3話
正直、カバンを落としてしまったのは俺のせいでもあるし、1人泣いている少女には申し訳無い気持ちがあった。
だが、俺は他人とかかわり合いを持ちたくない。
小さい頃のことのようなことはもうごめんだ。
そう思うと同時に小さい頃の妹と今目の前にいる少女の姿が重なって見えた。
話しかけるな!早く帰れ!
そう心が警告している。
小さい頃のようにはなりたくない。
だが放っておけなかった。
「その……。あんなこと言われても気にするなよ。こういうの持ってるやつ結構いるだろ?学校に持ってくる必要はなかっただろうけどさ。アニメは俺も見てたし」
「ふぇっ!?」
小さい頃のことだけど。
そう続ける前に白石が大声を出し、遮られてしまった。
素早くフィギュアを机の上に置き、俺の両肩を掴む。
どうでもいいが白石からいい匂いがした。シャンプーだろうか。
「見てるの!?『霊力魔法少女ヒナコ』!」
「え?いや俺はーー」
「見てるんだ!見てるんだね!」
さっきまでの涙はどこへやら。
白石は俺の肩を掴んだまま嬉しそうな笑顔で前後に揺らす。
「ああ、まさかクラスメイトにあのアニメを見ている人がいるなんて!」
満足したのか、首振りからは開放された。
ああ、頭がクラクラする……。
「ねぇ、どのキャラが好き!?」
目がキラキラと輝いてものすごくワクワクした顔を向けて質問する。
顔近いって。
「だから俺は」
「お前たち!まだ残ってたのか!早く帰れ!」
誤解を解こうとした矢先、ドアがバンっと開き、生活指導の先生が怒声を浴びさせてきた。
「すみません!」
慌てて謝り俺と白石は強制的に下校させられた。