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光はどこを照らす  作者: 豆犬
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 申し訳程度に布団を片付け、朝食の用意へと取り掛かった。と言っても、大層なものがつくれるわけではない。

 物が散乱した机の上から、五枚切りの食パンの袋を探し、一切れだけ取り出す。それをトースターに差し込み、ダイヤルを5の文字に合わせ、パンが焼けるのを待つ。待っている間は暇だ。読みかけの本を手に取り、目を通す。有名な小説家の短編集で、摩訶不思議な出来事を描いた物語が、馴れ馴れしくも堅苦しくもないユニークな文体で構成されており、一話一話を読む度にその世界観に引き込まれていく。

 子供時代からよく空想の世界へ思いを馳せ、大人からは「想像力がある子だね」と評価されていた京介は、その当時から今になるまでもずっと、本を読む事が好きだ。

 中学卒業を控えた頃、自分でも物語をつくりたいと思うようになった。自分がつくった架空の世界や人物を、他人にも感じて楽しんで貰えたら、それはとても喜ばしい事だろうとまた空想した。


 高校にあがり、京介は文芸創作部という部活に入った。活動内容はその名前の通り、各々で独自の文芸を創作する事である。当時、とあるコメディタッチの書籍にはまっていた京介は、人を笑わせるような物語を書きたいと息巻いていた。そうして書き上げた話の内容は、文明の発展した惑星から来た宇宙人が、自身の暮らす星と比べた地球の不便さにひたすら文句を言っていくというものだった。

 彼がはじめて他人に披露したその話は、はっきりと言って、小説として褒められた出来ではなかった。全編に渡りほぼ会話文のみで形成されており、小説というより台本に近かったのだ。当時の部活仲間であった鈴原恵すずはらめぐみは、京介にそう指摘した。厳しい言葉を聞いた京介は落胆し、その様子を見て申し訳なく思った恵は、フォローとして話の内容自体は面白かったと付け加えた。その一言が、京介を新しい道へと誘導した。

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