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31話

その日の放課後、俺と白石はファミレスに来ていた。

テストまで数日ということで、たくさんのテスト範囲の復習課題を出され、2人で一緒に勉強していた。

今日は外で食べてくると姉さんには報告済みだ。

白石は両親が外食嫌いということで、俺の家で夕食を済ませるということになっている。

なぜ2人でかって?これ以上1人で勝手な行動をしないようにできる範囲で一緒にいることになったのだ。

まぁ、俺自身分からないところが多いから一緒に勉強してくれるのは助かるが。

「白石ここわかるか?」

「これはね、ここがこうだからこうすればいいんだよ」

「助かった。ありがとう」

白石の説明はわかりやすく、次々に課題が進んでいく。

うちの学校は試験前にテストの範囲を復習できるように課題が出されるため、この課題の範囲をしっかり理解すれば、いい成績は取れるようになっている。

以前まではある程度できていればいいやと思っていたが、今回は白石の大事なものがかかっているため、しっかりやっておかなければ。

やがて注文していた料理が届き、それを食べながら勉強していると姉さんから帰って来るようにと連絡があった。

夜風を受けながら2人並んで歩く。こつこつという足音が響く。

住宅街に入り、それぞれの家まであと少しというところで白石が口を開いた。

「あのね、高島くん」

「うん?なんだ?」

「私の事名前で読んで欲しいの」

ドキッとして白石を見やる。

「あ、あのね……!無理なら無理でいいんだけど……!」

照れているのか、お下げ髪を指でいじりながら早口でそう言う。

「い、いや無理じゃないけど」

俺も視線をそらし、口にする。

「じゃあ、呼んで」

上目遣いでお願いする白石。

ドキドキドキドキ。

心臓の音が周りに聞こえるんじゃないかって思うほど鼓動が大きくなる。

「き……鏡花……」

「ありがとう。秀介くん」

2人顔をそらし無言で歩く。

正直恥ずかしかったが、白石……いや鏡花がそう読んで欲しいならそう呼ぼう。

こつこつ。

靴底がアスファルトに触れて音を出す。

2人とも黙ったせいか妙にその音は大きく感じた。

やがて、白石の家の前に到着した。

「ここまで送ってくれてありがとう……。秀介くん」

まだ呼び慣れないのか、俺の名前は小さく呼んだ。

「ああ、こっちこそ色々心配かけてごめんな。鏡花」

俺も恥ずかしく小さな声で呼ぶ。

「それじゃあ、また明日」

「おう、また明日な」

家の敷地内に入り、手を振る鏡花。

俺も手を振り返し、別れを告げる。

バタンと家のドアが閉じるのを確認すると俺も家を目指した。

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