4話
「ねぇねぇ、高島くん!」
強制的に下校させられて、開放されると思っていたが、白石が金魚のフンの如くしつこくついてきていた。
時刻は5時過ぎ頃だが夏に入り始めているため、夕暮れの陽の光は未だに上っており、コンクリートからは日中に浴びた熱気を放出させていた。
ジリジリと暑い中にいつまでもいたくなく、さらにこの子から早く解放されたかった。
「高島くん待ってよぉ!」
スタスタと歩いているが、彼女はしつこく俺に話しかけていた。
うちの高校は緩い坂道の上に建っており、坂を下り、4方向に別れている交差点に差し掛かり、信号で足を止められた。
いい加減鬱陶しくなってきて白石に向き直る。
「お前、家に帰らなくていいのか?」
「私も家こっちの方向だけど?」
うちはこの交差点を東に曲がった先なのだが、白石も同じ方面らしく、キョトンとした顔で答えられた。
この交差点青になるの遅いんだよな。
それまでこの子の相手をしなきゃいけないのか……。
軽くげんなりしていると白石が話を続ける。
「知らなかったの?私と高島くんご近所なんだよ」
「知らなかった……」
「もー!」
両手を腰に当て頬をプクーと膨らまし、拗ねてしまった。
「けど、いいや。『ヒナコ』の他にどんなアニメ見るの?」
「最近のアニメは知らない」
俺がアニメを見ていたのは小学生低学年の頃までだ。
『何とか少女』とかって言うアニメは知りもしなかった。
「そうなんだ……でもヒナコは知ってたよね?なんで?」
「妹と一緒に見てた」
嘘である。
俺の妹も既にアニメは見ていないし、このアニメのことを知る由もない。
ただ、期待を裏切られたと知ったらまた泣き出しそうで、それが怖かった。
どんな理由であれ、女の子が泣く姿を見たくなかったからだ。
ただ、この嘘が間違いだったと知るのはこの後である。