転移?
今日は俺たちの卒業式。事件は最後に起きる。
(あっという間に高校生になっちゃったな)
教頭先生の声が聞こえてくる。
「在校生代表の別れの言葉」......
別れの言葉に泣くやつらがいる。
(変な顔だな。そしてもうすぐ帰れる。やっと遊べる。)
「.........そろそろお別れの時間のようです。卒業生の皆さん高校へ行っても頑張ってくださいね。応援しています。さようなら。」
..................
「「「「「「えっ」」」」」」
(ここはどこだ?)
俺たちは一つの大きな部屋の中にいる。まるでお城のような洋風な部屋だ。
そして、
(あれ、隣のやつの名前ってなんだっけ?あれ、俺の名前......)
そう考えていると、一人の女がやってきた。
「ようこそ。アストランド王国へ。まずは、わたくしの話を聞いてください。これから言うことは非常に悲しいことです。気をしっかりと保って聞いてください。」
とても落ち着いた声に皆は緊張する。
「まず言っておかなければならないことは、ここは貴方達の住む世界とは違う世界です。貴方達の言葉で言えば異世界転移というやつです。そして、もう一生あの世界に戻ることはできません。それから、転移した反動で名前がなくなりました。これからこの小さな石板を配ります。名前はその石板の上部に記されています。」
そう言われた俺たちは、一瞬、この女が何を言っているのか全く分からなかった。
「どういうことだよ。」
「ふざけんな!」
「なんで私たちなの?」
様々な声が部屋に響き始める。そしてもらった石板の名前を見てみんな微妙な顔をする。
(フウガ?これが俺の名前?フツー)
「これから、アストランド王直々に話があります。今抱く感情はつらいと思いますが、まずは王の話を聞いてください。」
そうすると。一人の長い白ひげを生やしたおじいさんが部屋に入ってくる。
「皆、よく来てくれた。いろいろ私に聞きたい奴はたくさんいるじゃろ。わしも伝えたいことがたくさんあっての。まずはわしの話を聞いてくれ。」
話の内容をまとめると、ある日突然戦争を吹っ掛けられたらしい、この王国は他の国と比べて小さい国で、武力では勝てないと知っていたためすぐに降参し、賠償金を払ってできるだけ被害が出ないようにしたらしい。そうやって戦争から免れていたある日、国の代表だけが集まる王帝会議で大国の大帝国が戦争は『見ててつまらぬ』と言い出していろいろ話し合った結果、100年に1度各国の代表でプチ戦争をしようということになったというわけだ、もし、それに負けたら少しの領土を相手国にくれてやるというものだった。だが、その少しの領土とは大帝国にとっては小指の爪くらいの損失でも、小さいこのアストランド王国は利き腕が一本なくなるくらいの損失らしい。さらに、代表の人数は制限なしという負け確定のルールだった。
そして王は一度
『人数は一人でもいいんじゃな?』
と聞いたところ大帝国はニヤついて
『最低30人はいないと面白くないではないか』
と言い出し、ほかの国の代表もそれに賛成した。なぜそんなことを聞いたかというと王が一人で戦って負けるつもりだったらしい。
「というわけだ。そこで、異世界の人は力が優れていると本で読み、国の魔法使いにそなたらを召喚させたということじゃ」
(つまり、俺たちに戦えと.........)
すると王は土下座をして
「頼む、救ってくれ。この国を、この国の民を、どうか救ってくれ!」
半分泣きながら頼み込まれるフウガたちは、全員無言のまま立っていた。そして、先ほどの女から指示が出される。
「今日はこれから各自の部屋を案内します。終わり次第自由行動です。明日の朝、この部屋に来てください。今日は転移の反動で体が疲れています。夜更かしはしないようにしてください。」