4部20話
「具体的にどうするんだい?ボイスレコーダーで録音していようが、それを取り上げてデータを消してしまえば、証拠はなくなる」
余裕の笑みを崩さない雄二郎。
1歩、また1歩、悪魔が鏡花に近づく。
『全国の皆さん、聞こえましたでしょうか?これがあの有名な白石雄二郎の真の姿です!』
どこからともかく、声が響いた。
廃工場の入口にはマイクを持った女性が1人。カメラを構えた男性が1人。その周りにはさらに数人控えていた。
「なんだ!?君たちは!?」
「僕が呼んだんです」
いつの間にか鏡花の横に来ていた零児がそう言う。
「ここに来る前にテレビ局に連絡してたんです。雄二郎さん、たとえこのボイスレコーダーのデータを消しても、明日にはあなたの悪事は全国に広まります」
「このちくしょうがああああああ!!!」
雄二郎は叫び、鏡花へと掴みかかる。
「この親不幸者がああああああ!!!」
懐からナイフを取り出し、鏡花の首元へとそれを向けた。
「全員動くな!動いたらこいつの命はないぞ!」
『追い詰められた雄二郎氏は実の娘に手をあげようとしています!』
「解説をやめろ!貴様もぶっ殺してやるぞ!」
『ひっ…!?』
怯える女性を後目に雄二郎は1歩また1歩と廃工場の出口へと向かう。
「私は必ず日本をこの手で支配してやる!」
「させねぇよ」
ドカッ!
不意に雄二郎の頬に衝撃が走った。
ナイフから手が離れ、鏡花を捕まえていた手も解ける。
全員が息を呑んでいた。
雄二郎に1発入れたのは倒れていた秀介だった。
「鏡花はお前の道具じゃない。1人の人間だ」




