1話
某県某所某高校の二階、2年A組の教室の窓際の1番奥の自分の席で、俺高島秀介は目を覚ました。
「どうしてあの時のことが夢に出たんだ?」
カーテンが開ききっているため、夕焼けの光が俺の顔を照らす。その眩しさに目を細めつつそう1人ボヤいた。
いつ眠りに落ちたのか分からない。放課後の喧騒が耳障りで少しうつ伏せになるつもりがそのまま眠りに落ちたのだろう。
今の季節は初夏。日が沈むのが遅いうえにカーテンを開け、窓を開けっ放しにしていても熱気で身体中が汗でびっしょり濡れていて気持ち悪い。当然喉もカラカラに乾いている。
外からはセミの鳴き声とともに部活動に精を出している連中の声が聞こえてくる。
教室にはまだ数人俺の他に女子生徒が3人、残って何やら雑談をしていた。
このまま帰ろうと思い席を立つと。
「うなされてたけど、大丈夫?」
「別に」
女子生徒の1人が俺に声をかけてきたが、素っ気なく返す。
「なにあの態度」
俺の態度が気に入らなかったようで、仲間たちに文句をたれて会話に戻っていった。
教室の真ん中らへんの列の1番後ろの席で1人は座り、後の2人はその子を囲むように左右に突っ立っている。
俺を気にせず帰ろうとしてその後ろを通ったが、1人に肩がぶつかり、その反動で相手がよろけて机の上のカバンにあたりそのままカバンを落としてしまった。
「ごめん」
さすがに悪いと思い謝ったが、相手からの返答はなし。
その代わり全員の目が、カバンの落ちた床に集まっていた。
開いていたカバンの中からは教科書とノート。
そして何故かーーーー。
「これ、委員長の?」
「…………」
唯一席に座っていた委員長と呼ばれた少女のカバンからは何故かアニメのフィギュアが出てきたのである。