてくれたから良かった!」
おい、無言の圧力を掛けておいて、良かったってなんだ!
「ははは・・・・・・ 良かったね」
でも、俺は大人だから動じない。キリッ!
苦笑いしながらだけどな!
「ねぇ?アユム? ここにはいつまで居るの?」
フェムトが不安そうに聞いてきた。
「ん?いつまでとかまだ決めてないよ」
「そうなんだ?」
「じゃあ!ここにずっと居れば良いよ!」
ナノがグイグイと寄ってきながら言ってるが、近い近い。
俺にはロリの趣味は無い!
「あ、ああ・・・・・・ まあ、考えておくよ・・・・・・ ははは・・・・・・」
また苦笑いするしかないじゃん!
「うん。私もアユムがここに居たら良いなって思うな・・・・・・」
ピコも俺の服の裾を摘みながら、ここに長く居る事を勧めてきた。
だから、俺はLOじゃない!
「そう?まあ、本当 考えておくよ。ははは・・・・・・」
本当に苦笑いするしかない!
「アユムが居ないと、色々と教えて貰えない・・・・・・」
フェムトがしょぼんとしながら言う。
それかよ!
「ああ、そうだったね。読み書きとか教えるって言ってたね」
「うん」
「私は戦い方とかも教えて欲しい!」
ナノがグイグイと迫りながら言ってくる。
近いって!
「うん。教えるよ」
でも、正直 柔道や剣道は、学校の授業で少し教わったのと、クラブや部活動で数年教わった位で、大会とかも出てないし、空手もおじさんに護身術程度で教えて貰っただけなんだけどなぁ・・・・・・
「私にも教えてね」
相変わらず、俺の服の裾を持ったままのピコも言う。
「それに、私はもっと上手くスマホが使える様になりたい」
フェムトが強い意志の籠もった目で見詰めながら言ってきた。
「うん。それも教えるよ。一緒に楽しくスマホを使おうね」
「うん」
「私も・・・・・・」
「もちろん私もだよ!」
フェムト ピコ ナノの三人共に、スマホをもっと楽しみたい様だ。
うん。そうだよね。異世界でモテ期到来とか無いよね。うん。
俺 泣かないよ。まるかっこ涙とじかっこ。
「お待たせしました。準備が出来ました。案内をします。行きましょう」
「ありがとうございます!」
さあ、俺はロリコンじゃないし、気を取り直して、これから泊まる所を確認しよう!
「こちらです」
そこは、領主様の家の裏手の空き家だった。
領主様の所の離れなのかな?
「領主様の所の近くなんですね?」
「ええ、前に親類が使っていた物です。今は空き家ですので、気楽に使って下さい」
それは、古い木造家屋だった。
台風でも来たら倒壊するんじゃないかって感じだが、これでもこの世界では良い方なのだろう。
「ありがとうございます。どの位 ここに居るか分からないのですが・・・・・・」
「ええ、どうせ空き家だったので、気にせずに長く使って下さい。良ければこちらに定住されてはどうでしょう?」
「えっ?定住ですか?」
「はい。領民を大募集しています。ははは・・・・・・」
「はあ・・・・・・ 考えてみます」
まあ、どこにも行く当てが無いしなぁ・・・・・・
「あの三人も喜ぶでしょうしね。ははは・・・・・・」
領主様がフェムト達三人を見ながら言う。
うん。スマホを気に入ってるみたいだしね!
「そうかも知れませんね。ははは・・・・・・」
苦笑いで返した!
「寝具など、有る物は自由に使って下さい」
「ありがとうございます」
「それでは、夕飯は私の所で食べて下さい。準備しておきますから」
「えっ!?良いんですか!?ありがとうございます!」
領主様の所の晩御飯 ゲットだぜ!
「それでは、私は一旦 失礼しますね」
「ありがとうございました!」
深々とお礼をした。
さて、やっと異世界での生活の始まりって感じだ!




