6話
「ただいまー」
時刻は7時過ぎ、外はすっかり暗くなった時間。それでも夏の蒸し暑さは消えそうにない。
ようやく俺は自宅に帰ることができた。
うちの家は玄関から入ってすぐに2階へと続く階段があり、左側のドアを開けると、リビングそしてキッチンになっている。
右側にのドアを開けると親代わりの姉さんの部屋。
階段と右の部屋の間には廊下が続いており、手前から洗面所と風呂場。
その奥がトイレとなっており、左側に行くとキッチンになっており一周することができる。
リビングのドアが半開きになっていて、中からは光が漏れてバラエティー番組でも見ているのか人気お笑い芸人の声が聞こえる。
おそらく妹が中で見ているのだろう。
そのまま2階に上がる。
2階には廊下が左右に別れていて、手前と奥それぞれ部屋が2つずつあり、計4つの部屋がある。
右側の手前の部屋が俺の部屋になっていて、左側の手前の部屋が妹の部屋になっている。
残りの部屋は空き室。
俺は自室に入るや、部屋の電気をつける。
ピカーと蛍光灯が白く輝き部屋を明るくしてくれる。
そしてドアを閉める。
クーラーのない部屋には夏の蒸し暑さが部屋を支配しているが、今はこんなことに構っていられない。
「さて、これをどうするか」
カバンからは白石から預かった例のフィギュア。
そもそもなぜこんなことになったかと言うと、こうだ。
『私の両親アニメや漫画を毛嫌いしててオタクグッズを見つけると捨ててしまうの。せっかくバイトして買ったのに捨てられるのは嫌なの。だから隠し場所が決まるまで学校に持ってきちゃったけど、見つかっちゃったし……。だからお願い!ちょっとだけでいいから預かってて!』
と俺が口を挟むまもなく一気に説明され、このフィギュアを渡されたのであった。
断るとまた泣き出しそうで、そんな姿は見たくなかった。
さて、どうしたものかと頭を悩ませていると。
「お兄、姉さんからご飯出来たってよ」
ガチャっとドアが開き、妹の高島舞がそう伝えてきた。
黒いショートヘアの髪に、まだ幼さが残る顔立ち。
服装は黒いシャツに青いショートパンツ。
足にはピンクでくまさんの顔が描かれたスリッパを履いている。
「…………」
「…………」
お互い石になったかのように固まる。
舞はジト目で俺の手の中にあるフィギュアに向けられていた。
「そういうことだから」
ガチャりとドアを閉めそう言葉を残す妹。
思考が停止する俺。
えーと……。舞に預かり物を見られ、そのままタッタッタッと足早に階段を降りる音が。
下には姉さんが待ち構えている。
「まずい!」
あの人に見つかったら終わりだ!
急いで俺も階段を下り、リビングへと向かった。