夜の闇
夜の闇がアース国全体を覆っていた。
月もなく雲が空一帯を覆いアース国全域を暗闇に包んでいる。
その上空を一羽というより人間より大きな鷹らしき者が人間を一人、爪に引っ掛け飛んでいた。
人間は餌なのだろうか。その鷹らしき者は全速で飛んでいた。
その翼は縦に細長く縞模様が見える。
その嘴は大きく鉤型に曲がり、足の爪は人間を捕らえるぐらいに鋭い。
だが、その正体はジザルであった。
カーサスが呼んだ時に現れた鷹らしきジザルは遺伝子情報組み換えによってできた兵器である。
そんなジザルは夜の闇をまるで見えているかのように遠くを見つめ飛んでいる。ジザルは一刻も早くと全速で羽ばたいている。
王妃直属の八神将の隊長ミレニア・スワンの伝言、いや本人を連れてだ。
餌だと思われていたのはミレニアであった。
ジザルはミレニアにカーサスの伝言の紙を渡したのだが、彼女はエリーヌ姫にもしもの事があればと思いジザルの爪に優しく掴まれ運んでもらっていた。
「ジザル大丈夫ですか?」
彼女の声は美しく全速で羽ばたいているジザルの耳に届いた。
「まったく重いって言ったら承知しないからね」
「御意」
ジザルの、その言葉を聞きミレニアは満足気に微笑んだ。
彼女も又、カーサスと同じ鎧には朱色の十字の印が左胸に施されていた。
ただ、カーサスと違うのは赤色の長髪をした女の人で白い艶やかな肌が見える。そのミレニアはジザルの爪によって運ばれていた。
いくらジザルが人間より大きいとはいえ背に乗せては飛べないので、仕方なく爪で彼女を落とさないように彼女の鎧を掴んで目的の場所へと向かっているのだ。
「カーサス、姫に何かあったらジザルと共にお仕置きよ」
一瞬ビクリとなり下を向いたジザルであったが直ぐに前を向き全力で羽ばたいた。そんなミレニアはジザルの素振りを見て軽く微笑んだ。
彼女の歳はカーサスと大して変わらない二十代である。
しかしながら八神将の隊長に選ばれるほどだ。
どんな強さを秘めているか謎めいていた。
そんなジザルとミレニアは既にタリスの街が見えるところまで来ていたのだった。




