プロローグ
「女勇者よ、この世界に忌まわしき魔王が再び復活した事は知っているな」
威厳のある低い声が王座の間に響く。
「存じております」
あぁ、久々に敬語使ったなぁ。最近まで小麦育てるだけの村娘だったから話し方なんてほとんど気にした事なかったのに。
王都から少し離れた農村で暮らす私に、王宮からの使者が訪ねて来たのは昨夜の事だった。
この所魔物が増えたり凶暴化したりしてるのは魔王が復活したからだとは噂に聞いていたけれど、それを倒せるのが私しか居ないというのはその時初めて知った。
「この世界が闇に覆われ滅んでしまう前に、そなたの力で魔王を討ち取るのだ。この国の王たる私も各国の王と協力し、出来る限りそなたの旅を支えよう。資金も装備も潤沢に用意した。好きに使うが良い」
「はぁ、ありがとうございます…」
王様めっちゃ有能じゃん。
私の力がなくても世界中の軍隊を出撃させれば魔王くらい滅ぼせちゃいそう…なんて言ったらどう答えるのかなぁ。
上の空な私に王は怪訝そうな顔を向ける。
「これは勇者の血を引くお主にしか頼めぬ事だ。聞けば農家の娘だそうだな」
「そうですね、少なくともスライム倒すより土いじりの方が得意だと思います」
そう聞いた王と大臣は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
何で勇者の血筋ってお母さん教えてくれなかったんだろ。魔王がここ数百年大人しかったからすっかり平和ボケしてたのかな。
私の態度からやる気のなさをヒシヒシと感じたであろう王は再び口を開く。
「お主には辛く重い責務だと思うが…許してくれ。無事に世界が救われればどんな褒美でもとらせよう」
そう聞いた瞬間私は反射的に俯いていた顔を上げ、目を見開いていた。
「ほんとですか!?」
自分でも自分の声の高さと大きさに驚くくらい、興奮している。だって、
「では…お姫様を私にください!!」
私は可愛い女の子が大好きなのだ。