猫?
その頃エリーヌは幾分元気を取り戻したのか、まだ足元がフラフラした足つきで小屋の外に干してあった服を取り込み、袖を通している所であった。カーサスが解熱剤の素となる薬草を取るのに汗を垂らしている頃、エリーヌは彼が取ってきた果物を全て平らげ、満足したのか服を着ようと外に出たのだった。
ここは人気ない小屋である。エリーヌは迷わず外に出たのだった。エリーヌは、このとき裸であった。かけていた布は身に付けていない。エリーヌは白く透き通るような肌を顕にし、その姿はまるで天女のように美しく森の木々の間から差し込む光が少女を優しく包み込んでいた。その幼さが残る身体は華奢な身体をしている。しかしエリーヌは、それで悩んでいた。
「はぁー私って、そんな魅力がないのかなぁー。顔色ひとつ変えないなんて」
その言葉はカーサスに対してだった。そんな事を思いながら服に着替えていると、いつのまにか彼女の周りを猫がエリーヌを中心に群れていた。
「あっ猫ちゃんだ」
そう言って直ぐ近くにいる一匹の黒猫に触れようとした時、その猫は鬣を立てエリーヌ目がけて飛び掛ってきた。その黒猫だけではなく一斉に周りを囲んでいた猫がエリーヌに飛び掛っていく。
「痛っ」
エリ-ヌは知らないが、この猫と思われるのはバビという魔獣であった。
エリーヌはバビ達から逃れようと必死になって小屋まで走った。
「もう、何なのよ」
バビ達による攻撃に耐えながら小屋の中へとろうとする。だが、そうはさせてくれなかった。エリーヌを噛み、爪で引っ掻く。だがそれを振り切り、ようやく小屋に入ったエリーヌは直ぐに小屋の扉を閉め、小屋の中にある棒で扉を塞いだ。
「はぁ―、はぁー」
エリーヌは息が出来ないほどの苦しさでバビ達から逃れた。だが、まだ安心できない。今、自分がいる現状を確認しようとする。しかし頭が混乱しているのか思うように考えがまとまらないでいた。それにバビに噛まれたりした腕や足の傷の痛みと熱による頭痛によりエリーヌの思考は、ほぼ完全に停止しようとしていた。




