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反撃の狼煙

「敵はカルド軍、これより掃討を開始する。皆の者、作戦会議じゃ」


スチュワート伯が大きな声で叫んだ。それに伴い皆が一斉に掛け声をあげる。


「おぉっー!!」


それを見てミレニアはマーズに目線を移し手招いてマーズを呼び寄せた。


「マーズ。この街に詳しそうだね。街の門までカルド兵へ見つからず一人で行けるか?」


ミレニアがそう言うとマーズは


「詳しいも何も街の隅から隅まで私の庭みたいなものですよ」


マーズは笑みを浮かべた。


「そうか」


ミレニアも微笑み返したが直ぐに真剣な表情になり言葉を口にする。


「いいかマーズ。街の門の所まで行ったら、この首飾りを掲げてくれ」


ミレニアが首に着けている銀色の首飾りを外すとマーズに渡した。


「これは?」


マーズは、そう言おうとしたがギュッと右手に首飾りを持ち強く握り締めた。

これが重要な役割だと判断したのか、それとも緊張してからの行為であった。


「巨大な鷹が目の前に現れるが恐れず、こう言ってくれ」


マーズは息を呑む。


「ミレニア・スワンの命よりジザルよ。上空高く飛び、カルド兵を見つけ次第殲滅せよ」


ミレニアは、マーズに復唱させマーズの肩に手を置いた。


「気をつけて行ってね」


先程の鋭い目とは違い心底、心配してくれているかのような優しい言葉であった。マーズの尻を叩き、ミレニアは笑った。


「任せたぞ、マーズ」


マーズはそれに応えるかのように


「わかりました」


そう言い扉を開け出て行った。

ミレニアは扉から出て行く彼を目で見送り机の周りに立っている者達に言った。


「まずはここにいる者達で隠れている男達と合流し武器を渡し、スチュワート伯の屋敷を確保。街にまだいる、女子や子供達を屋敷に逃がしながら行ってください。私はジザルという鷹と共に逃げ遅れた人を援護しながら敵の本拠地へと向かいます」


皆に動揺が走る。一人で大丈夫なのかと誰もが思う。

だが自分達を逃がしてくれた若き青年はたった一人で戦い一騎当千のようにカルド兵と戦っていた。それは誰が見ても鬼神と呼ぶに相応しい青年であった。

彼女もまた、そんな鬼神と比べる程強いのであろうか。

そんな事を誰もが思っていた。

だが一人の老人スチュワートの言葉で不安はなくなった。


「頼みましたぞ。ミレニア殿」


ミレニアが扉を開け先程入ってきた道を出て行く。それに応じて、そこにいる者達は一斉に武器を持ちスチュワート伯の屋敷がある北の方角へと向かった。

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