青年
途中、いくつかの細い路地をくねくねと曲がり大広場へと歩みを進めると、そこにはカルド兵と思しき甲冑の姿をした兵が五人程いる。
その周りには沢山の骸が転がっていた。街の人達の骸だろうか。しかし、よく見ると沢山の骸はカルド兵だと思われる鎧をした姿であった。
それでもカルド兵がいるという事は、ここが戦場になったのだろう。
嫌な匂いがする。
(やばいわね、タリスの街は既に隣国のカルドに侵略されているわ…)
そう心の中で呟き見つからないように後ろを振りかえろうとした時、背後で気配がした。殺気とは思えない気配であったがミレニアは慎重に振りかえる。
だが後ろには誰もいなかった。
ただ、その下から気配がする。
おそるおそる、そこに近づくと鉄でできた網状の隙間から目が見えた。
「あなたは?」
その目は恐ろしいものでも見るかのような目つきであった。
警戒されない様そっとミレニアは腰を下ろし、しゃがんだ。
ミレニアが、そう言うと答えが返ってきた。
「それは、こちらが聞きたい」
どうやら男のようだ。男はひどく疲れきった声をしている。
どうやら、このタリス街の人であろうか。ミレニアは答えた。
「私はアインハイドの王妃に仕える兵士です」
ミレニアは八神将の隊長とは言わず首につけている十字の形をした首飾りを見せた。
「なんと。それなら話は早い」
そう言い男は鉄の網を外し中へ入るよう勧めた。
「さぁー中に入ってください。見つかるとまずい」
男は周りを警戒しながら中へと誘導する。
ミレニアは、その男の言っている事が真剣で、まだ青年だと分り大人しく従った。
中は街の下水道らしく、いくつもの道が枝分かれしている。
「あなたは?」
ミレニアが質問すると青年は
「私の名はマーズ」
青年は、そう言って十字の形をしたペンダントをみせた。
髪は黒髪で短髪。歳は十八歳ぐらいだろう。
服装はアース国の兵士である鎧を身に付けている。
という事は、やはり青年はタリスの街の住人かアース国の兵士だろう。
下水道の中は所々両脇に松明が中を照らしている。
ミレニアは青年のペンダントを確認し、それに答えるかの様に、自分の名前を名乗った。




