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砂漠の街アジス

布に覆われた服は汚く、汗の匂いが鼻を刺激するように顔を覆っている。

その姿は、まだ幼さが残る顔をした少女であった。

その人物とは一国の姫であり、何故このような所にいるのか不思議にさえ思う。そう、今その少女エリーヌは砂漠の中を歩いていた。

横には姫の教育係のカーサスが一緒に歩いている。

アース国をでた南に位置するところは未開の地と呼ばれ死の砂漠と恐れられている。そこへエリーヌとカーサスは二人と一匹の猫いやバビを連れて歩いていた。


「もうすぐ砂漠の街アジスに着きますよ」


砂漠の街アジスとは主に獣の干し肉が有名な産地であると同様に未開の土地へと行く冒険者達が立ち寄る場所である。

その街アジスはオアシスである水が唯一、湧き出る所であり周りには木々や草木が生えている。

その為、アジスの街はアース国内でもにぎやかな所だとエリーヌは聞いていた。だが、その周りは何もない砂漠が広がっている。

カーサスはエリーヌの額に水で濡れた布でエリーヌの顔をふく。


「まったく、どうしてついてきたんですか?」


カーサスは怒っていた。カーサスは八神将の名をマーズという青年に受け渡し、それと同時に愛剣である闇影をマーズに託した。

その為カーサスの左腰についている剣はただの安い剣である。

それを知った三神将軍、王直属のクリフはカーサスに宝剣を得るようにアジスより更に南に行った所にある遺跡に行けと助言したのだった。

そこはかつてカーサスが受けた試練の場であった。

カーサスは準備を整え大きな布でできた袋をジザルという人間よりも大きな鷹に乗せカーサスより先にアース国の南に位置する砂漠の街アジスの手前の村までジザルを飛ばせた荷を降ろさせたのだった。

ここまでは良かったのだが、その布でできた大きな布に姫いやエリーヌが潜り込んでいたのだ。


「まったく、あなたという人はどこまで、お転婆姫なんですか。まさかついてくるとは思いませんでしたよ。アース王には伝えていませんがリーシャ王妃にはジザルに伝えるようにしましたからね」


「ふっふふ」


「ふっふふ、じゃありませんよ。ほら、汗がまたでていますよ」


カーサスが濡れた布でエリーヌの汗を拭く。


「もうすぐ砂漠の街アジスです。そこで休憩しましょう」


カーサスが、そういうと二人と一匹は砂漠の街アジスまで歩いた。

一匹というのはもちろんテラである。この猫いやバビはすっかりエリーヌに懐いていた。

日の光がギラギラと二人を照らす。周りには木々もなくあるのは砂だけである。すでに二人の水筒の水もなくなりかけていた。


「あぁー喉かわいたぁー。なんで飛んでいかないのよ」


「わがまま言わないでください。ジザルは乗り物ではありませんよ」


「じゃあ馬は何で使わないのよ?」


「それは、危険だからです。いいですかこの砂漠には人食鳥や人食いサボテンが多数います。そう言う訳で空を飛ぶのも馬を使うのも駄目です。それにほら、見てください、このサボテン。水を含んでいますが、これも人食いサボテンですよ」

カーサスは剣でサボテンを切り裂いていた。そこから水が流れる。


「さぁーこの水でも飲んでください。あと少しですから」


カーサスは砂漠の街アジスへ昔来た事があるような口調で言った。

人食いサボテンから水を水筒に入れ、暫らく歩くと二人の目の前に白い大きな塔が幾つも見えた。それが砂漠の街アジスの目印となっている。


「街が見えてきましたよ」


カーサスがエリーヌに言うとエリーヌは疲れていた表情から笑顔に戻った。

二人が街につくと、そこは歓喜で賑わっていた。

街の造りは石造りで造られており周りには大きな白い塔が幾つも立っている。

これは光を授けたとされる女神を祀るためだけに造られている。

二人が入口のアジスの街の門をくぐると、そこには露天商が立ち並び街のあちこちから松明が燃えている。すでに二人がついた頃には夕方になっていた。

あちこちこら声が聞こえる。


「さぁー安いよ。お二人さん。疲れた時は、このアジス特製の水なんていかが?」


露天商の男がエリーヌとカーサスを見て言う。


「ねぇーねぇーカーサス」


「はいはい、水ですね」


カーサスが露天商の男から水を買っている間にエリーヌはふらふらと他の露天を眺めている。


「はいエリーヌ姫。水ですよ」


エリーヌは水が入った水筒を受け取ると急ぐようにして、その水をごくごくと飲み始めた。それをカーサスとテラが眺める。

エリーヌが飲んでいる姿をテラが物欲しそうに見ていた。カーサスは少しだけ水を飲むと、テラにも水を飲ませた。


「はぁー飲んだら寒くなってきた」


エリーヌが言う。一気に体の熱が下がり昼間の暑さとは異なり寒さが体を冷やしていた。


「そうですね。そろそろ宿を探しましょうか」


露天商を眺めながらカーサスは宿の看板を見つけ、そこへ泊まることにした。

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