16話
不意に声をかけた人物には覚えがあった。が、名前を思い出せなかった。
「えっと、確か……」
「おいおい!クラスメイトの名前くらい覚えてろよ!田中だよ!田中尚文よろしくな!」
ワックスで逆立てた髪に赤色のTシャツ。黒い薄手のベストにジーパンを履いている。田中はニカッと白い歯を見せて笑いさらに話す。
「珍しい組み合わせだよな。デートか?」
「そんな……。デートだなんて」
顔を赤くして俯き、下げてる髪を指でいじりチラチラとこちらを見る白石。
誤解を解けってことか?
「いや、俺たちは勉強した帰りに寄っただけだ」
状況を説明し、「そっか」と納得する田中。対象的に何故か白石は「むー」と唸り、こちらを睨んでいる。
俺まずいこと言ったか?
「ってことは委員長オタク説は本当だったのか」
『委員長オタク説?』
俺と白石でハモる。
「なんだ、それ?」
「知らないのか?小鳥たちの囁きで話題になってるぜ」
小鳥たちの囁き。聞いたことがある。
確か世界一のSNSサイトだったはずだ。
俺は他人と距離取ってるし、必要以上に関わりたくないので、登録はしてないが。
おそらく流したのは、あの時一緒にいた女子のどちらかだろうな。
「オレは嬉しいけどな。アニメに興味無さそうな委員長がオタクだったなんて」
「うん、ありがとう」
握手を求める田中。そしてそれに応じて差し出された手を握る白石。
「よかったな。仲間に会えて」
「うん!」
俺は小さい頃良く泣いている妹を慰める時、よく頭を撫でていた。その癖でつい白石の頭を撫でる。
「高島くんっ!?」
「悪い、つい」
白石の声で相手が妹じゃないことを思い出し、慌てて手を引く。
「なんだか知らないが、良かったな。委員長」
「うん!ところで田中くんはアニメ何見るの?」
「おう!オレはなーーーー」
ひょんな事から仲間ができ、嬉しそうに田中と話す白石。
そんな2人を見て何故か胸がモヤモヤした。




