襲撃
そう思いながらカーサスは、いつのまにかバビ達に周りを囲まれていた。
そのバビ達との間合いをじりじりと詰め様子を伺う。
鋭い眼光で動きを読み、いつ攻撃してくるのか一歩一歩足を前へと踏み込み確認する。
その時だった。突然、カーサスの後ろにいた茶褐色のバビが鋭い爪をたてカーサスに飛び掛ってきた。それに続いてか次々と猫達がカーサス目がけて飛び掛っていく。
しかしカーサスは、それらを軽く受け流し右手に持った剣を滑らかな動きで動かしただけであった。飛び掛ったバビ達は、その時点で生きたえて地面へ倒れる。感情を押し殺し、まるで無の表所でカーサスは周りを一瞥した。それは魔人と呼ぶにふさわしい王妃直属の八神将に相応しい風貌といえるだろう。
彼の朱色の服はバビの返り血で赤く染まっていた。彼の周りには、まだ無数のバビ達がいたがカーサスの一言
「散れっ」
そうカーサスが一括すると無造作にバビ達は散っていった。カーサスはバビ達がいなくなった事を確認すると、すぐさま重い小屋の扉を開けた。
そこには傷だらけのエリーヌが扉に背を預けた状態で横になっていた。カーサスはすかさず先程とってきたのとは別に携帯している薬草を取り無数に刻まれた傷に薬草をエリーヌ塗りこむ。
更に小屋にある釜に火をつけた。その間に先程の解熱剤の素となる薬草を小刀で刻み、お湯が沸いたら刻んだものを釜に入れ更に煮込む。
ようやく出来た解熱剤を煎じてカーサスはエリーヌに無理やり口を開け飲ませた。エリーヌは、まだ少し意識はあったがカーサスを見るなり安堵したのか気を失ったのだった。そんな彼女をカーサスは真剣な表情で見ていた。
「エリーヌ姫、私はあなたを教育出来るほど優れてはいません」
彼女の寝顔を見ながらカーサスは呟いた。彼女は苦虫でも噛みくだしたかのように険しい表情で寝ている。時折、寝言でカーサスと何度も言い続けていた。
そんなエリーヌに、そっと布をかけ様子を見る。
「よほど怖かったのでしょう」
そう言いカーサスはエリーヌ姫の手にそっと触れ優しく見守るのであった。ようやくエリーヌが意識を取り戻した時には、すっかり外は夜になっていた。あれからバビ達の襲撃は受けていない。小屋の外は森の深い闇と星空が一つ見られない空が漆黒の闇を作り出している。
時折、風に煽られ小屋が揺れる。まだエリーヌ姫は完全には意識を取り戻してはいないが、その眠っている姿はやすらかに見えてとれた。
どうやら解熱剤が効いているみたいだ。一方、カーサスは小屋の扉の前で常に周りの様子を監視していた。常人では見ることもできない暗闇の中、カーサスは見ていた。彼の周りには昼間カーサスが倒したバビ達の骸がある。
それは猫に似ているがは牙があり毛は硬く色は疎らだが目つきは猫より更に鋭く、その爪は十センチぐらいもあった。
「どうやら、遺伝子操作されたバビというものですね」




