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白猫

日の光がほぼ真上に上がり森の木々が光り輝いていた。その森の小屋の付近の木の下で横になり眠っていたカーサスは、ようやく、その眩しい日の光を浴び目が覚めた。


「ここは?」


カーサスはたしか小屋付近で倒れていたはずである。カーサスは直ぐ近くの木に寄りかかり、ぼやけた目で辺りを見渡した。


「はっ、エリーヌ姫!」


とっさに立ち上がり小屋の方角を見る。だが小屋はボロボロに崩れていた。


「くっ、姫」


まだ右肩の傷が痛むのか右肩に手をかけボロボロの小屋に近づいた。だが、ようやくカーサスは自分の異変に気がついた。カーサスの右肩には薄い桃色の生地が無造作に巻きつけてあったのである。また小屋の周りにあったバビの骸は、どこにもなくカーサスの目の前に見える光景は、でこぼこの土のかたまりがあちこちに見てとれた。


「姫っ、エリーヌ姫」


カーサスは小屋のあたりを見渡しよく観察する。すると森の日差しが差し込む辺りに泥まみれの白い足が見えた。カーサスは、その場所へと近づくと、そこにはエリーヌ姫が横になって寝ていた。彼女の手は泥が沢山ついており、服は上下ともに破れ上半身はボロボロに引き裂かれており彼女の白い透き通った肌が所どころ顕になっていた。


「姫様。無事でなりよりです」


カーサスはエリーヌの寝顔を見て言った。彼女の寝顔はとても可愛らしかった。カーサスは、そのエリーヌ姫を抱きかかえようと腰をおろした。するとエリーヌ姫の胸のあたりが膨らんでいる。何かを大事そうに抱いているエリーヌ。よくみるとそこには顔を少しだけだした鈴をつけているバビ、いや白猫がいた。


「お前はテラか?」


カーサスは問う。カーサスは、そう言ってみたが一人の女子と一匹の猫はすやすやと眠っていた。


「もし、お前がテラなら世の中捨てたものじゃないだろう」


白い猫に対しての、その言葉はカーサス自身にも言っているかのように思えた。その声は風で流され消えていく。その風に反応するかのように白猫の鈴がなり、森全体に優しい音色が響いた。エリーヌ姫は怖かったはずである。

しかし彼女のとった行動は優しさに包まれていた。必死になってバビ達を埋葬してくれたのだろう。


「さぁー姫の身体を休めるため近隣のタリスの街で休ませてもらおう」


カーサスは横になっているエリーヌと白猫を背負う形でタリスの街へと目指した。カーサスはエリーヌ姫を背負いながら考えていた。このまま姫の教育係としての自覚を持って姫に接していけるだろうか。姫は幾度なく城を脱走していた。姫にも何らかの事情があるにせよカーサスにとって、それは重みであり彼自身の心を蝕んでいる。いくら身体が常人ばなれした強固なものであっても心は脆く少しだけでもくずれてしまうだろう。

先のテラという白い巨大なバビが言っていた通りかもしれないなとカーサスは思った。しばらく、そんな事を考えながらタリスの街へと足を進めた。その途中、カーサスは歩みを止めた。


「うーん」


カーサスの背中に声が響く。どうやらエリーヌが目覚めたようだ。カーサスは首だけを振りエリーヌに声をかけた。


「お目覚めですか、エリーヌ姫」


「ここは…」


周りの景色が変わっている事に気づいたのかエリーヌは辺りを見渡した。


「もう日が暮れているね」


「えぇーもうすぐタリスの街に着きますよ。着いたら宿をとり身体を休めましょう」


カーサスは、そう言うと再び歩みを進めた。それに反応したのか鈴の音と共に白猫がエリーヌの胸の間から地面に飛び出しカーサスの歩みに合わせ歩いた。


「あっ猫ちゃん。良かった。もう大丈夫なの?」


エリーヌは歩いている白猫に向けて言った。彼女の言葉が分ったのか首を縦に振り、鈴を鳴らした。


「そうだ。名前つけなくちゃね。猫ちゃん、何ていう名前が良い?」


そうエリーヌが言うと


「テラっていうのは、どうです?姫様」


「テラかぁー…うん、いいかも」


彼女は笑顔で答えたのだった。

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