僕の彼女は画面の向こう
『ねえ、私のこと好き?』
「好きに決まってるじゃないか」
僕は画面の向こうにいる僕の彼女に囁くように語りかける。
彼女は僕の幼馴染で、人前では素っ気なくしているクセに、二人きりになった途端いつも僕からの愛の言葉を求めてくる甘えん坊だ。
猫みたいに気まぐれなところもあるけれど、そんなところも可愛らしいと僕は思っている。
彼女の凪いだ海の様なウィスパーボイスは僕の鼓膜を優しくくすぐり、いつも心を暖かくしてくれる。
僕は彼女の声を聴くのが好きだった。
彼女の声を聴いているだけで、僕はこの世に生まれてきて良かったとさえ思えるのだ。
程なくして画面に選択肢が現れる。
彼女に渡す誕生日プレゼントを次の3つの内から選ぶのだ。
『桜がモチーフになったヘアピン』
『オーデコロンの香水』
『兎の柄のスマホケース』
実はここで『桜がモチーフになったヘアピン』以外を選ぶと好感度が下がってしまうのだが、僕は敢えて『兎の柄のスマホケース』を選択する。
『あ……ありがとう。だ、大事にするね』
「どういたしまして」
案の定彼女は困惑した表情を浮かべたが、そんな顔さえも僕は愛おしい。
――その時だった。
ガチャガチャと鍵を開ける音が鳴り、玄関の扉が開かれた。
「ただいまー。あー、疲れたー」
「おかえり。今日も遅くまでお疲れ様」
「いやまあ、自分で選んだ仕事だから文句は言えないけどね。――あっ!またそのゲームやってんの!?それ私がデビューしたての頃のだから、恥ずかしいからやらないでって言ってるじゃん!」
「アハハ、確かに台詞が若干棒読みだよね」
「もう!ホント君、子供の時から意地悪だよね」
「ごめんごめん。じゃあ、すぐにご飯の支度するから」
「え、大丈夫?君、料理苦手じゃん」
「僕だって今日のために隠れて練習してたんだよ。――今日は君の誕生日なんだからさ」
「――そっか。ありがと」
「バースデーケーキにフルーツタルトも買ってあるから、デザートに食べようね」
「ひゃっほー!フルーツタルト大好きー!」
「ふふ」
「……ねえ」
「ん?何だい」
「……私のこと好き?」
「好きに決まってるじゃないか」
「そっか……。えへへ」
猫みたいに丸くなりながら何かを噛みしめている彼女を心の中だけで愛でながら、僕はキッチンに向かった。
そして食器を選ぶフリをしながら、戸棚をコッソリ開いた。
そこに隠しておいた兎の柄のスマホケースが入った包みを再確認して、僕は内心ほくそ笑んだ。
おわり