逃亡
降り注ぐ雨の中、追いかけられるように一人の少女が森の中を駆け足で走っていた。
身長は百六十センチぐらいで歳のころは、まだ幼さが残る十六歳ぐらいだろう。
雨に濡れた栗色の長髪が無造作に乱れているが、その姿は美しいほど端整な顔立ちをしており誰もが見ても美しいと言うほどの美少女である。
その姿はフリルのついた薄い桃色のワンピースを着ていた。
その為、肘や脛部分は泥が付着しており汚れている。
少女は、そんな汚れは気にならないという感じで枝を掻き分け森の奥へ奥へと必死に走った。
突然、光が生じた。
それと伴い今度は、地面が大きな音と共に揺れる。
雷がすぐ近くにある木に直撃した様である。
少女は驚いた拍子に、地面に腰をおろした。
今、何が起きたのかもわからず少女は後ろから迫る何かに怯えるように、ただじっと後ろを見続ける。
少女は腰から下まで泥でびしょ濡れになったワンピースを見て、そして立ち上がった。
服が雨水を吸い込んで少女の動きを鈍くし羽をもがれた鳥の様に自由を奪われている。
それでも少女は走ろうとしたのだが、これ以上走るのは無理と判断したのだろうか、そのまま立ち尽くすのみであった。
少女はただ、雨に打たれ続けていた。
そして誰にも聞こえない程度の声でぼそりと呟き…
「最悪・・・」
とても美少女の口からは出ない様な言葉を口にした。