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異変

「ちょっと早く着きすぎちゃったかな?」


彼女はカーサスの伝言通りタリスの街の町長スチュワート伯の屋敷で待ち合わせる事にしていた。

実際、手紙の中身は五人ほどエリー姫の護衛役を任せられる人材をスチュワートの屋敷に寄越してくれという内容であったが、まさかミレニア一人だけがくるとはカーサス自身、思ってもいないだろう。

だがミレニアだけで護衛役五人と比べても戦力的には申し分ないだろう。

それほどまでに八神将とは凄いのである。

ジザルはタリスの街付近まで来るとミレニアを近くの草が生い茂っている所へと離した。このままではミレニアは落下してしまうだろう。

そのぐらいの高さからである。

だがミレニアは空中で態勢を整えると静かに地面に着地した。

元々、軽装な鎧だが彼女は、まるでつけていないのではないかと思えるほど、ごく自然に着地し上を見上げた。


「ありがとうジザル。私はこれからスチュワート伯に会いに行くわ。あなたは、ここで私の鎧を見張っていて」


そういうとミレニアは鎧を脱いだ。

鎧をとった姿はカーサスの朱色の服とは違い白と朱色とで縫い合わされた美しい衣装であった。

その首には銀で作られたと思われる十字の形をした首飾りをしている。

ジザルは上空でミレニアの周りを旋回しながら彼女のいう事に従った。

ミレニアがタリスの街の門が見えるところまで行くと、いつも堅く閉ざされた門は大きく開いており見張り役のアース兵は誰もそこには立っていなかった。


「おかしいわね。エリーヌ姫がいるのが街の人に、ばれたのかしら?」


首を傾げ、門を潜り終えると石造りの建物が通りの両側にずらりと並び、ミレニアの進む道を静かに示していた。

街といっても人口は三百人ぐらいの小さな街である。

隣国のカルド国から直ぐ近くにあるためアースの兵がいて警備は厳重なはずであるのだが様子がおかしい。

ミレニアは歩みを進める。

しかし、建物の扉はどこも全て閉まっており街を歩く人は誰もいない。

それどころか異臭がしていた。

そのまま中央にいくと煙が立ち上がっている。


「やはり、おかしいわ」


両腰に巻きつけられてある剣の柄に手を交差しながら握るとミレニアは目的の場所、スチュワート伯がいると思われる屋敷へと向かった。

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