29話
それから1週間くらい経っただろうか、紗樹達は何も仕掛けて来ないで、平和な日々が続いた。
何か計画を立てているのか、嵐の前の静けさのような怖さがあり、気は抜いてなかったが、勉強に集中していた。
「おい」
朝、登校し教室に向かう途中の廊下で後ろから呼び止められ、足を止め背後をむく。
振り向くと紗樹の取り巻きの男が立っていた。
「何の用だ?」
「今日の昼休み、1人で体育館裏に来い。誰にもこのことは言うなよ」
要件を伝え、去っていく男。
ついに動き出したか。出来ればテストが終わるまで待っていて欲しかったが、そうもいかない。
さて、どうしたものか……。
昼休みになり、双葉姉妹と白石が一緒に昼食を取ろうと誘うが、用事があるからと断った。ちなみに田中は先に教室から出ていっていた。
体育館裏に向かうと取り巻きは見知らぬ男子生徒2人と既に待っていた。
「よく来たな」
1人がそう言う。
「こんな所に呼び出して何の用だ?」
睨みつけて、低く聞く。
「別に大した用じゃない」
不意に背後からもう1人が現れて羽交い締めにされた。
しまった……!
気づいた頃には遅かった。
「しばらく大人しくしてもらうぜ」
男は俺に拳をぶつける。
ガードすることが出来ずにまともに頬に食らう。
口の中が鉄の味がした。
どうにかしなければと、じたばたもがくが、拘束された腕は離してもらえそうになかった。
「オラオラ!」
「ぐあぁ!」
1発、2発と次々に拳が俺に叩きつけられる。
取り巻き以外の2人も加勢し、顔だけれなくみぞおちも殴られ、俺の体はボロボロになっていた。
「お前らいい加減にしろよ……!」
睨み、そう言うが。
「何も出来ない奴が何言ってやがる!」
ドカッ!バキッ!
さらに数発もらう。
口の中は切れてしまい血の味で中がいっぱいになり、目は腫れ視界がボヤける。
くそッ……このままじゃ……。
「これでトドメだ!」
いつの間にか持っていた鉄パイプで頭を殴られて俺は気を失った。




